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7話
私の苦手な事。
止めどなく話しかけてくる人たちの空間に置かれる事。
父の3回忌法要は、聿と叔父が取り仕切っている。
母は、ボーっとしている。
親戚は父の話をしたり…互いの苦労話しや自身の子どもの自慢話を声高に語る。
どれも私には無い話しなので、返事に困る。
必死に相槌だけを繰り返す私に、相変わらず鈍臭いと言われてしまった。
それ以降は、おじやおば達に振り回されて過ごした。
母は、ボーっとしている。
いとこ達は仕事の話しをしたり、それぞれの現状の愚痴を吐いている。
やっぱり返事に困る私を嗤う。
私の生活を自由で羨ましいと、歪んだ響きの言葉を放つ。
それでも私は無表情でいられる自分に、悲観する。
住職の法話は生前の父に触れ、続いておじおば達からいとこ達まで小さい頃からよく知っているが故に、成長と共に自分に合った道へと進み、それは皆同じで無くてよい。
みたいな事を説いていた。
最後により良き路へ進まれますようにと締めた。
それを聞いてどう考えていたか顔を見ただけでは分からないが、気まずそうにしている気もした。
聿は真剣に聞いていた。
私は…私は良き路がどこかわからないから、このままでいるしかないのかなと思った。
母は、ボーっとしていた。
聿と叔父が部屋へ運んで終わりを告げたので、私も帰る事にした。
母とは一度も言葉は交わさず帰った。
「疲れた…」
ベッドに倒れ込み、寝たまま変な体勢になりながらも黒いワンピースを脱いで投げた。
黒いストッキングは、ほんの少し伝線していたから結んでゴミ箱方向に投げた。
眠いから寝ると思っているのに、住職の良き路が私には無い気がして落ちていく様に眠った。