ふいに思い出した”強歩”大会の記憶
アニメを何気なく見ていたら、マラソン大会の場面が出てきた。
そうそう、女子と男子で折り返し地点が違うんだよね。
はー、懐かしいなあ。
・・・
そういえば、
自分の高校ってマラソンじゃなくて、強歩大会だったな……。
(「競歩」じゃなくて「強歩」)
強歩大会とは、平たく言えば長距離を歩く会である。
強歩で大事なのは最後まで歩ききること。
なのでマラソンとかとは違い、友達と一緒に会話しながら歩いても……
……いや、すまない。嘘を言った。
正直そこそこ急がないとダメである。
強歩大会は各所にチェックポイントがあり、指定された時間までに通過しないとアウトなのだ。
あれはゆったり歩いてたら間に合わない時間だった気がする。
だから結局、自分の高校では超長距離マラソンみたいな感じになっていた。
問題なのは距離で、自分の高校は男子の場合はアップダウンのある山中を20kmくらい歩く。
そしてこれには、普段運動をしない生徒も当然ながら参加している。
あまり運動してない人間にとって、突然の20km歩行はかなり厳しいものだったんじゃないだろうか。
ちなみに、チェックポイントに間に合わなかった生徒は回収車に乗せられて、学校へ戻ることになる。
自分は一応運動部だったので、回収車に乗ることなくどうにか歩ききった。
……しかしだ、
今思い返してみると、あれは相当きついイベントだったような気もするのだ。
自分が一番覚えているのは、とにかく喉が渇いたという記憶である。
正直、チェックポイントで飲み物を飲んだ記憶がない……。
いや、あの頃はもう「部活中に水を飲むな!!」なんて言われるような昭和な時代ではなかったし、20km走るイベントで飲み物の提供が無いというのは考えにくい。
しかしどうにも記憶にはないし、持ち物はチェックポイントでスタンプを押すための台紙とルートマップのみだった気がする。
水筒は……たぶんなかったはず。
なので自分はラスト5km地点で本気で干からびそうになったのだ。
だがそこで奇跡的に用意していた小銭を使い、自販機で飲み物を買うことができた。(なんで持ってたんだ)
おかげでどうにか倒れずに済んだのをめちゃくちゃ覚えている。
しかし岩木山のアイゼンといい、この小銭といい、偶然用意したものに救われることが結構あるらしい。
第六感のような謎の力でも働いているのだろうか。
謎の力はともかく、せっかく強歩大会について思い出したわけだし、これについて深掘りしてみよう。
そもそも他の学校はこういう行事をやっているのだろうか?
そう思って調べたところ、自分の経験した20kmなんてイージーモードだったことが発覚する。
まず、北海道の網走南ケ丘高校では、網走湖一周マラソン(強歩遠足)として、男子39km、女子30kmの距離を走らされるらしい。
いきなり自分の経験した距離の2倍である。
……正気か?
いや、実はこれはまだ正気だったのである。
栃木県の県立大田原高校では、学校を出発し、
円状のコースを26時間かけて一周する「85km強歩」が存在する。
は、85kmって……
(自衛隊か何かなの…?)
いや、まだ終わらない。
大阪の清風中学校・高等学校では、3月下旬の終業式・中学卒業式の後に、
学園から高野山までの”100km”を歩く。
100km……!!
(しかも終業式やったあとに)
……もはや正気の沙汰では無い。
いやしかし、
調べれば調べるほど自分の20kmの苦労が霞んでいくんだが……?
もう少しこう……手心というか……
世界は広かった。
自分の理解を越えたイベントを乗り越えた人々が、この国にはわんさかいるらしい。
すげぇや……。
でもまあ、自分にとっては十分に苦しかったあの20kmも、今はすっかり良い思い出になっているような気がする。
苦しさは忘れて、良い思い出だけ残る。
人生そういうものなのだろうか?
今思えば、あの20km歩けたという成功体験があったから、深層心理で無駄に歩行への自信がついて、富士山深夜徘徊に繋がったのかもしれない。
想像以上にあのイベントは自分に影響を与えていたのかも。
そう考えると、別に覚えたくもない授業を強制的にやらされる学校というのは、やっぱり人生にとって重要な基礎を作っているんだろう。
自分はこの歳になって色んな本を読むようになったが、別に自分の得意ではない数学や音楽や歴史や美術に関しても、一応授業で触れたことはあるから気負わずに本を手に取れる気がする。
経験は大事。
そこら中で言われているけど、やはりそういうものなんだろうな。