過去に書いたもの:Fukushima50観想
過去にFacebookなどに書きなぐったものを残しときます。3月に観たFukushima50の感想。盛大にネタバレしてるので見てない方はこの先読むのご注意。(映画館再開したらみんなぜひ観てください)。
結論から言うと
全然ダメ
でした。役者さんの演技の素晴らしさに対し、シナリオと演出がダメ。
原作となった、門田隆将「死の淵を見た男」を読んであんなに心震え、映画の製作発表からずっと心待ちにしてきたのに、心底がっかりして映画館を出ました。あかん思ったところを書きます。
①緩和と緊張のメリハリがない
地震後のスクラム成功、科学技術が自然災害をいなし切ったとの確信(緩和) → 津波による全電源喪失(緊張・絶望)とか、
待ちに待った外部電源車到着(緩和) → 電圧違いで使えず(絶望) とか、
逆に2号機のベント全手段失敗、このまま我々はここで死ぬとの覚悟(絶望) → サプレッションチェンバー破損によって奇跡的に圧力容器全破損は免れた(緩和)、とか、
現実(原作)にはものすごいドラマがあったはずなのに、全部さらっと流されてたよ
②家族ドラマ入れんな
1F制御室は男ばかりで女優出せないって事情は分かるが、副主人公は事態発生からほぼ落ち着くまで一歩も発電所を離れてないのに、無理やり遠方から心配する家族の話入れたって本筋になにも絡んでない。
むしろ、後から応援に駆けつけたプラントエンジニアこそ、「発電所を救うには俺の技術がいる、でも行けば死ぬ可能性も十分ある、家族と逃げても非難されない、でも逃げたら日本が死ぬ」って、技術者としての葛藤&家族との葛藤が描けるはずなのに。あっさり駆けつけてきてそれっきり。
③喧嘩シーン無理やりすぎ
例によって途中で反感買うようなこと言う所員が取ってつけたように出てきて喧嘩になるシーンが無理やり入ってた。
そんなの入れなくても、3号機水素爆発で、発電所所長を信じて動いたら部下を生命の危険にさらしてしまった自衛隊の隊長さんの怒りとか、なんぼでも描くとこあるのに。
④状況が全然読めない
いま危機に陥ってるのが1号機なのか2号機なのか3号機なのか(現実には時間差で危機が訪れた)ぜんぜん見えない。炉がどういう事態かもわかりにくい。
結果、「奇跡的な偶然で被害が最小限に抑えられた。でも、絶望的事態から、あと数個の奇跡があれば助かるところまで事態を引き戻したのは、発電所の男たちの戦いの結果」ってことが伝わらない。
⑤道化を出すな
管総理大臣と東電経営首脳陣が完全な道化役として出ている。これでは、この二人の馬鹿さに問題が集約されて、何のメッセージにもなってない。
私は、あの当時は両者とも(結果的に誤った判断や能力不足はあるにせよ)真摯に取り組んでいたことだけは日本人として信じたい。じゃあ、それなりに優秀で真剣な人間がなぜ馬鹿な判断や行動を起こしてしまったのか。過去のしがらみなのか?組織の問題なのか?情報の欠如なのか?そこが描けなけりゃ何の問題提起にもなってないと思う。
あーこれ書こうと思いだしたら再び腹立ってきた。しばらく日本映画(とくに大作プロモされてるやつ)は見ねえ。