地域に開かれた場所としてイオンができること。 学生とのコラボ「イオンCDP」で、新しい風が吹く。
高崎商科大学では、「3.5本の矢プロジェクト」と題し、革新的な社会活動を行う企業と連携して、ビジネスを実践的に学ぶ学習を取り入れています。その一つが、2017年からスタートした、イオンモール高崎との「イオン・コミュニティ・デザイン・プロジェクト(イオンCDP)」。
企業の立場として、大学とのコラボレーションにどのような意義や価値を感じているのか。イオンモール高崎・ゼネラルマネージャーの頼岡成司(よりおか・せいじ)さんと、営業担当の長谷ゆき恵(はせ・ゆきえ)さんにお話を伺いました。
買い物だけではない、+αの楽しみを。自然と人が集まる魅力を生み出したい
頼岡:国内に約160店舗を展開しているイオンモールでは、「ローカライズ」をキーワードに、店舗ごとに、地域住民や自治体などとさまざまな地域連携活動を行っています。イオンモール以外にも、大小多くの商業施設や商店がある中で、家から離れた場所であってもイオンモールに足を運んでもらうにはどうしたらいいか。そう考えたとき、大切なのは、買い物以外にも訪れたくなる魅力がある場所であること。また、自然と足が向くような愛着のある場所であることです。
そのため、イオンモール高崎では、音楽やダンスなどの趣味活動の発表の場を提供したり、自由に歩けるウォーキングコースを館内に設けたりと、地域の皆さんの憩いの場となるような取り組みを行ってきました。
そんな中で、高崎商科大学から、このプロジェクトのお話をいただいて。地元にある大学とのコラボレーションは、当社が目指す「ローカライズ」の理念と合致した、これまでにない地域連携の機会だと感じました。学生ならではの視点から生まれたアイデアを店舗運営に反映することは、とても興味深く、価値のある取り組みだと思ったのです。まず大学にお邪魔して、「イオンモールが地域に果たす役割」という観点で、学生の皆さんに講義をするところから、プロジェクトはスタートしました。
大学に足を運んで印象的だったのは、すれ違った学生さんたちが皆、自然にあいさつをしてくれたこと。礼儀やマナーが身についている若者が集まっているのが高崎商科大学なのだなと、とても好感を持ちました。
長谷:私も一度、講義をさせていただいたのですが、学生の皆さんは、こちらの話を真剣に聞き、メモを取っていました。質疑応答の時間にも、鋭い質問を投げかけてくれて。とても熱心に取り組んでいることがよく分かり、うれしい気持ちになりました。実際に、一緒プロジェクトを進めていくにあたっても、自分たちで考え、自分たちで推進する力があるなと感じています。イオンモール側からの要望もしっかり取り入れた上で、自由な発想で企画を進めてくれているので、とても心強いです。
大切なのは、実現性と熱意。企業人として厳しい目で審査する
長谷:イオンモールは、地域のお客さまの健やかな暮らしや心の豊かさをサポートする「ハピネスモール」を、全社を挙げて推進しています。
今回のプロジェクトでは、そのテーマの4つの柱である「Health」、「Wellness」「Community」「Opportunity」のいずれかに沿った内容の企画を提案していただくことを大学側にはお願いしました。そして、地域の皆さんが、イオンモールを「買い物だけでなく、コミュニティの場として活用すること」をゴールとして、プロジェクトが本格的に動き出しました。
学生の皆さんはいくつかのチームに分かれ、それぞれに企画を考案。それをわれわれにプレゼンテーションします。われわれは、企画内容の審査をして、採用する企画を決定するという流れです。企画を考える前には、学生の皆さんが想定したターゲット層に対してアンケート調査を行い、そこから見えた潜在ニーズや課題をもとに、どんなことを行えばその課題が解決するかを考え、授業で学んだマーケティングなどの知識も織り交ぜながら、企画を練ります。【参考記事】学生たちの企画会議の様子
アイデアが面白いだけではダメで、実施計画に無理がないか、イオンモール側にどのようなメリットがあるかも大切なポイント。お客さまへのイベントの告知方法についても、具体的に企画に盛り込まなくてはいけません。
頼岡:企業の中で実施するイベントですし、実施のための予算はこちらが負担しています。ですから、学生だからと言って甘く見ることはしていません。目的が明確で、ターゲット設定から実施に至る計画まで、すべてにおいて筋が通っているか。また、それだけではなく、企画を実現させたいという熱意があるかを重視して、審査をしています。
パッパッと適当につくったとか、やらされている感じがするとか、こちらは見ていてすぐに分かってしまうもの。一定のレベルに達していなければ、企画を一つも採用しない場合もあり得ます。しかし、そんな厳しい条件の中、学生の皆さんは毎年必死に取り組んでくれて、これまで毎回すてきな企画を採用させていただいています。
求められるのは、「安心・安全」。学生ならでは視点が、今こそ必要
頼岡:弊社には、毎年新入社員が入ってきますが、学生の年齢に近い若手社員にとって、このプロジェクトは大きな刺激になっているように思います。学生からのアイデアに対して真剣に向き合ってフィードバックをすることで、社会人として、また企業人として客観的に自分自身を見つめ直すことができるはずです。
長谷:私は入社2年目なのですが、私が学生のときは、こんなふうに企業と何かを一緒に行う機会はなかったので、うらやましく思います。真剣に取り組んでいる姿勢はとても刺激になりますし、学生ならではの視点から生まれるアイデアは、とても新鮮です。
例えば、今年実施した「しあわせの木」はとても良いアイデアだなと思いました。段ボールでつくった大きな木に、訪れた人が、最近起きた「しあわせ」を書いて貼りつけるというものです。コロナ禍で人と人とのつながりが希薄になっている中、直接は会えなくても、小さな幸せを共有するというのは、「ハピネスモール」の取り組みに合致するものでもあり、すばらしいなと思いました。
頼岡:今の学生たちは、良くも悪くもインターネット社会の中で過ごしていますから、情報の集め方、活用の仕方が上手だなと思います。いろいろな選択肢の中から、イオンモールにマッチする企画を考えることは、学生にとって難しくも貴重な経験でしょう。
今後もこれまで同様、高崎商科大学と協同して、「ローカライズ」の視点で一緒に地域を盛り上げていけたらうれしいです。ただ、これからは、コロナ禍ならではの視点が欠かせません。これまでは「集客をはかるために何をするか」ということを念頭にやってきましたが、それ以前に「安心・安全」が重要なキーワードになります。誰にも経験がないことで、非常に難しい局面です。簡単に答えが出ることではありませんが、「安心・安全」は、コロナ禍に限らず、重視しなければならないテーマの一つ。答えがない課題に対して何ができるか、そういった点も踏まえて、学生の皆さんには、良いアイデアを生み出してほしいですね。
学生の立場で、企業を舞台に学びを実践できることは、ほかにはない貴重な経験だと思います。ぜひ一緒に、地域を盛り上げていきましょう。
イオンモール高崎Community Design Projectは、イオンモール高崎の協力のもと、松元一明准教授(商学部経営学科・地域連携センターチーフ地域コーディネーター)をプロジェクト担当教員として実施されています。
松元 一明 准教授の記事
『"地域"を"プロデュース"する、
「地域プロデューサー」ってどんな仕事?』
今回インタビューした教授
商学部 経営学科
イオンモール高崎/頼岡成司・長谷ゆき恵
頼岡成司(よりおか・せいじ):
イオンモール高崎・ゼネラルマネージャー。「イオン・コミュニティ・デザイン・プロジェクト」では、講義、企画審査などを通じて、学生たちを幅広くサポート。
長谷ゆき恵(はせ・ゆきえ):
イオンモール高崎・営業担当。「イオン・コミュニティ・デザイン・プロジェクト」では、講義、企画審査などを通じて、学生たちを幅広くサポート。