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信頼の名のもとに

人の気持ちなんてわからない。他人はもちろん、家族でさえも100%理解することなんて不可能だと思う。誰だって楽しいときもあれば辛いときもあるし、それがどのくらいの程度・期間に本人の心身状態に影響するかなんて、その本人にしか体感できないのだから。でも時々いる、そういう人の心の痛みがほんの少しでもわかる人、それは同じだけ(もしくはそれ以上の)痛みを心に負ってきた証だと思う。ユンギさんはそういう人だと思う。

来世は石になりたいと彼はいう。動かず、しゃべらず、ただそこに存在する石。実は私も同じようなことを考えたことがある。何もかも“人間”という存在が嫌で、すべてがバカバカしく感じて、「来世は無機物になりたい、駐車場の車止めとかでいい」なんてツイートしたこともある。今思えばその発言そのものがバカバカしいものだと感じるが、そのときは本気でそう思ったのだ。その憤りを感じた原因そのものも、それを慰めようと当たり障りない言葉をかけてくれる人も、心底嫌だった。だから私は彼のその発言を知ったとき、そういう大きな憤りを感じた経験があるのかなと感じた。もちろん前述の通り人の気持ちを完全に理解することなんて不可能だと思っているし、直接しゃべったこともなければ会ったことすらない彼の思考を自分と同義だと考えるなんて勝手な想像にすぎないだろう。だけど実際に彼はメンタルの病気を患っていたことも語っていて、誰にも想像できないけれど、本当につらい日々があったのは確かだ。そういう背景を背負った彼だからこそ、メンバーやファンに何気なくそっと差し出す言葉ひとつひとつに温もりがあって、幾度となく人の胸を打つような音楽を作り上げ、実績を残し続けている。

現在の彼は、「死んでもBTSでいたい」と語っている。インタビューでもいかに長くこの活動を続けるか、音楽を作り続けていけるかを考えていて、そのためならば自分がもっと多忙になる必要があると。そんなこと言わないで、と心配するおせっかいオタク思考(恒例)があるものの、実際のところ確かにその通りなのだ。ここ最近の音楽はどんどん短くなるなどの確かな流行があり、商業的な目線での音楽制作にこだわる彼はそんな制約の中でメロディを築き、自分だからこそできる表現も加えて、どれだけ思考を巡らせても終わりがないような作業を長い期間ずっとこなし続けている。それも自国だけじゃなく、全世界に向けてだ。その行いは彼自身の時間や精神を削り、吸収してきたものを放出し、実直な努力をすることでしか得られない実績なのだと思う。誰にでもできることじゃない。そういうことを仕事としてこなし人々から欲されることで、自分自身の生活も人生も、アイデンティティも確立されていく。それを止められるのは彼自身だけだし、そのやり方を誰も口出しするべきではない。きっともう彼の仕事はそういう次元にはないのだ。だからこそ彼には思う存分にこの仕事を全うしていてほしいと願っているし、出来上がった成果に対して私たちも真摯に向き合っていく必要があると思う。

でももしもまた、どうにも疲れてしまって、ほんの少しだけ立ち止まりたくなったときは思い出してほしい。彼の傍らにはいつもメンバーたちがいること。背中には家族がいること。成果の先には私たちが待っていること。せわしない生活をこなして、いつか石になった暁には、メンバーたちがあなたを素晴らしい景色の中に連れて行ってくれることを。遠く離れた私たちがその景色のひとかけらであることを。だから今は、彼が思うままにその生活を、人生を着実にこなしていてほしい。私たちは来世でも必ず彼の心を揺さぶるような景色をお見せすると約束する。“頑張って”なんて安っぽい言葉でしか応援できないことが申し訳ないけれど、今の彼であれば自身の状態をきちんと理解し、心身の健康の重要さを噛み締めながら確かな仕事をこなしていけるはずだ。

努力することも、休むことも、頼ることも、頼られることも、全て経験してきたあなたなら、きっと大丈夫だと信じています。この信頼という名の愛が、どうか彼に届きますように。お誕生日おめでとうございます、ユンギさん。

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