アートを通じた新庄市との結びつき
山形県の北東にある新庄市は、神室連峰の美しい山塊が連なる雪深い地域である。そんな自然豊かな地域を舞台に、アートを生かした活動を行う美大生がいる。東北芸術工科大学、芸術学部、美術科、総合美術コースに所属する3年生の樋渡響輝さんは、小さい頃から新庄市で開かれた「新庄まつり」に参加し、囃子や山車を作っていた。そんな彼は現在、アートを活用して人と関わる場の作り方について学びながら、地元である新庄市で展覧会やアートワークショップを開いている。
──展覧会を通じたつながり
高校1年生の頃に手伝いとして参加していた、地域の画材屋が開催した講座をきっかけに、新庄市民プラザの館長と顔見知りになった。そして施設の推薦によって2020年に、新人応援企画「樋渡響輝展」を開いた。さらに2021年には、この個展を通して美術教育の普及を目的にアートの楽しさを伝える「新庄教室」への誘いを受け、フリーザーバッグの中の水の感触、装飾による光の反射を楽しむ「キラぽよアクアリウム」を企画した。また、展覧会の影響は大きく、新庄駅で行われた展覧会「もがみのアーティストの集い」にも誘われ出展をした。小さい頃から関わりのある画材屋との関係から地域で初の個展を開くきっかけになり、様々な人との出会いにつながった。響輝さんは「個展から人とのつながりが広くなっていくことが面白い」、「制作などの共通しているものがあれば集まりやすいということがアートの良い点なのではないか」と語っていた。また、アートの持つ分野はとても広義的であり、応用できることが多く、いかにアートと地域を結びつけ、社会にどう価値を置くかが重要だと考えている。大人から若い世代にアプローチをする際、アートをどう活かしていけるかが今後の課題であるそうだ。
樋渡響輝展 展示作品「看板のある家」
──参加することから始まる
若手として地域に参入し、アートを通して様々な人と関係を築いていく。若者の地域とのつながりの希薄化が問題視されている中、自身のやってきたことが点と点で結ばれ、つながりが途切れず広がり続けることは珍しいことではないか。響輝さんは「まだまだ地域について詳しい方ではない。地元での活動を行なっていけるのは、周りの人たちの支えによるものだ。」と語っていた。
しかし、自身の制作をフルに活かし、積極的に誘いに乗り続けることによって、様々な人から信用され、声をかけ続けてもらえるのではないかと私は感じる。地域で何か活動したい時、大切なのは自身の存在を発信し、一つでも小さな接点を築くことである。そのためにも、地域のイベントに運営として、お客さんとして、どちらでも良いので参加することが初めの一歩なのではないか。
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森谷 隆広
東北芸術工科大学 総合美術コース
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