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小説✳︎「月明かりで太陽は輝く」第15話

佳太ー結び

陸くんはスヤスヤと姉のベットで眠る。
その肩にタオルケットをかける
姉さんの姿は、完全に母親の顔だ。

「アキ姉。飯準備出来たよ」
「あ、ありがと」
小さな声で、こたえながら
そっと離れる姉さんの
カーディガンの裾を
陸くんはしっかり握っていた。
引っ張られて、一瞬バランスを崩しかけたが
僕が手を引っ張って
なんとか倒れずに済んだ。

「あっぶねー」
微笑む姉さんの顔
こんなにおだやな表情するんだ。
改めて見ること無かったから
今更ながら、姉さんが綺麗だなと思った。

リコからのリクエストで
メニューに入れたカルボナーラは
大地さんにも大好評で
楽しい時間を過ごした。

程なく陸くんも
目が覚めて、姉が楽しく飾りつけた
テーブルで大はしゃぎ。
怪我したなんて
忘れてしまったみたいだった。
猫のチョビも、リコの部屋から連れてきて
一緒に、散々遊んだ後
また、眠ってしまった陸くん。
抱き上げながら、大地さんが
「そろそろ、帰ります。
陸もこんなに楽しい日を
過ごしたのは、初めてかもな。
佳太くん。
お料理も本当に美味しかったよ。
結里子さん。
誘ってくれてありがとう。
アキコさん。
陸の面倒をみてくれて
本当にありがとう。
あんなに笑顔いっぱいの陸。
初めて見た気がする」

その言葉に、陸くんも
きっと子供なりに一生懸命
頑張って来たんだろうな。
そして、大地さんも
精一杯の愛情込めて
育てては来たんだろうけど
母親がいない部分は
補えなかったんだろうな。
そんな事を、思いながら
親子を見送った。

大地さんを送るため、姉さんも出て行った後
僕はリコと食器を洗いながら話した。
「リコは名前通り、人と人を結ぶね」
「わたしのせいじゃ無いよ。多分,全てはご縁。必然の偶然」
僕は聞いた。
「知ってる?日本の人口」
「一億二千万強」
リコは即答。
「じゃあ、世界の人口は?」
笑いながらリコは答える。
「七四億?」

「だってね。歌で知った」※1
「私も」
「その世界の人口の数の中から
結ばれる縁って、凄くない?」
「うん、確かにそうよね」
「姉さんと大地さん。
うまく行くといいな」
「そうね」

「そして、僕たちも」って
言いかけて飲み込んだ言葉は
一つのシャボン玉になって
キッチンで弾けた。

※1 「君の為のキミノウタ」川崎鷹也


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