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目上には「ご苦労さま」じゃなくてあーだこーだ

ご苦労さま」と「お疲れさま」という言葉がある。

現代では、目上の人に「ご苦労さま」なんて言った日には、

「あなたちょっとねぇ!!!言葉遣いも知らないの!?まーーッ!!」

……である。


しかし昔は逆だったのだ。そう、江戸時代とかは。

……って『八十亀ちゃんかんさつにっき』8巻に書いてあった。


もう多くの人はこういう日本語のあれこれに辟易していることだろう。

どうせこれもどっかのマナー講師が作り出したんじゃないの?」と。

自分もそう思った。「やってんなこれ」と。

とはいえ好きな漫画に書いてあったからといって、こういう情報を鵜呑みにするわけにはいかない。一体どんな由来だったかは一応調べねば。


そう、調べねばと思ってとりあえず簡単に検索してみたんだけど……

なんか良い感じにしっかり調べた記事が出てきちゃったんだよね。

超良い記事↓

何という名前の言語学者が疑問視して、
どんな出典があって、
どんな歴史の流れで今の状態になったか。
ライターのトギー氏は、そりゃもうしっかり調べている。

はー……こういう記事を書きたい。
トギーさんすごい。他の記事も見よう……。

あ、記事の日付を見るに、もうLIGは辞めたようだ。

ただ、残された記事もまたレベルが高くてホントに……


いや話が逸れすぎた。


とにかく、トギー氏の記事を引用しまくると、

ご苦労さま」は元々は目下の者が目上をねぎらう言葉だったのだ。
家来が主人に対して「ご苦労」とか言っていたのである。

それが明治頃に軍隊で流行りだし、大正時代には「なんだかこれ目上の人が使うものだよね」という謎の空気になり、その空気に押されたまま現代へ。

江戸時代とは逆の、「目上の人間が目下の者に使う言葉」になったのだ。


じゃあ「お疲れさま」はどうなのかといえば、1997年の辞書には、
「お疲れさまは上の立場の者が使う挨拶」という記述がある。

あとタモさんも「”お疲れさま”を子役が言って回るのはおかしいんだよ」と指摘していたらしい。実際タモさんの言うように、大正から昭和にかけての認識では「お疲れさま」は立場が上の人間が使うものだったのだ。

話をまとめると、
昭和の時点での認識は「お疲れさま」も「ご苦労さま」も、
どちらも目上の人が使う言葉だったのである。

じゃあなんで今は「お疲れさま」が溢れる世の中なのかといえば、トギーさんが調べた限りでは、色々要因があるよね的な感じでやんわり締めている。

いやでもぶっちゃけさ……

マナー講師のせいだよね……?


自分が「ご苦労さま」と「お疲れさま」の使い分けを始めたきっかけを覚えているわけではないが、十中八九、就活時にマナー講師の関わっている記事や本を読んだからだ。

当時の世の中でもなんとなく「お疲れさま」の使いやすさは知られていたが、明確に使い方を確定させたのはマナー講師としか思えない。

もし当時のマナー講師たちがしっかりと前例を調べ上げていれば、
「今では”お疲れさま”が目上の人に使えるノリになってますが、実は違うんですよ」というまっとうな用法への修正だって出来たはずなのだ。

しかし現実はそうならなかった。
ビジネス本には「ご苦労さまは目上の人が使うもの」、「お疲れさまは万能で最高☆」という記載が溢れている。

これは「言葉は変わるものだからね(^_^)」なんて安直な流れで済ませてはならない気がする。

なぜならタモさんが「おかしいよ」と指摘したように、実際おかしいのだ。
由来を辿っても、「お疲れさま」が目下から目上への挨拶として使われていたことなど歴史上存在しないのである。

江戸時代に使われていた用法が逆転してしまった「ご苦労さま」の場合は、もう当時の感覚で使っていた明治の人間は残っていないのでまだいい。

しかし「お疲れさま」に関してはタモさんですら苦言を呈するわけで、普通に存命な年配の方にとって違和感しかない言葉になってしまっている。

実際トギー氏もその点を指摘しており、
昭和以前のイメージをもった年配の方に「お疲れさま」と言うと、嫌悪感を抱かれる可能性があると述べている。

そりゃそうである。その世代の感覚的にはそう思って当然なのだ。
そして本来の由来をみれば年配方が正しい。

しかしもはや秘書検定においても「”お疲れさま”は目上にも使える」という記載になっているのだから止めようがない。
(年配のお偉いさんに言っても大丈夫なのだろうか……?)


ああ、なんということだ。

日本語はどんどん乱れねじれていくのだ。

「ご苦労さま」と「お疲れさま」。
こんな基本的な言葉すら、短期間のうちに用法が変わってしまうとは。

自分が老人になる頃には日本語がどんなことになっているのか……もう恐ろしくて仕方がない。


あまりにも恐ろしいので八十亀ちゃんを見て癒やされようと思う。

ではみなさん、ここまで読んでいただき、

誠にお疲れさまでした。



(普通に便利なので「お疲れさまでした」は今後も全力で使おうと思う)


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aosagi
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