先日とある日の夜、着信があった
約二年ぶりに会話をする学生時代の友達、どうやら流行り病にかかってヒマらしい
彼とは「バイク」という共通の趣味があった
とはいえ学生なので免許も取れないしお金もない
under400という中型でも乗れるバイク専門の雑誌を2人で回し読みをしていた
そのころ周辺ではAKB48の人気が最高潮だった
俺は彼と
「わざわざCD買って握手会とか・・・意味わからんわマジで」
「なんやねん推しって 異性として見てるってハッキリ言えやまどろっこしい言い方しやがって」
「そんな金あるならバイク買うよな絶対」
気を悪くされた方がいたら申し訳ない
オタク文化が受け入れられつつあった時代だが、俺たちにはどうも性が合わなかった
社会人になり免許を取り、バイクも買い、何回かツーリングにも行った
それから約10年、
俺が香川から大阪に移り住んだ噂をどこからか聞きつけたのか
「今度大阪行くけん飲みに行こや」
と連絡が
ケンカしたわけでも嫌いになったわけでもない(向こうは知らんけど)がしばらく連絡を取っていなかった俺たち
あえてそこでは近況を聞かずに酒の席でいろいろ聞こう
「そうや、何しに大阪来たん?」
「BiSHのライブ見に来たんよ」
びっしゅ・・?聞いたことあるな
アイドルやった気がするけど・・
音楽に疎い俺に彼が畳みかける
「俺の推し、アイナ・ジ・エンド かわいいやろ?歌上手いし」
「あいなじえんど?語感はええけどエンドって
終わったらおえんで・・・」
その後も色々説明されたが完全に頭に入ってこない
オタク特有の早口とマシンガントークだ
「お前・・今そんな感じなんやな」
笑いながら言った
全くもって嫌悪感はない
ただ意外だった
それから2年たった今、電話で近況を話している
同級生の今の話、実家の土地の話、昔話・・・
積もる話はたくさんあった
「そや、今俺東京女子ってとこにハマっとんよ」
「マジか、プロレスと総合格闘技好きなんは知ってたけど新日とかノアちゃうんや」
そこからマシンガンのように選手の写真を送り付ける
『へー、なんか赤ちゃんみたいやな』
せやろせやろ、可愛らしいやろ
『結構ガッチリしてそうやな ほんでお前アレやろ、こういう感じの顔好きやもんな』
おいー、なんでバレてんねん・・・
『服可愛いやん・・3歳⁉︎ああ、そういうキャラね・・どっからどう見ても同年代やん』
プロレス好きじゃない人間はこういう壁を悪気なくサラッと超えてくる
『えちょ待って、なんで土下座しとん???』
色々説明がめんどくさいので無視した
ってな具合
他にも色んな選手の写真をマシンガンのように送りつけたところで彼がひと言
「お前・・今そんな感じなんやな」
どこかで投げかけたことのある言葉を投げかけられた
多分だけど嫌悪感で投げかけた言葉ではないと思う
2人とも今はバイクに乗っていない
雑誌すら読んでいない
ファン歴はそれほど長くないが東京女子のチケットやグッズ、遠征費に費やした金額があればバイクは買えるだろう
もしかすると東京女子に出会わずバイクを買っていれば、ツーリング先で出会ったパイオツカイデーのキレイなお姉ちゃんと結婚していたかもしれない
それはBiSH好きの彼も同じ
バイクと同じようにいつか東京女子から離れる日が来るかもしれない
死ぬまで応援しているかもしれない
この変化は進化なのか退化なのか分からない
でも俺は今のスキを誇りに思ってるし、そこで出会えた人たちとのご縁は大切にしたい
俺の運命はこうだったのだろう
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?