ありがとう『ゆうてん』
ご無沙汰してしまいました、note。
この記事が今読まれているということは、僕は無事にこの記事を書き終えたということです。
いくつか書いてはいたものの、書いて満足しちゃったり上手くまとまらずで辞めてしまったりと下書きにはいくつもの屍が眠っています。
サルメカンパニーやループピリオド、ムシラセへの出演や短編映画出演、事務所への所属と、
谷口的激動の2023だった訳ですが。
完全に出すタイミングを見失った。
またどこかのタイミングで振り返りとしてまとめられたらな、と思います。
期待しないで待ってて。
さて、本題です。
2024年1本目の出演作品、
こそ会『ゆうてん』無事に終演いたしました!
ご観劇くださった皆さま、気にかけてくださった皆さま誠にありがとうございました。
こちらは、日本劇作家協会さん主催のカンテン「The Foudations」という企画への参加作品でした。
企画プログラムの都合上、公演数は3回。
通常の公演に比べるとかなり少ない貴重な作品になりました。
配信の予定もないみたいなので、昨今稀に見る生観劇のみの公演でした。
観れた人はラッキー!
今企画は、制作の吉田康一氏が小劇場を中心に活動する団体から、確かなクオリティを持ち、世の中に広く紹介したい6団体を集めて、それぞれの個性を活かした60分の作品を、素舞台の座・高円寺1で上演するものです。(フライヤーから抜粋)
はい。
びっくりしちゃいますよね。
素舞台の座・高円寺て、、、
この劇場、小劇場界隈からするとまぁ大きい劇場なんですよ。
それを更地で使うと。。。。。
正直最初オファーをいただいた際は困惑しました。
でも次第にこの縛りの中でどんな作品に出会えて、創り上げられるのか楽しみになっている自分もいたりして。
そして、2団体60分ずつの1公演ということもあり、まさに参加団体総力戦。
初めて尽くしの企画でした。
僕は、招集された6団体の中のこそ会さんからお声がけいただいて、今作『ゆうてん』に出演させていただきました。
こそ会は、全参加団体の中でも最若手で座組も21歳〜29歳の人員で構成されていて、稽古場や楽屋は谷口史上最も賑やかで非常に楽しい空間でした。
演出の加藤広祐氏は、見た目とは裏腹にエネルギッシュで演劇への愛が強い人。
今企画にも今の若手の凄みを活かして、「絶対面白い作品を創ってみせる」と強い熱意で僕を始め、座組を引っ張ってくれました。
今作に誘ってくれたのも広祐氏でした。
この男(失礼)についてはまた別の記事で書きます。
兎に角ずっと作品のことについてふたりで話をしてくれました。
俳優を信頼し寄り添ってくれる優しい演出家です。
企画の話が長くなりました。
そろそろ『ゆうてん』の話をします。
今作は、こそ会脚本家 花香みづほ氏が書き下ろした新作。
ハンス・クリスチャン・アンデルセンの「すずの兵隊さん」を原作に[マジョリティとマイノリティ]を考える作品です。
誰もが一度は触れたことがあるであろうアンデルセン童話。
童話と言っても、社会情勢や風刺を作中に自然と組み込み描かれた少しダークな作風。
僕も大人になって読んでみると子供の頃とは別の作品を読んでいるんじゃないかと思うほど、視点によって抱く感想は変わってくる。
これをみづほ氏の手によってこそ会カラーの作品として書き起こしたのです。
同じ錫を使って作られた25体の“すずの兵隊”の中で唯一錫が足らずに一本足で生まれた兵隊が、
さまざまな困難を乗り越える冒険を通して一本足と24体のすずの兵隊は、
なにが「足りて」いて、なにが「足りて」いないのか。
自分という存在は、あなたという存在は一体何なのかを考える。
ざっとあらすじを説明するとこんな感じ。
今作の難しいポイントは、「答えを決めない」こと。
アンデルセンの原作と同じように、観る人それぞれの視点によって観た後の答えが違うことを重点において創作に取り組んでおりました。
どんな作品でも感想は十人十色になるじゃないか!とお思いの方もいると思いますが、今作では着地点を定めようと思えば意外と定められてしまうシビアな題材だったのです。
そして、忘れてはいけないのがこれを更地の座・高円寺で上演するということ。
作中冒険をすることもあって、これはどう立体化していけるのかとドキドキしておりましたが、さすが広祐氏率いる我が座組。
企画ルールに則って、
大道具の類は一切使用せず、座・高円寺の機構をフル活用して舞台上にその空間を創り上げてしまいました。
ここまで美術も大道具も使わない公演は芝居をしていて初めてレベルで。
美術や大道具のありがたみを感じると同時に、どれくらい観客にイメージを託せるか、自分の芝居を見直す貴重な作品にもなりました。
稽古場では、常にディスカッションと実験の繰り返しでした。
まさに、作中同様の冒険の日々。
演劇と自分たちの可能性を探る稽古でした。
座・高円寺の実寸を取れる稽古場の確保が難しく、現場に入って細かいところを調整することを念頭に、日々あーでもないこーでもないを繰り返しておりました。
とは言っても、実際現地(座・高円寺)を使っての稽古は企画の都合上叶わず、ゲネプロと場当たりの限られた時間の中で細かな修正と調整を行っての作品創りになりました。
座組の中でも困惑する展開ではありましたが、意地と根性で創り上げたと言っても過言ではないはず。。。。
稽古場は常に明るく風通しの良い現場で。
(こんな書き方をするとブラックっぽいけど本当に風通しがよいのだよ)
僕は一本足という、展開のひとつの柱になる素敵な役柄をいただいていて。
扱う題材の届け方と、素舞台での創り方で稽古前後や電話等でひたすら広祐さんとお話を繰り返していて。
一本足の今作におけるポジションであったり、物語でこんな着地を一本足自身ができると広祐さんの描くラストに近づけているかな?みたいな会話を永遠に。
今作は二本足の兵隊たちが一本足の冒険を通して気付きを得る創りでもあるので、
次々に巻き起こる困難に対しての向き合い方やその姿をどう見せることができるかを重要なポイントとして置いておりました。
もちろん、一本足自身も冒険を経て心の中の変化も大きくあるのでその感覚を探ることも大切なポイントだったけど。
結局は、稽古場でその場面ごとにどんな変化をリアルに感じられるかがいちばんの舵取りになるので広祐さんのプランの方向性にマッチしているかの確認と修正を。
さっきも書いたけど広祐さんは、とっても優しいのでとんでもなく忙しい時間を縫って、めんどくさい俳優にもこうして向き合ってくれていたわけです。
公演後、「いろいろとごめんね」と謝罪したら「もっと話したかったけどなかなか時間が取れずごめんね」なんて言ってくれちゃったりして。
この男(失礼その2)についてはまた別の記事で(その2)。
こうしたディスカッションは座組全体でも行われていて、稽古を経る毎に今作は進化していったのです。
そして今回の気づきとしては、声を飛ばすことの難しさ。
僕は今回の役名どおり、一本足でのお芝居になったのだけど、
言葉が全然前に飛ばないの。
おかしいな、と思って何度か二本足の状態で稽古もさせてもらって分かったのはやはり二本の足で地面を踏む重要性。
これは以前ボイストレーナーの方にお教えいただいていたので知ってはいたのですがこれほどまでに声を飛ばすのが難しいのかと。
座・高円寺という広い空間をどうすれば包み込めるのか、
ゲネプロと場当たりで衝撃を受けておりました。
体の仕組みと使い方をもっと研究せねば。。。。
そしてそして、
アンサンブルキャストの皆さんは、稽古中盤から途中合流してくださって、
これがもうアンサンブルの領分を越えた仕事をしてくださって大感謝。
座組への溶け込みも早くて、
稽古中盤に僕は数回お休みをいただいていたのだけど、
稽古へ戻ってくるとなんかみんな仲良しで少し寂しかったり。笑
僕もあっという間に皆さんと仲良しになれましたけど!ね!!
そんなこんなで座組の皆さまをはじめカンテン運営スタッフの皆さま、お客さまと、
たくさんの方々に支えられて、『ゆうてん』は座・高円寺で生まれました。
僕は、この作品を通して自分って何者なんだろうと考える。
毎度思うけど、作品を創るのは容易ではありませぬ。
それでも、少しでも上質な作品を目指して。
より良い時間をお届けできるように。
これからも日々切磋琢磨していきたいと思っております。
応援していただけると幸いです。
まとまりがなく、ほぼ殴り書きになってしまったこの記事を最後まで読んでいただけて嬉しいです。
ありがとうございます。
またどこかの舞台で。
あとがき
今回、全公演をフルキャストで挑むことができず、大変申し訳ありませんでした。
現在本人の体調も快復したとのことで、僕も安心しております。
全公演を無事に終えることができなかった悔しさと共に、無事に走りきることの大切さとありがたみを強く感じました。
当たり前ではない。
今後も改めて座組一同が無事に公演を共に完走することを大切に、作品や座組、お客さまと向き合っていきたいと思います。
また、今回急遽代役での出演も兼ねてくださった宮内さんに最大の感謝を。
次機会がもしあればまた皆さんと素晴らしい作品と共に、完走することを夢見て。
一本足役/谷口継夏
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