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山賊王と瑠璃色姫の花畑 後編 <大人も楽しめる童話>
前半はこちら。
10・後悔
アガベは家の前に墓を造った。
誰かが人里の方角からやって来た。
「あれ、それはどなたのお墓で……まさか僧侶様が?!」
彼は行商人で、塩など山では手に入らないものと、高僧が作った薬を交換しに時々来ていた。
「自分は行商人のサンザシです。行くあてがないなら、仕事を手伝ってくれねえですか。
用心棒にもなって、薬草の知識もあるお弟子さんに来てもらえるのはありがてぇっす」
「もう、僧侶じゃないが……よろしく頼む」
二人はしばらくの間、一緒に旅をした。
サンザシは調子のいいところもあるが義理堅い男のようで、アガベと息が合った。
二人は商売の小さな成功を祝って、酒場で酒を酌み交わした。
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「なあ、サンザシ。生きる意味ってなんだと思う?」
「あんたは酒を飲むと小難しいことを毎度言いたがるっすね。
自分はこうやって、商売が上手くいって酒が飲めればそれで幸せっすわ。
アガベはそうじゃないんです?」
「確かに悪くはないが、それを一生していたいかと言えば……どうだろうな」
「大部分の人間はそんなこと考えませんって。
それより、金、飯、女……家庭のあるヤツは子ども。そしてなにより身の安全です。
生きるって、難しく考えなくてもそういうことではないっすかね」
「……そう、かもな」
「あ、もしかして、まーた昔惚れた女のこと考えてます?
そんなの新しい女を見つけりゃどーでもよくなりますって!!」
「どうでもよくならない!!!」
アガベは酔っていたこともあって、テーブルを勢いよく叩いた。
「親切で言ってやってるのに怒ることないでしょーがっ?!」
「余計なお世話だっ!!!」
アガベはその後のことはよく覚えていない。
ただ、翌日サンザシの腫れた顔を見たとき、自分が何をしたかを悟った。
「……あんたとはこの先やっていけそうにない」
サンザシは正確に計算したアガベが働いた分の銀貨を渡した。
「いいのか?」
「殴った分はさておき、働いた分は支払う義務があるっすよ。
そうそう……噂話ですが、隣町によく当たる不思議な占い師の女がいるそうです。探したいひとがいるなら聞いてみちゃどうですか」
「何から何まで世話になったのに、すまなかった」
「自分にも非はあったっす。どこかでまた会ったときは、客として来てください」
アガベは後悔ともう二度と取り返しがつかないことを痛感しながら、彼と別れた。
11・占い
アガベは隣町へ行った。
町の人たちは、その占い師を「不思議な瞳で全てを見通す」と噂していた。
アガベは占い師のいる天幕の中に入った。
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「ずっと探している人がいる。それを占ってほし……」
占い師は目以外を布で覆っていた。
自分を見るその宝石のような瑠璃色の瞳に見覚えがある。
「あなたをずっと探していた、瑠璃色姫……。
今の俺を見ても誰だかわからないとは思うが……」
「お花が好きな山賊さんですね」
アガベは顔を伏せて涙した。
「かつてのあなたとはまるで別人のよう……。
憂いに満ちた眼差し。
大きな出会いと別れでもあったのでしょう」
「ああ。姫は……」
姫は話し始めた。
「私は元はただの商家の娘でしたが、その外見から貴族たちの争いの種になり……隣国の王の元へ運ばれる途中にあなたにさらわれ、それからあなたの後から川に身を投げました。
元の家は既になく、出来ることと言えば、少しの教養とカンの良さで占いのまねごとをして日銭を稼ぐくらいでした。
人を騙すに近いことをしていますから、昔のあなたととやかく言えるものではないですね」
アガベは首を横に振った。
「姫の言うことの鋭さには時折驚かされる。
思えば、その言葉と瞳に動かされ、俺は山賊をやめる生き方が出来たのかもしれない。
それでも、誰かを傷つけず、奪わない生き方は難しい」
姫は驚いているようだった。
「しかし、俺は山賊にはもう戻らないし、僧侶にも、商人にも向いていなかった。
これから何をしたらいいだろうな?」
「ならば、しばらく私の手伝いをして下さい。
雑務や護衛、客引きなど、丁度便利な人手がほしかったところです」
姫の申し出にアガベはポカンとした顔になった。
「お嫌でしたら……」
「いや、やる。姫が俺に頼るなど、予想外で……」
「私は瑠璃色姫と呼ばれていただけで、姫ではありません。
ヤマルリという名前があります」
「ヤマルリ……いい名前だ」
アガベは噛みしめるようにそう言うと、ヤマルリは「おかしなひと」と言って笑った。
12・相談
アガベとヤマルリが一緒に生活するようになってから二か月ほどして。
ヤマルリの元へ一人の美しい貴族の娘が訊ねてきた。
「アイボリーと申します。身分が下の兵士と恋に落ちてしまったが、とても周りから許されません。
私は近いうちに父親くらいの年の貴族に嫁がされるでしょう。
私はどうすれば……」
ヤマルリはアイボリーに告げた。
「本心は駆け落ちしたいが、決心がつかないのでしょう?
ただ、先に言っておくとあなたのような家柄と美しさしか取り柄のない娘が落ちぶれると、悲惨な末路を辿ります」
「なら、心を殺して見も知らぬ男の言いなりになって一生過ごしたほうがいいと……」
ヤマルリは少し悩んでから言った。
「……私があなたの立場なら、政略結婚の相手の不備な点を秘密裏に調べ、両親にこの結婚の危険性を説きますね」
「でしたら!来週、婚約者の屋敷で開かれるパーティに是非来てください!!
占い師様が両親を説得して下されば、きっと!!」
「……私如きの言葉を信じてもらえるとは……」
「いえいえ、あなた様は周りの婦人たちの間で有名になっていますから!!
きっと大丈夫です!!」
ヤマルリは渋々頷いた。
娘が帰ると、ヤマルリはイライラと足をばたつかせた。
アガベが気になって声をかけた。
「どうしたんだ、いつもは相談に乗る以上のことは決してしないのに」
「別に……ただ、籠(かご)の鳥にしかなれないあの子を見ていたら、ね……」
「かつての自分を見るみたいだった?」
ヤマルリはアガベの足を蹴ったが、アガベはびくともせず笑った。
つられてヤマルリも笑ったが、目はどこか虚ろなままだった。
13・狂乱
ヤマルリとアガベは礼服を着て貴族たちのパーティに向かった。
貴族の娘アイボリーから受け取った招待状を門番に見せたら、あっさりと屋敷に入れた。
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ヤマルリは顔をヴェールで覆っていたが、隠し切れない神秘的な雰囲気で周りの目を惹いた。
アイボリーは遠くから二人を見て、ヤマルリは頷いた。
ヤマルリはこういった場に慣れているようで、あちこちで婦人たちと会話をして、さり気なく様々な話を聞き出したり、少しのアドバイスや励ましの言葉で信頼を得ているようだった。
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アイボリーがさり気なく、両親らしき二人と、婚約者らしい中年の男を引き連れてヤマルリの元に来た。
「占い師様、今日は是非とも私と婚約者の運命を占ってほしいのです」
ヤマルリは頷くと、水晶玉をテーブルに置いて手をかざし、じっとアイボリーと婚約者を見つめた。
「婚約者様は金運に陰りがあるようです。
それから、遊びの方もほどほどにされたほうが……」
「まあ、本当なのですか?!」
ヤマルリは予め、この婚約者には借金があり、女癖が悪いことは調べていた。
貴族や商人の婦人の多くから情報を得ている彼女の情報網はかなりのものらしい。
「大きな花をつけた巨木は一見、頼りがいがありますが、大きな洞(うろ)のある幹は存外倒れやすいものです。
それなら未熟な伸びる苗木のほうがよい、という見方も出来ます。
洞の穢れを取り除けなければ……」
それらしい解説をヤマルリが続けていたが、顔を伏せていた婚約者が突如怒鳴った。
「人の結婚にケチを付けおって、ペテン師如きが!!!
その顔を見せろ!!!」
婚約者がヤマルリのヴェールをはぎ取ると、その美しい顔が露わになった。
周りがざわついた。
「お前は……見たことがある。
かつて周辺の貴族や王族たちを惑わした魔性の……瑠璃色姫、だったか……?
……噂にたがわぬ美しさ……私のものになれ」
アイボリーの父親は怒鳴った。
「婚約者が娘の前で何を言うか?!
いや、私の妾になってくれ!!!……いや、正妻になってくれ!!!」
「ふざけるな、私の……」
「いや、俺の……」
ヤマルリは青ざめた顔で立ちすくんだ。
アガベはヤマルリの手を引っ張って屋敷の外へ走り出した。
「逃げるな!!!」
「あなた、私というものがありながら……」
「待て、あれは俺のだ!!!」
「あの魔性の女!!きっと魔女よ許せない!!!」
「捕えろ!!!誰のものになるかはそれからだ!!!」
二人はあてもなく走り、貴族たちと兵士たちは時々小競り合いをしながらそれを追った。
二人は崖に追い詰められたが、崖の下には硬そうな尖った岩しかなく、今度は落ちて逃れる術はない。
「男、その魔女を渡せ。悪いようにはしない」
「ああ。我々は思いついた。誰のものにするかで争うくらいなら、ここにいる名誉ある男たちの共有の財産にすればよいのだ!!
瑠璃色姫にも綺麗な屋敷と服と豪華な食事を与えよう!!」
瑠璃色姫は顔を伏せて、声を出さずに泣いた。
アガベは頭に血が上った。
目の前の兵士を殴って槍を奪い、穂先を折ってから豪快に振り回した。
何人もの兵士や貴族たちを槍の柄で叩きのめしたが……すっかり戦いのカンは衰えていて、遠くから弓矢で狙われているのに気付くのが遅れた。
「うぐっ?!」
矢がアガベの利き腕に刺さった。
それから、何本もアガベに矢が放たれ、半分は槍を振り回して防いだが残りは身体のあちこちに当たった。
「うがぁーーーーーーっ!!!」
それでもアガベは止まらず、まだ動く片腕だけで暴れ続けたが、兵士たちの槍に次々と刺された。
「やめて!!!」
ヤマルリは近くの兵士から松明を奪い、自分の顔の一部を焼いた。
男たちは愕然とし、肩を落として帰っていった。
付いてきた貴族の女たちもヤマルリに罵声を浴びせてから帰っていった。
14・絶望
その後、アイボリーは女中の力を借りて二人を郊外の小屋に連れて行って手当をした。
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血だらけのアガベはヤマルリの頬に手を当てて泣いた。
ヤマルリは薄ら笑いをしながらその手を取った。
アイボリーは「こんなことになって……ごめんなさい」と少しの間生活できる程度の銀貨を置いて立ち去った。
それから一か月して。
ヤマルリの顔の火傷は落ち着いたものの傷跡は醜く残った。
アガベの体中の傷は塞がったが、かつての力強さは失われ、よろよろと歩くことが精一杯になった。
なにより、生きる気力を失ったようだった。
ヤマルリはそんなアガベを甲斐甲斐しく世話をした。
「あなたは私の美貌が失われたことがあまりにショックなようだけど、私は清々した。
もう、あなたが私に執着する理由もないわね。
どこに行くことも出来ないからここにいるだけなのかしら」
「……」
「ねえ、私はずっと今まで人の欲望や争いに巻き込まれてきた。
私は自分の見た目なんてどうでもいいけど、あいつらに大事なものを奪われ続けてきた怒りだけは消えそうにない。
……元々はあなただって奪う側だったわね。
でも、あなたのことだけは嫌う気になれないのは、なぜでしょうね……」
「……」
「ねえ、あなたはなぜ何も言わなくなったの……?」
「……守ることも出来ず……もう……何も出来ないから……」
「そう。私は別にいいわよ。
以前はあなたが私をさらい、あれこれと果物や焼いた肉やらを届けて世話をしてくれたけど、今は逆の立場ね。
こうして誰かの面倒を見るのははじめてなのだけど、案外悪い気はしないわ」
そんな日々がさらに一か月経った頃、ある日唐突にヤマルリは叫んだ。
「決めた。
私は今まで貴族たちから集めた情報であいつらをグチャグチャにしてやる。
誰かの浮気や、恨みごとや、隠し子、不正、嫉妬……正しい醜聞も、嘘の醜聞も、あらゆる悪意を世に放ってやる。
互いを恨ませ、殺し合わせて、奴らが同士討ちする間に屋敷に火を放ってやる。
きっとスカッとするでしょうね!!!」
爛々と輝く瞳で、瑠璃色姫は小屋を去った。
アガベはヤマルリが立ち去るのを黙って見ていた。
ふと、これまでの人生が頭によぎった。
暴力しか教えられなかった幼少期。
気が付いたら山賊の頭になっていたこと。
ヤマルリとの出会いと別れ。
先生や行商人との出会いと別れ。
ヤマルリとの再会。
裏切られた数々。
かつての自分なら、ヤマルリをこんな目に合わせてきた者たちを残らず復讐して回っただろう。
今はそんな体力も、気力すらない……その代わり、ヤマルリ自身がそれをしようとしている。
暴力と争いをあれほど憎んでいたヤマルリが……。
このままいけばどうなるだろうか?
誰かに殺されるかもしれない。
いや、賢い彼女のことだ、気が済むまで復讐し、またここに帰ってきて一緒にどこかへ逃げのびるだろうか?
それでも、仮に上手くいったとしても、彼女はこれからどう生きていくんだろうか……?
アガベはよろよろと立ち上がり、アイボリーの婚約者の屋敷へと向かった。
15・復讐
アガベが屋敷の前に辿り着くと、屋敷の中では誰もかれもが言い争い、掴み合い、さらには剣で斬り合う者たちさえいた。
ヤマルリは屋敷のバルコニーからそれを無表情で眺めていた。
彼女に、剣を持ったアイボリーの婚約者が背後からジリジリと迫っているのが見えた。
婚約者は言葉にならない怒りと呪いの言葉を彼女に浴びせた。
ヤマルリはそれを一瞥しただけで、再び人々の争う姿を眺めた。
アガベはふらふらした動きで、けれど懸命に前へ前へと走り出した。
屋敷の中に入り、争う人々を避け、息を絶え絶えにしながら階段を登った。
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アガベには婚約者がヤマルリに剣を振り下ろすのが見えた。
ヤマルリと目が合うと、彼女は力なく微笑んだ。
アガベは渾身の力で婚約者に体当たりし、自分もろともバルコニーから突き落とした。
落ちれば高さは10m近くあるだろう。
ヤマルリは咄嗟に身を乗り出してアガベの胴体を抱きしめるように掴まえた。アガベの身体は逆さまになってバルコニーの下にぶら下がった。
「はなっ……せ!!」
「馬鹿!!!なんでこんな無茶を……」
「馬鹿はお前だ!!全然心から笑ってないくせに、復讐なんてガラにもないことをして!!
それで死んでしまおうなんて、本当に馬鹿だ!!!」
「馬鹿が馬鹿って言うな!!!私の気も知らないくせに!!!」
「ああ、知らな……」
「あっ?!」
ヤマルリの身体がバルコニーから離れて落ちて行った。
アガベは咄嗟に身体を捻ってヤマルリを抱きかかえた。
”ばしゃーーーーーん!!!”
バルコニーの下にはため池があり、二人はそこに落ちた。
ずぶ濡れになった二人は顔を見合わせてから笑った。
「よし、逃げよう」
「はい!!!」
二人はため池を出て、肩を互いに貸しながらよろよろと前へと走り出した。
アガベはちらりと屋敷を振り返ると、一部の人は争いに疲れ、あるいは仲直りをし、また一部は未だに争い合い、そして婚約者はバルコニー下の樹の上で助けを呼んでいた。
16・これから
二人は元居た小屋へびしょ濡れのまま歩いていった。
「ねえ、これからどうする?」
「……俺にはもう、人並みに動ける体力はない。君を守りたくても出来ないんだ」
「さっきは出来たじゃない」
「……戦って守ることは無理だよ」
「出来なくなったことは、無理にやらなくていいよ。
それより、私は君が好きになった顔じゃなくなった」
「別に、顔で好きになったわけじゃない。
上手く言えないけど、大切なんだ」
「そっか」
ヤマルリは空を見上げ、少しだけ目を拭った。
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「まあ、その辺はお互い様ね。
だけど、これからどうやって生きていこう?」
「なんとかなる」
「何も持たない私たちが誰かから奪ったり自分を貶めることもなく、生きていけるのかな?」
「出来なかったら、またその時ふたりで考えよう」
「それで、一か月後は二人で仲良く飢え死にしているかもしれない」
「やれることを全てやった上でそうなったら、それで仕方ないんじゃないかな」
「それでいいの?」
「ああ。その一緒にいられる一か月を大事に生きよう。
……嫌か?」
「はあ……」
二人は顔を見合わせた。
「あなたって、本当に馬鹿ね」
「その通りだな」
二人は笑った。
17・またね
それから、二人は先生が暮らした小屋で薬草を育て、薬にし、それを売って生計を得るようになった。
「花畑に行く約束をしたら、なんで二人で薬草畑を作ることになってんの?」
「花畑には違いないだろ」
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二人はよく笑った。
それから月日が経ち、子どもが二人とも生まれ、その子たちも大人になって家を出て、二人は老いていった。
「これまでの人生、たくさんのことがあったなあ……」
もう起き上がれなくなったアガベはそう呟いた。
「罪を犯したことも、誰かを許せなかったことも、大事なひとと出会ったことも……
色々あった」
「そうね」
「もし、生まれ変わったら、同じことをまた繰り返すのだろうか?」
「どうだろう、また人間として生まれたら、そうなるかもしれない」
「……」
「人間や世界そのものを恨んだこともあったよ」
「私も」
「だけど、今は、多くを……感謝しているよ」
「そう」
「生まれ変わったら、また君と……。
出会えて、今まで一緒にいられたことを……ありが……」
「私も……あ」
ヤマルリは呟いた。
「馬鹿ね。最後まで……ちゃんと返事を聞いてから……」
ヤマルリは庭の池に咲いていた二輪の蓮の花を川に流した。
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「またね」
あとがき
今回のお話の元ネタみたいなものは特にないです。
考え方のベースは仏教っぽいですが、特定の宗教や地域をベースにしたわけでもなく、架空の世界のお話です。
(なので高僧も肉を食べています。
現実の仏教も宗派や国によって普通に食べるそうですが)