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『異世界美少女受肉おじさんと』から見えてくる各出版社独自の異世界モノ

『異世界美少女受肉おじさんと』
某所で紹介されていたので購入。タイトルでの地雷臭とは打って変わっての中身は良漫画。

また、異世界ともあるが国産異世界モノより、スカイリムの様な西洋ファンタジーを漫画内の絵からも感じた。多分、洋ゲーを参考にしているのだろうが、国産異世界モノの定番を絵からも意図して変えているのは見事の一言。この作品から見ても、小学館は異世界モノを自分のモノにしていると感じた。

後、扱っているのもTSF、トランスセクシャルフィクションと今話題を押さえながらも、どこか創作で古くからある性別逆転に近い。むしろ、バ美肉おじさん的なVTuberの心情として見た方が身近で共感を得やすいのかも知れない。
しかしながら、この要素もただ話題に乗っているだけでなく、物語の設定、展開にも上手く反映されており作品を面白くしている。

タイトルの地雷臭は単にHOTワードの詰め合わせではあるが、その実、漫画家がきっちりと話題を料理して商業として耐えうるモノにした作品であることは作品を読むことで分かる。
しかし、タイトルだけでそれを判断するのは厳しい。それでもこちらの作品は漫画アプリのため無料で読める範囲で判断が付くため、タイトルの弊害はないのかもしれない。

■昨今の異世界モノ人気は『小説家になろう』等から派生したモノである。しかし、多くのなろう系コミカライズ作品が出て、アニメ化もされる中で、各出版社は他者の原作に頼らないモノを模索している感じがある。

当然だろう、自社のみでメディア展開できる作品を作ることは魅力的な話だから。

そんな中、講談社は『ライドンキング』を筆頭にして漫画における独自の異世界モノを確立している。多分、異世界モノのノウハウは元祖なろう系といって過言ではない『転生したらスライムだった件』のコミカライズから得たのではないかと自分は推測している。
実際、『ライドンキング』を見ているとそのベースは作家と年代的なゲーム背景となろう系が見事に融合しているのが見えてくる。他の講談社の異世界モノも大体似た傾向である。

そして、小学館も少し遅れて『異世界美少女受肉おじさんと』、『異世界失格』で独自の異世界モノを確立したと感じた。小学館の場合は『魔王城でおやすみ』から見ても作家の独自解釈からの異世界モノではないかと思う。
そのため、これらの作品を読んでいてもなろう系の要素はあまり感じず、同出版社の他作品とも比べても違いは明白で作家独自性が強い。
『異世界失格』に関しては漫画家、原作者の両コンビの前作である『人魚姫のごめんねごはん』をベースに異世界モノと某文豪に置き換えている様に感じた。『魔王城でおやすみ』などは完全にゲームのパロディ、メタが主である。

集英社の場合も異世界モノに力を入れているのが見えるが、自身のレーベル、ダッシュエックス文庫があるから、これらのコミカライズで異世界モノを取り扱っている感じである。
ただ、集英社は異世界モノの人気に頼らなくとも、今のジャンプ漫画だけでも十分強いのだが。

それでも新たな「異世界×エロ」をマンガ原作として求めているのも上記から分かる。つまりはなろう系に頼ろうとしないとは見て取れる。

■正直、これらの作品例を挙げただけでも、ここ最近の異世界モノはなろう原作に頼らない構図を各出版社が作り出しているのは明らかである。

ただ、近年の異世界モノといえばメディアミックスに置いても立役者であったKADOKAWAは自身、また他レーベルからコミカライズをした結果、独自での異世界モノを構築できない様になっている気がする。
(ただ『異世界おじさん』はいろんな意味で別次元ではある…)
それでも、青田買いでかなり人気コンテンツを獲得しているから、独自の異世界モノを必要ないともいえる。ただ、青田買いの弊害でどうしても駄目な作品も多少なりとも存在しているのだが…

■ともあれ、今後の異世界モノはどうなってくるのか?
プロも多く参入した今となっては、アマチュアに入り込む隙はほぼ無くなったといえる。いわば、『小説家になろう』を初めとした小説投稿サイトから出てきても、よほどの実力等がない限りは商業の場では太刀打ちが出来ない。
それにプロが多い事はプロであっても異世界モノで勝負するのは厳しいモノになるだろう。
ここらを含めて考えると、異世界モノは過渡期を迎えており、人気のピークといえるのだろう。そうなれば、後は下っていくことになる。

ただ、異世界モノは普遍性であり、今ブームであってその衰退後でも無くなるジャンルではない。それでもこのジャンルで勝負をするには難しくなっていくだろうが。

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ツカモト シュン
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