[注意] サックスとフルートを持ち替えて吹かなければならないときの注意点
※本稿は、「主にサックスを吹いていて、第2楽器としてフルートを兼務しなければならないひとのための記事です。
また、これを書いている人はまだフルートがじょうずに吹けると呼べる域まで来ていません。
サックスを吹いているとしばしば、フルートへの持ち替えを要求されることがあります。
わたしも、その要求に応えるためにフルートを1年前に始めました。
さいわい、練習時間が豊富に取れたことと素晴らしいトレーナーに出会えたことで、フルートに取り組み始めて半年で録音などのお仕事でフルートを吹かせていただけるようになりましたが、実力を見ていくとまだまだ素人の域を越えない程度のものです。
ですので、本稿はサックスからの持ち替えでフルートを始めたが、なかなかうまくいかないなぁ、と思っていらっしゃる方にちょうどいい内容だと思います。
[演奏面]
・サックスを吹いたあとはアパチュアが大きくなる
サックスはマウスピースを咥えて演奏するのに対し、フルートの歌口はさらに小さなものとなります。
当然"的"が小さくなるのでアパチュアを狭くキープすることが肝要ですが、特にテナーサックスなど吹いた直後はこの小さなアパチュアに戻ることを忘れがちです。
一番大きな障壁と思ってよいと思います。
・フルートを吹く向きに注意する
例えば、ビッグバンドでサックスからフルートへの持ち替えをしているところを想像してみてください。
サックスを吹く時は箱馬(紙製のビッグバンド用の譜面台)に正対して演奏していると思いますが、フルートへ持ち替えた時の譜面台と体が正対しているのはおかしいはずです。
立奏で練習しているときにはできていたはずの体の向きを座っていてもできるようにしなければなりません。
・フルートとサックスは音量が違う
サックスの音量とフルートのそれはぜんぜんレベルが違います。
CDなどを聴いていると、そこまで違いはないように思えるでしょうが、当然のことながら録音物やプロのステージではPAさんやエンジニアさんが音のバランスを整えてくださっています。
とってもうまい人はフルートでも大きな音がしますが、それでもサックスのほうが大きな音となります。
ある程度サックスが吹けてしまう人は、とうぜんサックスを大きく朗々と鳴らすことができるのでその差はとっても大きなものとなります。
ここで気を付けたいことは、フルートに持ち替えて音量が小さくなると不安になり、余計に大きな音で吹こうとすることです。
そうすることにより逆に体はこわばり、基本に忠実でなくなり大きな音どころか普段の練習より小さな音しか出なかったりミストーンを出してしまったりすることがあります。
フルートに持ち替えたんだから小さな音になって当然だという開き直りをお勧めします。
大切なのは、平常心を保つことですね。
・フルートはサックスより音程のずれにシビアである
試しに、チューナーを用いてサックスを持って、あるべき音程より4セントほど高い音を吹いてみましょう。
そしてさらにフルートで同じことをしてみてください。
おそらくほとんどの方が、フルートで4セント高いほうがより狂って感じたと思います。
両者の音色に含まれる倍音の構成上、どうしてもサックスの音は倍音が多く"支配的"な存在となります。
対してフルートの音は倍音構成が乏しく、"被支配的"になります。
数値の上では同じだけ音程がズレているのに、フルートの場合はとっても狂っているように聞こえるのです。
これは、高い音域ほどずれが顕著に聴こえるという音域の差が原因の本質ではありません。
ソプラノサックスとフルートなら、ほぼ担当音域は同じですからこれも試してみるとよいでしょう。
そしてこのことは、サックスを吹く時にも充分に考慮されなければならない事項でもあります。
[楽器のこと]
・初心者用フルートは的が大きい
上のほうでアパチュアに関する内容を書きましたが、一般に、高級なフルート(上級者用)ほど"的"となるエリアが狭く、初心者用のフルートは広く作られています。
持ち替えが頻発するようであれば安全策として初心者用のフルートを採用するのもひとつの有効な手段だと思っています。
値段の高いフルートと安物のフルートの音の差なんて、マイクを通したりリバーブをかけたりしたら案外わからないものですよ。
・カバードキーはとっても心強い
これも一般的にはの話ですが、高級なフルートほどリングキーですね。
リングキーのフルートを買った人にどうしてリングキーを選んだのか尋ねてみましたところ、ほとんどの人が「かっこいいから」選んだんだそうです。
持ち替え選手にとってはなるべく安全面を重視したいところですので、カバードキーのフルートをお勧めします。
・H足よりもC足のほうが音量が稼げる
これもだいたい高級なフルートはH足が多いですよね。わざわざオプションで選んでH足にする方もいます。
クラシックフルートで、LowHが出てくる曲があるのでそういうのを演る方にとっては必要なものだと思いますが、ビッグバンドの譜面やジャズの演奏に於いてLowHを使わないといけないシーンはほぼありません。
これも、H足フルートを持っている人に何人か尋ねてみたのですがやっぱり「H足のほうがかっこいい」と思ったから買ったそうです。
「H足+リングキーだと上手そうに見える」と言うことなんだそうですが、C足+カバードキーの達人はたくさんいたのですよ。
そして、少しでも稼ぎたい音量はC足のほうが望めます(特に低音域)。
わたしはフルートダモーレだけはBb足を選びましたが、今となってはC足でよかったと思っています。
C足管だけ作ってもらおうかな・・・
[楽器のこと、番外]
・フルートスタンドにクッションをつけよう
サックス/フルートの持ち替えが1曲単位ならまだいいのですが、1曲の中ですぐに持ち替えて吹く、というシーンは特にビッグバンドのなかでたくさんありますね。
このとき、すごく急いで持ち替えしないといけないこともあるので焦ってしまいます。
フルートは繊細な楽器で、とくに縦方向の振動に弱いということです。
フルート->サックスの持ち替えを急いでやる場合、さっきまで吹いていたフルートをフルートスタンドにゆっくり丁寧に置いている時間はないかもしれません。
フルートスタンドの管が当たるところに何かクッションになるものを置いて、少しでも衝撃をやわらげてあげるようにしています。
[マイクのこと]
・基本はスタンドマイク
今ではいろいろな楽器取り付け式のコンデンサマイクが売られていますね。
わたしもライブ用にAudio-TechnicaのATM350Wを使用しています。
でもどうしてもキーアクションのカタカタ音を拾ってしまいますね。
このカタカタ音はバンドの他の音に消されてお客さんまでは届きません。
でも、ピアノとデュオになるとか、フルートでカデンツァとか吹くのであればおそらく聴こえちゃうと思います。
それとは別で、もっと基本的なことですがフルートを吹く時に「1点吹き」と言ってどの音域でも全く同じような角度で吹くのではないと教わりました。
音域によって息の向きそのものの方向が違うというわけですね
そうなると当然、マイクで狙うべき位置もかわります。ですのでわたしは先生からスタンドマイクを使いこなせるようになりなさいと教わりました。
また、マイクで狙う場所によって音の輪郭やちょっとしたニュアンスも変えることができます。
スタンドマイクもたくさんの種類がありますが、どこに行っても必ず置いてあるShureの58が使いこなせれば、それで充分だとも教わりました。
・フルートの回線は専用にしてもらう
演奏するお店の58を使うと言っても、PAさんによっては、奏者につき1本しか準備がないから(あるいは面倒くさいから)サックスもフルートも同じマイクを使って、と言われることもあります。
サックスとフルートは全く違う楽器なので、かならず「フルート専用」の58を1回線準備してもらってください。
かけるエフェクトも違えば、基本的な入力レベルも全く違います。
こういったやり取りが通用しないお店の場合は、楽器装着式のコンデンサマイクの持参も視野に入れてください。
・なるべく機材はシンプルに
現場にもよるのですが、リハーサルに充分な時間が取れないシチュエーションもたくさんあります。
プロの現場と呼べるほとんどのところでは、きちんと音響さんがやってくれるものなので安心していますが、自主公演などの場合、ただでさえサックス(場合によってはサックスも複数本)とフルートをケースから取り出してチューニングしてウォーミングアップをしてというなかで、マイクまで組み立てて、マルチエフェクターをセットアップして配線して、、、
とても間に合うものではありません。
本番前の時間はとても貴重で、可能な限り「バンド全体でのバランス調整」に時間を割きたいものです。
1奏者のマイキングなどに割ける時間はそう多くはないのです。
そのように考えると、やはり現場の58で吹くのが得策なようにも思えてきますね。
わたしの場合は、楽器装着式のコンデンサマイクは持参し現場にて判断、エフェクトはよほどのことが無ければPAさんに依頼、としています。
管楽器の場合のエフェクトと言えば、コンプ、リバーブ、コーラスが主ですが、サックスとフルートではそのかけ具合はずいぶん違うものだと思っていますのでそのあたりの機微がわかっていただけないPAさんの場合は自前のエフェクターを持参していきます。
[おわり]
いかがでしたでしょうか。いちおう底辺ながらプロの現場でフルートとサックスを持ち換えて吹いているものとしてイマ感じていることを列挙してみました。
わたし自身がまだじょうずにフルートを吹きこなせていないので、これから先に意見が変わることもあるかもしれませんが、かなり現実的な部分を挙げてみたつもりです。
こんなこともあるよ!とか、いやいやそれは違うと思うぜ!みたいなご意見をいただけるとありがたいです。
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