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【短編連作】神木町

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#神木町

【短編小説】エピローグのようなプロローグ

【短編小説】エピローグのようなプロローグ

 中学を卒業して、タツくんとカナコちゃんは大角建設に就職してきた。タツくんは半分正規でカナコちゃんはアルバイトだ。大角建設は、会社の規模を少しずつ大きくしている。
 まあ、見習いのタツくんもアルバイトみたいな給料ではあるけれど。18になって、重機の免許が取れるようになれば、正社員の約束である。
 タツくんもいろんな重機の免許を取りたいと言っている。眺めてて面白かったのだろう、この間は、フォークリフ

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【短編小説】相良

【短編小説】相良

 結局、氏神様にお詣りできたのは、大学4年の夏休みだった。地方の高校からまぐれで入れた医学部は、講義全てで自分の学力のなさが痛感させられた。1年は、授業準備とその理解、テストやレポートに明け暮れた。
 長い石段を登りなら、左手を見る。遠く見渡せていた景色は、今ではマンションの壁に遮られている。登り切ると、狭い境内に出る。正面に本殿。右に回り込むと、小さいながら舞殿があって、その奥が社務所だ。
 社

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