子どもたちに届けたい素敵な出会い
──ニュータウンの子育てサロン
蔵王みはらしの丘は、山形市と上山市に位置するニュータウンである。みはらしの丘にこにこサロンは、みはらしの丘に住む未就学の幼児とその保護者を対象にした子育てサロンである。サロンは平成17年夏に設立された。サロン開催日は毎月第一・第三木曜日の午前10時から11時半に開催されている。
運営しているのは、すべてボランティアのスタッフであり、その代表を務めるのがみはらしの丘在住の武田あや子さんである。武田さんは、現在のグラフィックデザイン学科の一期生であり、現在大学生と中学生の2人のお子さんがいらっしゃる。
みはらしの丘にこにこサロンの代表は元々別の方が務めていたが、前代表の方が多忙により辞任したことをきっかけに武田さんが引き継ぐことになった。代表を引き継ぐ前にも、武田さん自身もお子さんを連れて参加する利用者の一人でもあった。当時、みはらしの丘は新しい街で、新たに引っ越してきた住民が多かった。武田さんもその一人で、引っ越してきたばかりの頃は知り合いが少なかった。そんな時に子育てサロン設立の話が持ち上がり、上のお子さんが幼稚園に入園し、手が空いたことをきっかけに子育てサロンを手伝うこととなった。
子育てサロンは、子どもの遊び場としての役割の他に、保護者同士の交流の場としての役割が大きい。幼児の世話は家に篭りがちになるため、気分転換に外出や、大人同士で会話をしたくなる親御さんが多いそうだ。子育てサロンは同じような立場の人が気軽に話せる場であり、同じ地域に住む人同士を繋ぐきっかけを作っている。子どもが成長して子育てサロンを卒業した後でも、そこで出会った人同士の交流が続く場合も多くある。
──子どもたちに良質な絵本を
武田さんは元々絵本が大好きで、子どもたちに良質な絵本を届けたいという思いがある。
武田さんは、絵本は子どもが最初に手に取る芸術品であると考えている。「上質な文章で書かれた、素晴らしい絵の本を紹介してあげたい。」とおっしゃっており、赤ちゃんの頃から上質な作品に触れ、審美眼を養ってほしいという思いがあるのだろう。武田さんによれば、絵本にはご飯になる本とおやつになる本があるという。絵本を子どもに選ばせると、例えば電車が好きな子は電車の本ばかり選びがちになってしまう。そこで大人が質の良い絵本をさりげなく混ぜて紹介してあげることで、子どもの世界を広げてあげることができるという。上質な絵本との出会いによって、子どもたちはより豊かに育っていくのであろう。
武田さんは子育てサロンの運営の他に、みはらしの丘小学校での読み聞かせボランティアに参加している。読み聞かせボランティアでは小学校の図書コーナーの本を何冊か選ぶことができ、「上質な本」を子どもたちに届けたいという思いをもとに、絵本から児童書まで多くの選定を行ってきた。武田さんの読み聞かせや絵本選定によって、素敵な絵本との出会いをしてきた子どもたちが沢山いるに違いない。私も武田さんが選定したという本を小学生時代に何冊か読み、今も記憶に残っている。
私自身、小学校時代武田さんの読み聞かせを聞いた経験があり、七夕とクリスマスに開催される読み聞かせイベントが楽しみだった。イベントでは手作りの人形劇や、大型紙芝居、ペープサート、影絵などどれも手がかかっていて、当時みんなが楽しみにしていたことを覚えている。それらの下絵のデザインのほとんどは武田さんが行い、ボランティアスタッフで作り上げていた。芸工大出身の武田さんは、芸工大での学びがそこで役立ったとおっしゃっていた。
武田さんはお子さんが成長した今も子育てサロンや小学校での読み聞かせやボランティア活動を続けている。インタビューで大変なことはないかと伺った際、「大変なことなんてないよ」と笑顔でおっしゃっていたのが印象に残っている。これからも武田さんと出会ったみはらしの丘の子どもたちやその保護者を支えていって欲しい。
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鈴木 麻友
東北芸術工科大学 総合美術コース
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