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プライベートルーム

はじめて「田所あずさ」のワンマンライブで泣けなかった。

10年以上追いかけてて、毎度号泣してる奴の頭がおかしいのだが。デビュー前、小さな小上がりでほんの数人の前で歌う彼女と遭遇してから夢中になった。つまり自分が好きになったきっかけは「パフォーマンスが」とか「歌唱が」とかそういうのではなかった。彼女の人柄とステージ上の不思議な魅力。上京したての垢抜けてなかった(超失礼)彼女に、上京したてのクソガキオタクは必死で彼女の「何者か」になりたかったのかもしれない、必要とされたかったのかもしれない。好きの理由なんてどんどんどんどん後からいくらでも付いてきた。

そういう経緯もあるので、他の好きなアーティストとか作家とは、自然と自分の中で別枠に入れていた。

いわゆる推しであることで、これまでの思い出が多すぎて、また距離感が近過ぎたせいで、ある面では過小評価してきたのではないかと反省した。今回のライブはそう感じさせるほどに良かった。

今年はコロナ禍が明けて、世界の一線級で活躍するアーティストのライブに触れることができた。AURORA、Rina Sawayama、そして今公演と同じ会場ZeppDiversityではPhoebe Bridgers(なんて幸せな年なんだ!!!)(あと春ねむりは衝撃だった!)

安易に、比べてどうだとかそういう話ではなく(というより決して比べるものではない)。ただただ田所あずさ大好きおじさんで居ることとは別に、ひとりの人間として、そして音楽ファンとしても、今一度誠実に向き合いたいと思わせてくれた。それはやっぱり今年、音楽・ライブ空間の力を感じる瞬間が本当に多くて、それを本公演プライベートルームでも明確に感じたからだ。

ステージ上での天性の吸引力、磨きが掛かってきた表現力と歌声。Waver以降に獲得したチーム田所の作家性と想い。そして彼女自身の可能性、天井もしくは底の見えなさ。

本当に良いライブだった。
贔屓目でしか見れないんだけど、本当に良いライブだった。そして”まだまだこれから皆とみたい景色があるぞ”とも思った。3年8ヶ月ぶりの有観客ワンマンは集大成というよりも、これからの第一歩の要素を強く感じた。

今迄のエモーショナルに体から汗やら涙やらを垂れ流しながら叫び続けるライブも本当に楽しかったし、大好きだったし、人生の特別な瞬間だった。

でも今回のライブでは、もう一度彼女の創作活動と、そして自分自身とも向き合い直したい、そうまで思わされた。

だから、はじめて「田所あずさ」のワンマンで泣かなかった。

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