そっと寄り添い合う
画⾯いっぱいに広がる美味しそうなパスタ。
ナスの焼き⽬、トマトのぷっくりとした形、⾒ているだけでお腹が空く。これはクレヨンで描かれたものだ。柔らかで鮮やかな⾊の中にある⽩⾊が、より美味しそうに魅せる。
絵を描いたのは東北芸術⼯科⼤学芸術学部美術科総合美術コース 3 年の増⽊英莉さんである。
⾷べ物を描く際は実際に⾷べたものを描くというこだわりを持っているのだ。
──吸収して、外へ
紙を持ちマスク越しでも伝わるような柔らかな目をした女性は、今回インタビューさせていただいた増木さんである。
この写真は、クローバーの会@やまがたで実習を行なっている時の様子だ。
ここは、主に不登校の小・中学生や若者の居場所づくりを支援している場所である。資格を取るために必要な実習がきっかけとなり、関わりが生まれた。
活動に参加する中で、男の子に「バッタのお家を作りたい」と相談された時に増木さんはダンボールで作った。一年生の時にあったダンボール演習や二年生の時の共通演習でダンボールを扱った経験が活かせたと話していた。手を動かし、素材の特徴や可能性と向き合って学んだ事が外でも活かされたのである。
学んだ事が活かされた場面は他にもあった。実習期間中には「クレヨンの魅力 発見隊」というワークショップを行った。クレヨンを用いて気分を色で表す、いつもと違う描き方で夏野菜を描くという内容だ。フリースペースの活動に参加していた時に出会った、おとなしい、絵を描くのが好きな女の子との出会いがワークショップの内容を決めるきっかけになった。クレヨンを使って⾊の混ざり具合を楽しみながらイチゴを描く中で、⼥の⼦がとっても喜んでくれた様⼦を⾒た増⽊さんはワークショップをするならクレヨンがいい、⼥の⼦も来てくれるかもしれない、とクレヨンを使うことを決めたのである。
自分がやりたいことを優先するのではなく、相手の方を見てそっと寄り添い、そこかr見えてきたことを混ぜていく。
人との関わり合いやワークショップを企画し、実行する力は演習や有志の活動の中で身につけてきたものである。素材をどのように扱うか、参加者とどう関わるのか、回数を重ね、経験と知識を増やし、丁寧に向き合ったからこそ出来ることである。
──広がる学び、変わる
授業で得たことを有志の活動やワークショップの場で活かし、そこで学んだことを別の場で活かし、次々と自分の学びを広げていく。試作やシミュレーション、丁寧な準備を行うことで、周りを意識し、場に加わっていく人たちに寄り添っていくのだ。
一方的ではなく寄り添うような関わり方が場を作っていくうちの1つの要素だと改めて思った。過程を大切にする事で、より良い場の提供をする事ができ、思いは伝わると思う。
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名村 春音
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