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ふるさとへ憧れ

自分を誰に、どこに還元すべきか———

お話を伺ったのは東北芸術工科大学コミュニティデザイン学科4年の川合佑汰さん。人当たりがよく、誰とでも打ち解ける彼が、休学時代の活動で得た知見とは。

—休学しチャレンジ

川合さんは2019年4月から2020年3月にかけて、大学2年終了時から1年間休学し、人口1,124人の島根県雲南市掛合町掛合地区に移住した。雲南市は全国的に見ても新しい市であり、「おれらは〇〇(地区名)の人だから〜」といったような、以前の村に誇りを持つ文化が残る土地である。現在はチャレンジに優しい町として、子どもから大人まで、さまざまなチャレンジプログラムを支援する制度がある。そこで「みんたくAda-n」の管理人として、主に「アダーンライブ」という音楽イベントを開催。

地域のヒアリングから、課題発見、課題解決の手法を見つけ、それを地元の人が自分たちで行えるような仕組みづくりをしていく。大学で学んだコミュニティデザインの手法を用い、自走できる地域の課題解決を目標としていた。しかし、地域の人との距離感や、そもそも「みんたくAda-n」が地域にとってどういう存在か知るにつれ、考え方や行動に変化が現れるようになった。

ー現状を正確に捉えコツコツ

移住当初は、音楽イベントで大勢の人を集めて、地域を盛り上げたいと考えていた川合さん。しかし、「みんたくAda-n」は公民館のように交流できる施設ではなく、移住者や感度の高い人が集まり「自分たちのやりたいことをやろう」がコンセプトの空き家だった。その存在が地元の人からは距離を置かれ、「よくわからない人たちが、よくわからないことをやっている場所」として認識されてしまっていた。

最初はうまくいっていた音楽イベントの集客も段々と客足が遠のいてしまった。思い悩んだ川合さんは、目標を見直し、課題発見以前に地域の人と関わりを持ち、仲良くなることが前提にあると気づいたという。

そこからは、小学校の読み聞かせに参加したり、高齢者サロンに顔を出したり、積極的に地域の人に顔を覚えてもらえるように努めていった。
「仲良くなることはできたけど、それって結局地域のためになったかっていうと、そんなに貢献できてない。活動にお金を出してもらっているし、地域からすればむしろ損をしたくらい。でも、これからその土地で成果を出していくには悪いことではなかったし、これからの関わりを変えていくことが必要だと思っている。」

川合くん

ーお世話になった地域に恩返しがしたい

この記事の読者に向けて、最後にこんな言葉をくれた。
「今は、コロナの混乱もあって、何が正しいか分からない時代。自分の正義の軸は、自分の大切にしたい人が幸せになるためにはどうしたらいいか考えること。誰のために自分を還元するか明確であればあるほど、次に何をしたらいいか見えてくる。」

地道な積み重ねで信頼と関係性を築いていった川合さん。彼のひたむきな姿勢が、地域に受け入れられることに繋がったのだろう。卒業研究も、雲南市のために行っている側面があるという。地域に根ざした暮らしには、彼のこうした謙虚で利他的な姿勢が重要であると思う。


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瀬戸あかね
東北芸術工科大学 総合美術コース


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