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『座れる休憩場所検索』にほっこりしつつ、『排除アート』について考える

退院が近づいていることもあり、最近は日常生活に根ざした動きに特化してリハビリをしてもらっている。

キッチンでの横移動、そこそこの重量物を背負っての移動、スーパーでカートを使うことを想定しての動作、屈み動作などなど、理学療法士の方があれこれ考えて退院後の生活用に対策してくれているのだ。

もはや自分でも全く気づかなかったことをどんどんアドバイスしてくれるので、優秀な人が担当になってくれて本当に感謝しかない。

(こんなことまでサポートしてくれるとは、理学療法士ってすごい)


……だがそもそもの話、自分はもうすぐ退院するとはいえど、それは完治を意味しない。

自分は現在、装具(サポーター)を外した状態での歩行を開始しているが、依然として長距離歩行をするには杖が必須となっているし、歩行可能時間も長いとは言い難いのだ。


リハビリをしていく中で、理学療法士の方からこんなことを言われた。

「退院後は、ベンチなどの”行動圏内にある休憩場所”を確認しておくのも大事かもですね」

理学療法士

うーむ……確かに。

ちょっと移動しただけで左足だけ露骨に疲れる今の自分にとって、休憩場所の把握は実際とても大事なことかもだ。

こうして足を悪くした人間になってみると、骨折前にはさほど見向きもしなかったそこらへんのベンチのありがたさが段違いになりそうである。

やはり自分の立場が変われば世界の見方は変わるんだな……!


そんなわけで周囲のベンチ情報を調べようと思ったら、『座れる休憩場所検索』というド直球に当てはまるサービスを発見した。↓

こんなものがすでに存在するなんて、世界は優しさに満ちているんだなぁ……!

東京の休憩所
(うひゃあ…)

さすがは東京。人が多いだけあって休憩場所も多い。

そうだ、青森とかはどんな感じなんだろう……?

青森

まさかのゼロである。

……いや、これは青森がベンチゼロ県というわけではなくて、単純に調査人員の問題なのだ。

そもそもこのサイト自体が運営者のペン太氏が自らの足で3000箇所以上歩いて見つけた休憩場所が基盤になっているので、当然ながら調査範囲も偏るのである。

なので県によっては全くデータがない

だが、サイトからメンバーになることでベンチ情報を投稿可能になるため、自分の手でそこに住む高齢者や障害者の助けになれるのだ。


あぁ、元気な頃の自分がこのサービスに出会えていたら、きっと盛大に協力出来ただろうに……!

と思いつつ、元気な頃だったら『休憩所検索サービス』なんて絶対調べてなかっただろうなということに気づいた。


……よし、これもなにかの縁だ。

退院後に身体がある程度回復したら、自分も協力してみよう。


ところで、世間にはその場所での休憩を許さない『排除アート』というものが存在する。

ベンチなのに座りにくかったり手すりをつけることで横になれなくしたり長い事座るのが苦痛な設計にしたりと、意図的に一部の人間の利用を妨げるように作られている休憩場所があるのだ。

可愛く見せてるけどこれも…!?(赤坂)


なお、美術手帖では排除アートについてこう述べている。

排除アートは、言葉によって禁止を命令しないが、なんとなく無意識のうちに行動が制限される、いわゆる環境型の権力である。

現在、SDGsやバリアフリーの目標が高らかにうたわれているが、実際に都市で進行しているのは、真逆の事態ではないか。ホームレスが使いにくいベンチは、実は一般人にとっても座りにくいベンチでもある。

そして排除アートは、われわれが使えるはずだった場所を奪う。本来、広場や公園などの公共空間は、有料で入場するテーマパークと違い、未定義の部分があり、様々な可能性に開かれている。それをあらかじめつぶすのが、排除アートなのだ。

うーむ……。

自分はまだ左足がアレなだけなので、ベンチに座れさえすればさほど問題はなさそうだが、下半身全体が弱っている人なんかは変な形のベンチなんて座ったら大変だろうなと思う。

上の動画の新宿のベンチなんかは、ちょっとバランスを崩したら、高齢者や子供とかは普通に危なそうだ。

こういう物を設置する人は、「自分は今後もずっと健常者だ」という考えなのだろうか……?

あるいは、「ここは健常者だけが使えれば良いんだよ」みたいな?


そうだとしたら、なんとも悲しいデザインだなぁ……。



そんなわけで、今まで自分の周りに気軽に座って休める場所がどれくらいあるかなんて気にもしたこともなかったが、今回の怪我でまた新しい視点が得られた。

そして、自分を含めた休憩場所を必要とする人たちのためにも、『座れる休憩場所検索』への協力をしていけたら良いなと思う。


……だがこれはある意味で、排除アートを探すきっかけになりえるのかもだ。

きっと今後数多のベンチを発見していく中で、排除アートっぽいものにも遭遇することだろう。

今まで認識していなかった人間の悪意を直視するようで、何だか悲しい気もするが……頑張ろう。


はっ!!

ベンチといえば、稚内のマクドナルドはどうなんだ!?


(#100参照)

(いやさすがにこれは別枠か…?)


なんだか判定を広げると厄介なことになりそうだなと思いつつ、今後は旅行するならベンチを気にしていこうと思うのだった。


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aosagi
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