【富士登山2023】本当の富士登山開始 ~永遠に着かない半蔵坊~【大石茶屋→半蔵坊】
前回は双子山で景色を楽しみ、大石茶屋に戻ってカツ丼を食べた。
ハイキング目的で来た家族連れなんかはこれでもう帰る流れになるんだろうけど、自分はこのあと新六合目の半蔵坊という山小屋まで行くのである。
所要時間は3時間くらいと見ているが、果たして……?
さっきと同じような風景を見つつ、また登り返していく。
ちなみに今回は以前の富士登山とは違い、高度順応を行っていない。
その理由としては、御殿場ルートの標高1400mという低さにある。
例えば富士宮ルートは標高2400mなので、もう既にそこらの山の山頂レベルの高度になってしまっているのだが、御殿場ルートは標高1400mスタートなので、緩やかな道を歩いていくうちに自然と高度順応できるらしいのだ。
……とはいえ自分の場合は、双子山の往復をした時点で実質エベレスト登山の如き登って下っての高度順応をこなしたようなもの。
そのおかげで高山病の心配はないだろう。(足のダメージはともかく)
ただそれでも一応、呼吸は深く回数多めで進んでいく。
高山病は全てが台無しになるので、絶対に避けねば。
ふと横を見ると、なんだか湖っぽいものが見えた。
あれは山中湖だろうか?
自分にとってアレな思い出のある山中湖だが、大昔の本によるとあれが富士山から見ると三日月に見えるらしい。
登っていけば全体が見えるだろうか。
楽しみだ。
そして自分はストックを使いながら登っているのだが、その衝撃に耐えられないのか各指の爪の端から出血し始めた。(どんだけ弱いんだ自分の指)
まあ特に処置はせずに血小板に任せよう。
遥か遠くにボロボロに錆びた車が見えた。
実はこれ、Googleマップでも表示がある名所(?)なのだ。
なんと昔の富士山は5合目より上に車やバイクで行けたようで、かつては富士山頂にバイクで行くイベントを開いて性能をアピールしたらしい。
しかも成し遂げた人の中には上野動物園の2代目園長がいたそうだ。
パワフルすぎる園長である。
そんな感じで、このグランドワゴニアも精一杯頑張ろうとしたけど、最終的にはダメだったのだろう。
残骸を見ていると、まるでエベレストに放置されたなんやかんやのように思えてくる。
さて、双子山をようやく過ぎたが、はっきり言ってめちゃくちゃ辛い。
実はもう大石茶屋から2時間ほど登っているのだ。
なのに景色はほとんど変わらず。
これが御殿場ルートの長さ……!!
でも山中湖はいい感じに三日月になってきた。
巨大な白鳥も見える。
そしてどうにか次郎坊に到着。
だが到着したところで何があるわけでもない。
他のルートだったら2時間も歩けば山小屋の一つでもあるのだが、これが御殿場ルートの辛さである。
次の補給ができるのは新六合目の半蔵坊。
今日のゴール地点なのだ。
そんなこんなでようやく標高2000m。
まだ吉田ルートスタート地点の標高2300mにも及ばない。
なんという厳しさだろうか。
ちょっと休もう……。
下から上がってくる雲を見つめて15分ほど休憩。
程よい涼しさが心地良い。
思えば御殿場駅の辺りなんて今頃余裕で30℃越えの真夏日なのだ。
富士山は涼しくて良いなぁ……。
さて、ここまで歩いてきた感想を言うと、「御殿場ルート思ってたより楽じゃん」と最初は思っていた。
御殿場ルート体験談を見ると、「滑り落ちて辛いよ~!!」という感じだったのだが、序盤は割と普通に歩けたからだ。
加えて自分は上双子山での地獄の登りを経験していたので、なんてことない道だという感想になったのだろう。
……だが後半戦の今は違う。
半蔵坊に至るまでのつづら折りは、
なんかもう上双子山の地獄の登りが延々続いているみたいなものだ。
滑り落ちるわ、永遠に続いてるように感じるわで、地獄の中の地獄である。
なんで健脚でもないのに双子山なんて寄ったんだろう……。
いや、そんな後悔をしてももう遅い。
……ああ、足が上がらない。
一歩一歩があまりにも重いし遅い。
一体もう何人に抜かされただろうか。
まあもちろん自分の運動不足のせいもあるのだろうが、さすがこの御殿場ルートを選ぶだけあって、若い人はもちろん高齢な方もどんどん登っていく。
自分もあんな健脚の老後が良いな。
は〜、あの緑色の大地は自衛隊の富士演習場かなー……。
もはやちょっと登っては腰を下ろして景色を見ている。
正直もう満身創痍なわけだが、これで明日山頂目指すの……?
そして、スマホを見たらバッテリーが20%を切っていた。
……いやお前も満身創痍になるんじゃないよ。
(どんな減りの速さだ)
とにかく半蔵坊が遠い。
6合目なんて吉田ルートだったら散歩レベルだった覚えがあるのだが、御殿場ルートは次元が違うぞ……。
でも本当に人が少ないので、なんだか気楽に座って休める感がある。
あと他のルートと違って開放感が尋常じゃない。
ズームしたらようやく半蔵坊らしきものが見えた。
そして残りのつづら折りの多さに軽く絶望する。
うん、やっぱりこのルートはおかしい。
なにせ半蔵坊がなかった頃なんて、このまま更に登って標高3100mのわらじ館までいかなければ山小屋は存在しないのだ。
YAMAPによると、現時点での標高は2300m。
この満身創痍な状態でわらじ館まであと800m登れなんて言われたら、自分は帰ることを選択しそうである。
「御殿場ルートは健脚向け」
この文言は間違いなく正しかった。
今回の自分の挑戦で、半蔵坊があれば凡人もなんとかなるよという証明になればいいが……。
歩かなきゃたどり着かないので、必死に1歩1歩を積み重ねる。
『半蔵坊』、到着しました!!!
もう限界です!!!
眼下に広がる雄大な景色。
地獄は終わったのだ。
ちなみに到着時刻は16時くらい。
なにが「大石茶屋から3時間くらいかな?^^」なのか。
5時間かかったわ!!
(寄り道して体力消費した自分のせいだけど)
……あ、そうだ。
120年前の富士登山の本では「江ノ島が見えた」とか書いてあったな。
雲がかからないうちに探してみよう。
うわホントに見えた!!
はー、苦労して登った甲斐があったな……!
さて……
もう横になりたいです……。
山小屋編に続く!