私が「大学は行ったほうがいい」に賛同できない理由
折からの人手不足を背景に高卒の有効求人倍率が上がり続けている。合わせて賃金の上昇も行われており、これから就活をする若者にとって好条件が揃いつつある。SNSでもこの話題について触れ、「これからは高卒就職の時代!大学に行かなくてもいい!」と称賛する意見が多数見られた。
ただ一方で「高卒で就職は辞めとけ。出来る事ならFランでもいいから大学は出といたほうがいい」という意見も根強く支持されていたようで、人によって見方が大きく分かれているようだった。
大卒支持派の主張としては、
というものだ。
確かに大企業中心に新卒採用で学歴フィルターをかけている企業は多いし、平均収入を見ても大卒が高卒を上回るのは事実だ。大学を出る事でその後の人生に有利にはたらく面があるのは間違いないだろう。
ただ、それでも筆者は高卒で就職する事は全然良い事だと思っている。というより「Fランでもいいから大学には行け!」という考え方に賛同しかねると言った方が正確かもしれない。
何故かというと、大学に行くだけでは無意味で、自分に向いてる職や最終的に落ち着く職が大卒必須とは限らない、と自分自身の経験から感じるからだ。
筆者は高校進学時に地元を離れ、卒業後に就職が基本となる専門性の高い学校に進学した。卒業時に飛び抜けて不景気だった訳でもなく学校にも沢山求人が来ていたのでそのまま就職する事も考えた。
それでも大学に進学する道を選んだ。当時「将来の夢」として考えていた仕事があり、その道に行くには大卒採用が基本の大企業に入る必要があったからだ。大学でも必死に勉強して就活に万全の態勢で挑むつもりでいた。
だが、ここで躓いてしまった。
進学先は偏差値が特別高い訳ではないFランに近い大学で、高学歴の就活性も多く集まる大企業に行くのは応募の時点で不利であった。就職実績を見て大学は選んだつもりだったが、自分の行きたい職種や業界のハードルがいかに高いかについて考えが及んでいなかった。
それ以上にまずかったのが、企業に受かる上で本当に重要なものである、コミュニケーション能力や協調性、第一印象といった「人間性」の部分を磨くことを怠ってしまった事だ。バイトもサークルもやってはいたが精力的に取り組んでいた訳でもなく、就職後に活かせる何かを得る事がなかった。休日も趣味にふける事が多くコミュニティの中で役割を持つとか友人と何かを成し遂げるといった、ガクチカに相当するものが少なかった。勉強以外の所に力を入れない学生生活を送っていたのだ。
なので、就活には苦戦し目指していた業界は悉く不採用。一応大卒必須ではあったものの、夢とはかけ離れた地元の仕事に就くしかなかった。
就職後も人間性が未熟だったので仕事や人間関係でトラブルを沢山抱える事になった。働きはじめて2年もするとメンタルにも不調をきたすようになり退職した。
その後入ったのが、高卒でも入れる現場職の仕事だった。ここでも入社したての頃は仕事をこなせず苦労する事になった。ただ「これ以上しくじってたら本当に人生が滅茶苦茶になる」という危機感もあったので必死に仕事を覚え、人間性の部分も「社会人としての常識」を知識として身に着けどうにか順応していった。
そして仕事をやっていく中で「意外とこの働き方が性に合ってる」ことに気づいた。一度やり方を覚えてしまえばある程度自分のペースで仕事が出来て、社内行事が多いとか人間関係のしがらみもさ程ない職場の環境が快適だったのだ。学生時代にはこんな仕事に就くことは想像していなかった訳で、実際に働き始めてから気づいたことである。
現在もその現場職で働いているが、会社が傾くとか余程の事がない限りは続けるつもりだ。
大学から最初の就職までの経歴を振り返ると、高校卒業と同時に就職していた方が苦労は有れどマシだったのでは、もう少しまともな人生になっていたのではと感じる。少なくとも大学に行くためにかかったお金と時間に対してリターンは見合っていなかったと思う。
長々と書いてしまったが何が言いたいかというと、大学に行くだけでその後のキャリアビジョンが不明確であり、将来を見越した活動をしていなければ社会人になった時に躓いてしまう。数百万円の学費や4年という歳月を無駄にしてしまうという事だ。
あくまで筆者個人の体験談で自分の落ち度もあるが、世の中には学歴を得たにも関わらず相応の職や収入にありつけていない人が少なくないように見える。
大学で学んだことをキャリアに反映させる人生設計が出来ている人や、東大のように高学歴が付与され将来の選択肢が増える大学なら確かに行く意味はあるかもしれない。だが、「なんとなく行きたかった」くらいのつもりで大学に行って、勉強しかしない、遊んでるだけで終わりとなるなら高校出た時点で就職した方が金と時間の両面から得である。高校とレベルが大差ないFラン大学に行くなら特にそうだ。
ちなみに、大学に行く事は必然的に社会に出る時期を遅らせる事になるので晩婚晩産になりやすい。また、親にとっては「子供は大学まで行かせるべき」と言われると経済的な問題で複数の子供を持つのが難しくなるし、子供を持つこと自体の心理的なハードルも上がる。「大学に行った方がいい」と安易に言ってしまうのは少子化を促進する事にも繋がるのだ。マクロでも問題があるのも、大学進学を推奨する意見に賛同できない理由だ。