
紫郎
うちで言う家族とは、個人主義の協同だ。
だから俺がひとりで何かを出来るようになるまでは両親が、その後は俺を含めての協同作業となった。
それを寂しいとも、理不尽だとも思わない環境の中で育ったので、もちろん俺も両親と同じ様になる。
両親にはそれぞれの仕事が、俺には発掘調査が優先事項だ。
俺は特に宗教遺跡に興味があり、祭祀の行われた形跡や、遺構を見るのが好きだから、その為の勉強ならしても良いかなと思っている。
発掘調査のバイトに、短期留学もした。
そのため家族団欒は、申し送りと提案の場となる。
これが俺の家族だ。
柊子の家に土産を持って行く。
おばさんは、俺に飯を食わせてくれて、挨拶や、箸の持ち方とか、とにかく日常的マナーを柊子と一緒に躾けてくれた。
特に言葉遣いには煩かった。
おばさんは、まぁまぁ良いとこのお嬢さん育ちらしいが、良いとこのお嬢さんって天然が多いのか?と思った事は口にしなかった。
ある時、珍しく柊子が俺に相談とか言って割と真剣に聞いてきた。
それはHSPに関する本で、おばさん達の部屋のクローゼットに隠されていたらしい。
「この間うちのスクールカウンセラーに言われたんだよね」
病院へ行って病気にされたく無いと、柊子は言った。
「これは病気じゃ無いから、心配するな」
と言うと、少し怪訝そうにしたが、
「そっか」
といつもの柊子の気にしないが出て、それからは気にしている様子は見られなかった。
おばさん、いつも悩みなんて無さそうなのに、隠していたらしい。
俺は些細な事のうちに、何とかしようと考えた。
色々と考えて試してみたりもした。
だけれど1番は、俺が柊子を好きでも、女として見ている訳で無いという事。
柊子は柊子で何かでは無く、ずっと俺の側にいる人と思っている。
だから柊子の事、俺の事を当たり前に受けられる奴を探して、今を守る事にした。