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この世界が仮想現実かもと悩むあなたへ、世界サ終のお知らせ<短編小説>
一話完結、五分で読める短編小説
1・幼馴染
この世界は仮想現実なのか?だとしたら、一生懸命に生きる意味はあるのか?
最近僕はそんなことを考える。
「おっはよーーーう!!!今日も色々元気かい?!」
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隣に住む幼馴染のカナタが突然窓から入ってきて、僕の布団をはいだ。
「毎朝乱暴に起こすのやめろって言ってんだろ?!
鍵かけてるハズなのにどーしてはいってこれるかなあ?!」
僕たちは朝の支度を終え、彼女は家を出る前に年を取った愛犬シバノスケの毛並みを整えた。
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「もう、ここしばらくは散歩にも行けてないな……」
「……もうちょっと元気になったらまた、ね」
僕たちは学校へ歩き出した。
「あ、それでさ……昨日PCでAIと話していたんだ。
AIは自分が仮想現実の中に存在するなら、それに近い中身を持った人間たちが誰かが作った仮想現実の中にいる可能性がある、って。
どう思うよ?」
「さあね……あんたの場合、逃げ道探してるだけじゃないの~?
人生で一番やりたいことってないの~?」
「ぼ、僕のやりたいことは……世界の真実を見つける……とか?」
「あははは。世界の真実ねえ……例えば、空のヒビみたいな模様が世界のバグだったりしてね」
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「あれはただの空の模様だろ」
「ねえこの間、あんたがやってたソシャゲが急に終わったでしょ?
あんな風に世界が急に終わったらどうする?」
「どうって……ただ消えるしかないよな」
2・チートコード
放課後、カナタは何も言わず一人で先に帰った。
ふと、廊下にメモの切れ端が落ちているのを見つけた。
見たことのない文字の羅列……?
「なんだこりゃ?なんか意味があるのかな」
僕は家に帰ると、PCでメモの文字や記号をひとつずつ検索した。
どうやらあちこちのマイナーな言語を幾つか組み合わせたもののようだ。
苦労して全ての字を判別して、ちょっとした遊び心で検索バーに解読した文字列を入力してみた。
ウィンドウにメッセージが出る。
『入金完了しました、ご確認ください』
「うわ……これ新手の詐欺か……?」
念のためにスマホで自分の預金残高を見ると……。
「嘘だろ……残高が一兆円増えてる……」
「驚いた?!それはこの世界のチートコードさ!」
ふと振り向くと、いつの間にかカナタがいる。
窓も、ドアも開けずどうやって……。
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「なんだ、夢か……変なことばかり起こるのはそういうこと……」
「ある意味そうかもね。君の生きてきたこの世界は仮想現実だから」
「は?」
「おいおい、あれだけ仮想現実のこと考えていて、いざ証拠を付きつけられるとそれなの?
私は今チートで君の後ろにテレポートして見せたんだよ。
次は何して見せようか?
おや、もう月が出ているね。試しにあれを消してみようか?」
カナタが指をパチンと鳴らすと、月が消えた。
次の瞬間、窓がガタガタと鳴り、家の外には台風のような暴風が吹き荒れた。
「知ってる?月がなくなると引力の影響がなくなるぶん、地球の自転速度が上がって暴風が……」
「や、やめ……」
もう一度指を鳴らすと、再び月が現われ、暴風がおさまった。
「信じてくれた?」
「……ああ。お前は、いったい……」
「私は外の世界から来た本物の人間。
この世界を自由に変える権限を持っている……まあ、神とまでいかないけど、神の使いくらいの力はあると思ってね。
この世界で普通の生活をやってみたくて、毎日あんたと遊んでいたわけよ」
僕はめまいがした。
「本当に、お前はカナタなのか……?」
「うん、君と長年一緒にいたカナタだよ。
それでね、ぜひ聞きたいことがあるんだ。
今、自分が仮想現実に生きている、仮想の存在だと知った気分はどう?」
「どうって……言われても」
戸惑う僕を、彼女は見つめた。
「ああ、あとね、もうすぐこの世界は終わるんだけど……
悲しい?怖い?怒り?それとも虚無感?
ねえねえ、どうなのさ?」
僕はしばらく黙り込んでから言った。
「……帰ってくれ。
お前に話すことなんてない!!!」
彼女は無言のまま消えた。
3・シバノスケ
それから一週間、彼女と一切関わらなかった。
ただ、庭で老犬のシバノスケの世話をしているのを何度か見かけた。
かれこれ十年以上、僕とカナタとシバノスケでよく一緒に散歩に行っていた。
シバノスケが元気な頃は雨の日も散歩に行きたいと玄関の前でわんわん鳴き続けて、僕も一緒に連れていかれた結果、僕だけ風邪ひいたことがあったな……。
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この世界は仮想現実……世界は本当にもうすぐ終わるのか?
この、だんだん広がっていく空のひび割れはその証拠なのか?
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今まで幼馴染として一緒に過ごしてた彼女は、僕をどう思っていたんだろうな?
そんなある日、僕が家のトイレに座ると目の前にカナタが突然現われた。
「おまっ……?!」
「今すぐ来て!!!」
僕は(手を洗ったりしてから)カナタに手を引っ張られて、彼女の家のリビングに連れてこられた。
そこではシバノスケが苦しそうに息をしながら横たわっていた。
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「最近ちょっとずつ弱って……。
今朝はもうこんな状態で。
どうすればいいの……?」
「どうって……。
チートコードで病気を治したり出来ないのか?」
「獣医さんは……仮に奇跡が起こって悪い部分が治っても、もう寿命だからって……」
「じゃあ、若返らせたり出来ないのか?」
彼女は僕に掴みかかった。
「あんたは……小さい頃から一緒に育ってきたこの子を、自分の都合で作り直せと?!
お前はあれだけたくさんシバノスケと遊んで、散歩して……何の思い入れもないの?!
そんなことをしても、一緒に生きてきたシバノスケはいなくなるだろ?!」
「……悪かった。後は最後まで一緒にいてやろう」
「そんなことしか、してあげられないの……?」
「ああ。あと、なるべく名前を呼んでやったり、身体を撫でてやったり、水を飲みそうなら飲ませたり……それでいいんだ」
「シバノスケ……シバノスケ……」
彼女が名前を呼びながら背中を撫でてやると、シバノスケは急によろよろと立ち上がり、近くに置いてあったリードをくわえて、玄関へ向かって進んだ。
「シバノスケ?!どうしたの?!」
「……散歩、行きたいのか?」
「ワンッ」
カナタはシバノスケにリードをつけて、僕は玄関の外へシバノスケを運んであげた。
「いくよ、シバノスケ」
「ワンッ」
彼女は泣きそうな顔で笑い、リードを持って歩き出した。
シバノスケは元気だった頃のように、小走りで一歩、二歩……五歩、十歩、二十歩と駆け出した。
シバノスケは後ろを振り返り、カナタは笑った。
僕にはシバノスケが笑ったように見えた。
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シバノスケは倒れて、動かなくなった。
4・存在
僕はシバノスケの身体を布で包んで、ダンボール箱に入れた。冷やした保冷剤も布とビニールに包んでいくつか一緒に入れておいた。
カナタは箱に花と、リードと、シバノスケが好きだったドッグフードを入れた。
「なんか、色々ありがとう……」
「ああ。市役所に電話したら、ペットを弔える火葬場を紹介してくれた。予約が取れたから……」
「この子を、焼くの……?」
「抵抗感があるのはわかるが、いつまでもそうしては……」
「そっか……やけに手際がいいと思ったら、あんたも去年猫のミーちゃんを亡くしたからか」
「そうだな」
「教えて、この胸に空いた穴は、どうやったら塞がる?」
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「……時間が経てば、ちょっとずつ塞がる。他のことをやったり、誰かと関わっていったら気が付けば塞がっていく」
「それは、この子を忘れるってことじゃないの?そんなの嫌だよ……」
「……胸の穴が完全に消えることはない。
なあ、仮想世界の僕やシバノスケって魂はあるのか?」
「どうだろう。
そもそも魂や自我というものは存在するかわからない。
あると言えばある、ないと言えばない、そのくらいのものだと思う」
「そっか」
「だから……シバノスケを灰と骨にしちゃったら、残るのは首輪くらいかな」
翌日、僕とカナタは火葬場でシバノスケの遺体を焼いてもらい、骨を骨壺に入れた。
「思えばさ、シバノスケとも色々遊んだね。
小学三年のとき、三人で雪合戦したの、覚えてる?
シバノスケが一番はしゃいじゃってさ」
「ああ、覚えてる。
カナタが派手にすっころんだら、キュンキュン言いながら周りを心配そうにウロウロしてたっけ」
「ああーー、それで痛いのも忘れて笑っちゃったんだよね」
僕たちは笑った。
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「思えばなんとなくこの世界に来てから、ずっとここで生きていく気になったのは、あの子がいたからなのかもね」
「……残ったのは骨と首輪しかなかったか?」
「ううん……思い出が残っている。
今の私が在るのは、シバノスケのお陰でもあるから……そっか、こうやって存在って、繋がっていくのか」
僕たちは空を見上げた。
空のヒビが全体に行き渡り、あちこちが黒く光を失っていった。
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「なあ、世界が終わるとしたら、世界の管理者は僕たちに告知や挨拶ってするのか?」
「しないよ。君がやってきたソシャゲの管理者はプレイヤーには告知しても、その世界のキャラクターにはそんなことしないでしょ」
「そっか。どうしてこの世界は終わるのかな?」
「どの世界も永遠に続けられないから、かなあ」
「そんなもんか。……この世界が終わったら、カナタはどうなる?」
「元の世界に戻るだけ」
「僕はどうなる?」
「たぶん消える」
「そっか」
「今日世界が終わるとしたら、あんたは何をしたい?」
「そうだなあ……」
僕は少しだけ考えた。
「一緒に帰りながら、話したいな。
いつもみたいにさ」
「うん。……あのさ。この世界と私がいた世界って、文明的な差はあっても、世界も人間もそんなに違いはなかったんだ」
「ああ」
「つまりさ、この世界が仮想現実なら、私のいた世界も仮想現実で、私も仮想の存在かもしれないんだよね……」
「そうかもな」
「だから、私は自分が存在するって確信がほしかったのかも……」
「それで僕に意地悪して、仮想の存在だって知ったときの僕の反応をみて、何かヒントを得ようって魂胆だったのか」
「……ごめんなさい」
「手の込んだ仕返しが出来ないことだけが心残りだ」
僕たちは笑った。
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僕はカナタを抱きしめて言った。
「僕たちは、今確かに存……」
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あとがき
シナリオは自分で全て書いて、AI(Bing)にプロットの論評だけしてもらって、それを元に少しだけ修正しました。
絵はAI(Bing)の出力です。