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小説✳︎「月明かりで太陽は輝く」第33話


佳太ー2人の物語

「僕が太陽って言ってくれて嬉しいよ。
リコの為に、一生懸命光を届けたいと思ってきたから。
リコは、自分が月と言うけれど
月は、夜の闇を照らしてくれるよね。
暗闇の中の月明かりは
どれだけの人が、助けられるんだろうね。
柔らかいその光に、ほっとする。
月は、太陽の届かない暗闇を照らしてくれるんだ。役に立って無いなんて、ないんだよ。
僕こそ、リコと居ると心落ち着くし、幸せな気持ちになれる。

サバイバーとしての未来への不安も、確かにあると思う。
でも明日の事は、誰にも分からない。
紘太さんだって、あの日にこの世を去るなんて
まさかの事だったと思う。
キャンサーサバイバーって
前にリコが言った後、恥ずかしいけど
俺、よく知らなくて調べたんだ。
キャンサーサバイバーシップって
罹患した本人だけじゃなくて
家族や友人とか、一緒に乗り越える事にも使われるんだってね。
俺もその一人になりたい。
今時がんになる人は、二人に一人とか言われてるよね。もう、それをハンデに思う必要なんか無い。
俺だって、病気にならないわけじゃないからさ。

この前、会社の健康診断で俺
また身長伸びてたんだよ。
190センチになってた。
もう,いい大人なのにね。

俺は、紘太さんともう同じじゃなくなったよ。
シロの香水も無くなった。
時が進めば、変化もある。
新しい時を刻めば
新しい二人の物語も始まる。
俺は、リコとの未来を進みたいんだ。

紘太さんとの思い出は
大切な宝物にすればいい。
忘れる必要も無いし
思い出しても良いんだよ。

それに、リコと出会わせてくれたのは
あの時紘太さんが鳴らした、電話の音。
リコが俺を気にしてくれたのは
紘太さんと同じ身長だったからだよね。

俺は紘太さんに心から、感謝しているんだ。
俺は、紘太さんから
リコを守るバトンを渡されたと思ってる。
リコはたくさんの苦しみを抱えてきた。
これからの人生の苦しみを
半分は俺に引き受けさせてくれないかな?
そして、その何倍もの楽しい事を
作って行きたいんだ。二人で」



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#恋愛小説
#月明かり
#2人の物語
#苦しみ半分

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