【自然】ベランダの狩人は立派に役目を果たしてくれたようです
9月になって暑さが和らいだわけではないが、収穫された稲が稲架掛けされた風景に秋の到来を感じる。
そして自分のベランダにも変化があった。
クモがいなくなったのである。
いや何の話だよと思う方もいるだろうから説明しよう。
自分は5月頃にベランダへの掃き出し窓に盛大にクモの巣を張られたのだが、「まあベランダ使ってないし、羽虫が減りそうだからいいか」ということで放置することにしたのだ。
それからというもの、あらゆるイベントに遭遇しつつも毎回立ち上がるクモに勇気付けられていた自分がいる。
例えば台風がやってきたときは盛大に巣が破壊されてしまい、「もう駄目だなこれ…」と思っても、クモは次の日にはもう同じ場所に巣を張り直していたりするのだ。
(荒天時にはクモは雨戸の隙間なんかに移動して雨風をしのぎ、生き延びるらしい)
そして台風でなくとも巣はわりと頻繁に破壊される(あるいは劣化する?)ようで、そのたびに毎回せっせと巣を作り直す様子を自分は感心しつつ見守っていた。
なお、掃き出し窓の目の前に作られた巣なので、自分が夜に電気をつけると一瞬で羽虫が寄ってくる。
せっかくだからとタイムラプス状態のスマホで巣の様子を録画しておき、クモの狩りの様子を観察したのは言うまでもない。
どうやらクモは基本的に巣の中心でひたすら不動の構えで過ごし、羽虫が巣にかかると、その振動か何かを察知して素早く獲物まで移動、獲物を糸でグルグル巻きにしたあとは再び中心に戻って不動の構えとなるようだ。
小さい体でこの繰り返しをひたすら行う姿がなんだか健気でかわいかった。
そして我が家の部屋の明かりに寄ってくる羽虫の量たるや凄いものがあるので、このクモはあっという間に巨大化した。
最初は1cm未満のクモのはずだったのだが、気づけば2cmくらいになっていただろうか。
もはや当初の可愛さは消え失せて立派なハンターにしか見えなくなったわけだが、住む環境ってやっぱり重要なんだなということをこんなところでも考えさせられる。
……いやまあ普通だったら確実に人間に破壊される位置にある巣ではあるので、破壊しないという選択をとる自分を含めての”環境”ではあるが。
(つまり運の良さも大事ってこと…?)
そして9月に入って、彼はいなくなった。
もうベランダの巣が壊れても、再生されることはない。
そしてベランダ以外の場所で盛大に巣を作っていた他のクモたちも、気づけばみんないなくなってしまった。
まあクモの寿命は1年というのもありそうだし、なんだか階段にめちゃくちゃカエルが出現するようになったので、そのせいかもしれないなと思う。
少ししんみり。
だが思えばクモやカエルたちは、今までだって毎年こういうサイクルを繰り返していたのだろう。
そういう自然のサイクルに一切気を止めることもなかった自分の視野は本当に狭かったんだなと実感する。
そしてこういうものに気づく余裕がない生活は、豊かとは言えないよな……。
(まあこんな事に気づいたのは一番忙しい時期なのだが)
そんなわけでベランダのクモを放置した結果、なんだかいい経験をさせてもらえた。
使わずじまいだったベランダにもようやく意味が見出せた気がする。
……さあ、それでは4ヶ月放置した窓とベランダを清掃するか!
窓に付着したなんだかわからん汚れやホコリを落として、これから始まる秋のクリアな景色を楽しむのだ。
もし、来年も同じ場所に巣を張ったら……
それはそのとき考えよう。