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小説✳︎cafe『あけぼの』【はじまり】 4

いつも、愁が帰宅するとテーブルには食事の用意がされている。

着替えて椅子に腰掛けると
キッチンからミズホが出てきた。
「おかえりなさい」
「ただいま」

食事に手をつけようとした瞬間
「待って!」とミズホが言う。
カメラを手にして、写真を取り出した。
ブログやインスタに載せる為だ。
数分待たされたところで、ようやくOKが出た。
「まだ写真撮ってなかったから。もう良いわよ、どうぞ」
「うん。頂きます」
愁は、少し冷めた食事を食べ始めた。
ミズホは、食事中もスマホをスクロールしながらで、愁の顔も見ない。

「ミズホ」
「え?味おかしかった?」
「いや、いつも美味しいよ。ありがとう」
「そ?なら良かった」
「ミズホ、この前話した事だけど」
「え?何だっけ?」
「早期退職しようかと思うって話」
「あー。え?本気なの?」
「このまますれ違いで過ぎていく事に
僕は違う気がして」
「私は……。今の生活が楽しいから
変えたく無いわ」

よく離婚の原因に価値観の違いって
芸能人とかインタビューで話しているが
こう言う事なのか?とリアルに
愁は感じた。

「カフェを開くにしても
これからノウハウや準備の
勉強してからになるし
すぐと言うわけでは無いんだ。
それに、ミズホもこの前、『得意なお料理を出しても良いね』と言っていたから」
「言ったけど……」
「年齢的にもまだやれる気がするし。
二人で一緒にやらないか?」
愁は思いを率直に話した。

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