見出し画像

プロテウス効果とアバターについて

『プロテウス効果』というものがある。


過去に筋肉記事で、
プロテインの語源はプロティオスで、「もっとも重要なもの」という意味なんだよ!!』というような話をしたが、それとは多分関係ない

(「じゃあ書くなや」という意見は受け付けない)


プロテウス効果
とは、

『アバターの外見がユーザーの振る舞いに影響を与える』という効果だ。


そもそも人間は現実世界においても、白衣を着たら集中力が上がるだとか、責任ある立場の制服を着せるとそれっぽく振る舞うとか言われている。

それがバーチャル世界のアバターにおいても同じことが起こるというのだ。

たとえば論文で報告されているのは、黒人のアバターになると黒人への差別意識が低減するとか、魅力的な容姿のアバターを使うと異性に積極的に振る舞うようになったとか、色々と効果は確認されている。


しかし自分はVRChatでアバターを使っていて、そんなふうに意識が変わったことなんてあっただろうか?

ちなみに自分のアバターは騎士だ。

サンリオピューロランドではしゃぐ騎士

しかし別に騎士として振る舞おうとか全然考えたことがない。
相手に手を振られたらめっちゃブンブン振り返している。(騎士とは?)

これはなぜかといえば、自分の姿なんて基本的に自分からは見えていないからだろう。

見えたとしてくらいなもんで、あとは自撮りしたら映るくらいのもの。

だから騎士として振る舞うという考えも湧かないのだと思う。


なので、「英語を学ぶなら外国人のアバターになろう!」なんて記事を見ても、「それホントかなぁ?」と思ってしまう。



「じゃあプロテウス効果は嘘なの…?」


いや、プロテウス効果が嘘だと判断するのはまだ早い。

たとえばバーチャルマーケットなどへ行ってアバターを試着するときなどには、鏡のようなものが置いてあって自分の姿が見えたりする。

そこでもし仮に美少女のアバターを試着したとして、

オッサンでもかわいいポーズをとっちゃうものなのだ。


これは確実にプロテウス効果である。

そうそう。思えば自分もそんなことしてたわ。


・・・

いや、引かないで!?


ほんとにみんなついやっちゃうものだから!!

きっとプロテウス効果だから!!!


……そうだ、自分が尊敬してやまない上司の方は言っていた。

「オッサンになると、乙女な部分が出てくるもんなんやで?」


そう、あの人が言うくらいなのだから、
男は歳を取ると乙女要素が出てくるものなのだ。

きっとそうなのだ……!



いやぶっちゃけ最後の例は違う気もするが、

なんだかちょっと思ったのは、こういうのってVTuberとかの方が影響は大きそうだなということだ。

Vtuberの場合は、常に自分のアバターを画面に表示しながら配信を行う。

自分が喋ればアバターも口を動かすので、まさにずっと鏡を見ているような状態になる。

自分とアバターを同一視するタイミングはVRChatよりも圧倒的に多い。


そう考えると、アバター選びは重要になってきそうだ。

もし自分の目指す方向性に合致していないアバターを選んでしまった場合、ある種の認知的不協和のようなものを発生させるかもしれない。

しかし、社会的に利があるアバターというのは確実に存在する。

そうなると、利点を重視したアバター選びになる可能性は十分ありえそうだ。


例えば現実世界では、明確に容姿が良いと成功しやすいというデータが出てしまっている。

それは人から好かれてチャンスを得やすいとかいう理由もあるが、容姿によって自尊心が高まることによる行動力の増加など、自己への影響も大いにあるのだ。

プロテウス効果によって現実同様にバーチャルでも容姿の影響があるとわかった以上、確実に美男美女アバターが増えそうなものだ。

それを見越してなのかなんなのか、今のゲームでは主に洋ゲーにおいて、美男はともかく、美女はどんどん消滅している。

加速するルッキズム批判への配慮で、VR空間で自由にアバターを選べない未来もありえるのだろうか?


他に考えを広げると、心理的に人を油断させるアバターを使って犯罪を行うことだってあるのかもしれない。

なんだかアバターをどうするかだけでも、色々と考えられそうだ。



そして、記事の最初に無関係な筋肉の話をしたが、実はちょっと関係する。

第25回日本バーチャルリアリティ学会での論文に、ある意味で筋肉に関連した実験を行ったものがあるのだ。


実験では、筋肉量の違いを感じるアバター3種類(痩せ型、標準、筋肉質)を用意し、ダンベルを持ち上げさせたところ、

マッチョアバターだとダンベルが軽く感じたのである。

つまりプロテウス効果は、振る舞いや心理的なものだけでなく、知覚まで変えることが判明したのだ。


ちなみにこの実験では、自分とアバターを同一視できるように、目の前に鏡が表示された状態で行っている。(やっぱりこれが大事なようだ)

何だかこの実験結果は、バーチャルでの仕事のブースト効果に色々と関係しそうな予感がする。

そしてやはり、利点のないアバターを選ぶ人は少なくなりそうな気も……?

・筋肉質アバタを用いたプロテウス効果が重さ知覚に与える影響
https://conference.vrsj.org/ac2020/program/doc/2A2-2_PR0025.pdf

なんだかバーチャル活用と一口に言っても、様々な要素が関わってきそうだ。

データが軽いからと魅力の欠片もないアバターを実装している企業は、戦々恐々としているのかもしれない。


いや、みんな美男美女とかだと、逆に他のデメリットが生まれたりするのか……?

物事は単純じゃないことが往々にしてある。

そう考えるとこれはなかなか厄介な研究材料なのやも……?


・・・


研究者の方々、頑張ってください!!


サポートには感謝のコメントをお返しします!