【つながる旅行記#84】in弘前 藤田記念庭園と『オシドリの生態』について
※前回の記事↓
自分は今……!
物語の世界に入っている!!
あぁ、まるで超リアルになったVRを体感しているようだ。
自分はここを知っている。
そう、アニメで見たから――
これはふらいんぐうぃっちで登場した、「喫茶コンクルシオ」のモデルになった場所。大正浪漫喫茶である。
なんだか下北でのシャーマンキング巡りとは違って、随分と楽に聖地が巡礼できているなと思う。(弘前城の周りに固まっているせいもあるけど)
……そしてまたこう思う。
「なんか自分が入っちゃいけない感じがする……」と。
なんかこう、すごいオシャレな雰囲気なのだ。
今の自分のレベルでは到底耐えられないくらいの。
なにせ自分はスタバどころか喫茶店に入るのすらきつい。
それが「~大正浪漫喫茶~」って、あなたもうそれは……。
でも聖地巡礼するならやはり中にも入らないと……!!
・・・
なんと自分は……
外観だけ見てまさかのスルーを決めたのだった。
(なにしてんだか全くわからん)
さて、見事な陰キャぶりを発揮したところで、
藤田記念庭園はその名の通り庭園である。
季節は初夏。
きっと良い感じの緑に出会えることだろう。
「もう中入れよ」と言いたいくらい大正浪漫喫茶の写真を撮っている。
未練がましいぞ当時の自分。
(早かったか……?)
どうやらまだ来るのが早すぎたかもしれない。
ゲームのフィールドに生えてそうな草しかない。
おそらくここも季節によっては素晴らしい花が見れるのだろう。
鎌倉のバラ園と同じく、来るタイミングがアレだったようだ。
とはいえ緑は良い感じに新緑である。
めっちゃ良い感じだ。
赤と緑ですごく綺麗。
のんびり初夏の庭園を楽しむ。
超インドアでゲーム&動画中毒者だった自分だが、今や庭園を楽しむ人間になっているのだから不思議なものだ。
人は変わるもんだなあ……なんてことを思っていると、
池になんだかすごい姿の鳥がいた。
この鳥はオシドリというらしい。
なんだこの姿は……?
羽の色といい形といい、首周りの刺々しい毛といい、なんか凄いぞ。
自分は今まで引きこもりすぎて、
日本中に広く生息するアオサギの存在すら認知していなかった人間である。
そんな自分にとってこのオシドリの姿はかなりの衝撃だ。
さてオシドリと言えば、「おしどり夫婦」という言葉がある。
この令和の世でまだ使われているのかはともかくとして、
「仲睦まじい夫婦」を表す言葉だ。
由来はオシドリ(鳥)のつがいが仲睦まじいからだと聞いた気がする。
だが、「いやいやそんなことないっすwあれは嘘っすよw」という意見も聞いたことがあるし、「”嘘っていうのが嘘”って証明されたわけだが?」という意見も聞いた気がする。
もはやどういうことだ。
この機会に調べてみるとしよう。
ネットで!!
「いかがでしたか?」で終わるような各種サイトを含め、日本オシドリ学会の会長に聞いた!というサイトも見たりして情報を集めた結果、以下のようなオシドリの生態がわかった。
(たぶんだけど)オシドリの夫婦は1年毎にパートナーを変える
オスは卵や雛を守らない
繁殖期に寄り添っているだけで、卵を産んだら離れる
次の年の1月には別のパートナーとつがいになる
いやもう全然仲睦まじい感じではない。
繁殖期に寄り添っているのはつまり、他のオスにメスを取られないようにガードしているからだろうし、メスが卵を産んで「もう俺の子供確定だな!」ということがわかってからは、オスはメスの元を離れている。
そしてもう次の1月には別のパートナーとつがいになるらしい。
おいおい……。
生物として考えれば、多くの違った遺伝子を持つ個体と子供を作るのは正解だし、決まったつがいで一生を添い遂げるのは非合理的ではあるけど……。
しかし人間の基準で当てはめるからこんなことになるわけで、
鳥には鳥の事情があるという意見もある。
そもそもカモ類はみんな抱卵と子育てはメス任せである
オシドリの雛は生まれて1日もすれば自力で歩いて餌を取れる
つまりオシドリの父は別にやることがない
そう、カモ類はみんなこんな感じなのだ。
そして考えてみれば、カモ類の子供が親に餌をねだって巣で鳴いている様子なんて見たことがない。ツバメ等とは生態が違う。
まあ完全に仲睦まじい夫婦という件は否定されたようなもんだが、
しかし自分は確かに過去において、「オシドリ夫婦なんて嘘だよ論」を否定するニュースを見た記憶があるのだ。
それに、これらの情報ソースは古い。
専門家に聞いている記事もあるが、2016年が最新である。
……これは追加調査が必要だろう。
そこで出会ったのが以下のサイトだ。
この記事は2019年2月27日のものだ。
1番新しい情報を載せている可能性は高い。
この記事によると……
元来の説ではオシドリは6月ころにはつがいを解消し、冬には別の個体とつがいを形成するので仲睦まじくなんてない、ということになっている。
しかしそれを証明するには一度つがいになったペアを標識し、その個体を数年にわたって追う必要がある。
この大変な作業がドイツで行われ、2018年に成果が報告された。
W. Mädlow氏の論文によると、
パートナー同士に足輪をつけたつがいを追跡調査した結果、いくつかのペアにおいて複数年にわたり同じつがいを形成することが確認され、最長で6年連続で観察されたものもあるそうだ。
これは一旦繁殖期に解散し、また戻ってきたときには同じパートナー同士でつがいを形成しているということである。
つまり……
『おしどり夫婦』、ありえるんじゃないか…?
なんだか遺伝子を混ぜる意味では非合理的にも思えるが、実際にこうして同じパートナーを選び続けるという結果は出ているのだ。
それが「このパートナーが好きだから!」という理由なのかはわからないにしても、一旦分かれてるのにまた戻ってきたときに同じ相手を選ぶというのはもう普通ではない気がする。
それに、「いつでもベタベタ寄り添っている」のが「仲睦まじい」というわけでもないのでは?
「一旦離れても、また繁殖期には同じ相手を選んでいる」
そんな関係性の方が、ある意味で強い愛情を感じる気がしないでもない。
もちろん、あくまでこういった結果が出たのは少数ではある。
そして日本のオシドリにそのまま適用していいものでもないだろう。
だが「オシドリ夫婦なんて嘘ですw」なんて、
簡単に言い切ることは出来ないんじゃないかと自分は思えてきた。
まあつまり……
さすがドイツである。(謎結論)
この庭園にいるオシドリのつがいも、もしかしたら何年にもわたって同じパートナーを選び続けているのかもしれない。
人間はこの自然で起きていることを、ほんの一部しか知らないのだ。
パートナー同士寄り添い、
ときに喧嘩もして……
また惹かれ合い……
ともに歩んでゆくのだ。
(なにこれ?)
そんな感じでオシドリの生態について知れたのだった。
しかし今回は、過去に自分が「オシドリ夫婦否定論に対する否定論」みたいなニュースを見ていたからこそ、オシドリの論文について取り上げている記事を見つけられたのである。
もし自分がこの否定論について知らなかったら、2016年あたりの鳥類学者が言っていた最初の記事だけをそのまま載せて終わっていたことだろう。
インターネットはなんでもあるように見えて実はない……いや、情報を釣り上げる人間の知識や検索能力に左右されすぎるのかも知れない。
自分以外の人が検索したら、もっと色々な情報が出ることだろう。
全くこの世の中は本当に……
いやこれ旅行記だったわ。
すっかりオシドリの記事になってしまっている。
しかしまあ、植物的な見どころはまだちょっと早かったかもだが、
このオシドリ夫婦に出会えたのは今の時期に来たからこそだったのだ。
そう思うと来てよかった。
藤田記念庭園、良いところだった。
さあ、次の場所へ行こう。
次は……あ、また弘前城です。(どういう旅行計画だ)
次回へ続く…