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2023 BEST ALBUMS
個人的なまとめも兼ねて。
年末はあっという間でもあり途方もなく長いような一年を強制的に感じさせる空気が漂っていて苦手。
この一年は、全身も後退もしなかったような一年だった。
特に目標を決めていたわけでもないし、去年は自分の今やりたいこと、好きなことを続けていく中で環境についていけなくなり、メンタルヘルス的にもコントロールできない状態になってしまったという感じだったので。
また音楽に限っては積極的に情報を取り込んでいくことは避けていた。
自分は症状的に何かしら外部から感覚的な刺激を取り込んでないと不安に取り込まれてしまうことが多いせいで、音楽自体は聴いていたが、同じ音楽をぐるりぐるり。
そんな中聴いていた音楽はどこか定まり切らない自分の気持ちも反映されていたのかな、と感じる。
今年まとめの音楽はレコードで買ったものが多い。思い入れがあるとやはりそういう媒体で欲しくなるし、インターネットを使わなくても音楽が聴けるもの、没頭できるものには助けられたように感じる。
Summer Eye / 大吉
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今年一番聴いた一枚。2020年シャムキャッツ解散のちボーカル夏目さんが始めたソロプロジェクト。
自分はミツメが大好きで10年代東京インディーなどに親しみはあるほうだったがシャムキャッツ自体はあまり聴いていた訳ではなかった。
このアルバムに詰まっている諦めの中の笑顔や希望。その答え合わせの一つはインタビューでもふんだんに語られていると思う。
機材に詳しくなくてもなんとなく聴いたことがあるリズム音に乗せて、地球の裏側で流れているような楽しげなダンスチューンが並んでいる。でも全ての曲で成功している人間がいない。みんなどこかで挫折して、それを酒の席で笑い話にするような逞しさも、いつまでも引きずる弱さも持ち合わせている。「うまくやろうとするな」と説教くさくなったり。
それって人生?自分がそう言い切れるものかはわからない。でも一人の生き方の提案が詰まっているのではないかな。
歌詞をじっくり見ながら聴く楽しみ方もあると思うし、自分は街の中を移動しながら(歩きながらでも乗り物に乗っていても)この音楽を聴いている時、移り変わる景色と高まるビート、頭の中に浮かぶ色々な感情と節々に聞こえる歌詞がリンクする瞬間が大好きだ。
結婚しようよ、ってこんなふうに言ってみたい
カネコアヤノ / タオルケットは穏やかな
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5/26、福岡市民会館でのライブを見てきた。
そこで歌うカネコアヤノとそのアンサンブルは、今までの日常を前に前に進めていくようなエネルギーやささやかな幸福を歌うものとはまったくの別物になっていた。
歌声はホールの天井でギターの音圧と神秘的に混ざり合う。レイドバックなビートを刻むリズム隊はボーカルに寄り添うわけでもなくお互いその場で初めてその曲を創り上げているような緊張感を生み、終わった後に何も言葉が出てこなかった。
不安というワードがあちこちに出てくる。
変われない「わたし」と「ふたり」はその不安を紛らわすようにお互いを確かめあう。
不安定で確実な愛、それを自分の人生にあてるのか血の繋がっていない他人にあてるのか、生きている間は複雑でそのバランスが掴めない。
夜、不安に脳を囚われて混乱とパニックした頭にこの音楽が光と影を描き出してくれる。
思い出野郎Aチーム / Parade
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ここまでの3つが今年の自分の心理的なモードを表しているように思う。
最初の印象は少し地味かな?というものだった。
今までもキラーチューンがいくつもあるし、今年行ったcircleというフェスで角張さんがDJしていた時もオーディエンスがすごく思い出野郎Aチームの曲で盛り上がっていた。
新しく出たアルバムは、それとは違うミニマルな印象。聴き流していると、ひとつひとつの言葉がとても とても繊細に形作られているのが徐々にわかってきた。
ダンス、パーティというリリックを多用する彼らだけど、その言葉はより概念的なものになっていて、多様なものを包み込む社会の受け皿としての意識がより強くなっている。
心で踊るのもよし、体で踊るのもよし。ポリティカルな言葉がナチュラルに響く世界に日本もなったらいいなと思う。
Oracle Sisters / Hydranism
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完全にジャケ買い。
この中央のモノクロのポートレイトが中のインナースリーブになっていて、周りのレインボーとの対比も合わさって非常に印象深いデザイン。
ビートルズ譲りの外さないグッドメロディー、緩急つけた展開に官能性も感じる懐広いソングライティングが、聴いていてとても心地が良い。
聴いたその瞬間にレコードの溝がなくなってしまうような瞬間的なノスタルジーが、いっぱいこのアルバムには詰まっている。
CHO CO PA CO CHO CO QUIN QUIN / tradition
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今年出た邦楽で一番衝撃を受けた作品。
早熟な彼らが繰り出す音楽は、民族的なエッセンスを受け継ぎながらもそれを全面に押しださず、ただ体を揺れ動かすポップミュージックとして機能しているところが本当にすごい。
小学校からの付き合いがある彼らも商業的なところは意識しだしてからこのグループを始めたとは発言しているものの、プリミティブな音楽の楽しさを感じさせてくれる、この着地点はずるいだろう?
SetagayaGenico / focus
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福岡で一番楽曲の方向性が好きで、数年前に自分が主導の企画にも出てもらったバンドのアルバム。
楽曲も歌詞もぎゅっとコンパクトになったけどそれがいい想像の余白を生んでいるし、前作よりも空間的なエフェクトがとってもうまくはまっていて、いろんな聴き方ができる作品。
あえて完璧に合わせきらない演奏の絶妙さも初めてMac Demarcoを知り、憧れたあの時とどこか同じルーツも感じさせる。
Pale Jay / Bewilderment
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レコードショップで流れていて一目惚れ(一聴惚れ?)した作品。店の人に聞いてすぐに買った。
どこまでも甘く切ない気持ちにさせてくれて透明なファルセットボイス、ジャケットのイメージにも近い水の中で漂っている曖昧な表情を感じさせる曲ばかり。
アルバムとしてのボリュームはないけど、A面B面聴き終えた後にまたA面から聴いてしまう中毒性がある。
Dana and Alden / Quiet Music For Young People
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タイトルから惹かれる。実の兄弟によるインストゥルメンタルユニット。
音楽は最近らしい手数多めのデッドなスネアが効いたドラムに甘美なサックスを交えたDIY感あふれるアンビエントジャズ〜ベッドルームポップなサウンドで、遊び心あふれた大袈裟な音色の曲もあり少なくとも”Quiet”とは言えないけれども、聴き終えた後の穏やかな心境は確かにこれも静かな音楽、と頷いてしまうような納得感もあったり。
Slow Pulp / Yard
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シカゴの4人組のバンドのセカンドアルバム。
とにかくこれぞインディーロック!という痛快で爽やかなサウンドはとにかく気分が上がる!
スローなナンバーも感情をさらけだすような歪んだギターで聴かせ、シューゲイザーからフォークまで横断したサウンドに過去の記憶、自分を卑下するような訴えかける歌詞とともに歌う曲には胸が熱くなること必死。
Video Age / Away From The Castle
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個人的に大好きなVideo Ageの新作アルバム。
リード曲『Ready To Stay』からして天まで登るようなシンセのフレーズ、その後の『Better Than Ever』まで繋ぎが完璧で代名詞でもある哀愁を誘うポップサウンドに浸れる作品。
ギターの音色が多様に使われているけど、Video Ageのサウンドの世界観を壊すことなくアップデートしているのがさすが。
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