32%外向きな私
「いつも明るくていいわね」
「ありがとうございます」
レッスンを終えたおば様は、優しく声をかけてくれる。
「次回の予約はどうしますか?」
「来週はお休みなの、だからその次の水曜日にお願いしていいかしら」
「わかりました。今日と同じ時間にお取りしておきますね」
「ありがとう」
おば様は目を細めて軽く頭を下げて帰る。
私の癒しの時間。
私は、母が子ども向けにピアノを、大人向けに声楽を教える教室で受付兼雑用のアルバイトをしている。
母とはいえ父とは10年前に離婚して、私は父方の祖母と一緒に生活をしている。
だから母と娘としてではなく、正規アルバイトとして厳しく接してくる。
父は仕事で海外に行ったっきりの人で、時々お土産を持って来る人という認識しかない。
祖母との生活は平たんでひっそりとした感じで、人によってつまらないと思えるだろう。
だけれど、親ふたりが感情を隠す事ないひと達だったので、私は疲れてしまっていて今の生活は安心できた。
祖母に
「感情をふたりに取られちゃったんだね」
と言われて、初めて大泣きした。
今でも感情を出すのは上手くない。
でも、ちゃんと社会的感情の時には正しい表現ができる様になって来ている…と思う。
私はこれからも、取られちゃった感情と向き合って、祖母との平たんでひっそりとした生活を楽しむ。