見出し画像

小説✳︎「月明かりで太陽は輝く」第23話


佳太ーレンズ越しのリコ

姉さんの小さな小さな結婚式は
和やかで笑顔いっぱいの時間になった。

家族だけの予定だったけど
大地さんが、リコを呼んでくれた。
カメラも趣味の一つの僕は
張り切ってカメラマンをかって出た。
家族を撮りながらリコの横顔を
時折、ファインダーで捉えながら
レンズ越しに見る。
こんなに、じっと見つめる事は
今まで無かったかもしれない。

君は、今どんな気持ちなのかな?
本当は紘太さんと式を挙げる未来が
あったかもしれない。
この前、紘太さんに
指輪を返したって言ってた。
姉さんのウエディングドレス姿を
眩しげに、微笑む君の横顔に
僕はシャッターを切った。

この日、姉と大地さんの為に
歌のプレゼントをすることにした。
ピアノは小さい頃少し
習っていたくらいだけど
お店に、グランドピアノがあるって
聞いていたので、こっそり練習しておいた。
リコの前で歌を歌うのは初めてだな。
ちょっと緊張したけれど
みんなも喜んでくれて
姉さんは泣きながら聴いてくれた。
僕も小さい頃から
何かと世話を焼いてくれた姉さんに
感謝と幸せになって欲しい想いを
込めたつもり。
大地さんが、お礼の言葉で締めくくって
それぞれが帰途に着いた。
僕は、リコを助手席に乗せて
マンションに帰る。
同じ方向を見ながら
彼女の微かな香水の香りに
紘太さんの墓参りした
日が思い起こされた。

「今日もホワイトリリーの香りだね」
僕が呟くと
「うん、でももう少しで無くなりそうなの」
「そうなんだ。同じのが欲しい?」
「どうしようかな?」
「今度、俺からもプレゼントさせてくれないかな?」
「え?」
「今日のお礼も兼ねて」
「いいえ、こちらこそ素敵な時間に
寄り添わせてもらえて、こっちが
お礼が言いたいくらいよ」
「そう?良かった。喜んでくれたなら。
でも、本当遠慮なく言ってよ」
「うーん、じゃあ。以前アキコさんが
使ってた香水がとてもいい香りだなって思ったの」
「あ、わかる。あれ、良い香りだよね。
なんて言うのだっけ?」
「名前までは、わからないけど」
「じゃあ,姉さんに聞いてみるから
今度プレゼントさせてよ」
「うん。ありがとう」

今日はまだ
転勤の話のきっかけを
作ることが出来なかった。


#創作大賞2023
#恋愛小説
#レンズ越し
#結婚式の後
#プレゼント

いいなと思ったら応援しよう!