積み立て方法から考える退職金制度~その2~
退職金は支払原資の積み立て(準備)方法によって、経費(損金)になるタイミングが変わりますが、全期間を通じてみれば結果的には税額は同じになります。最終的に結果は同じであるとはいえ、実際どのようにするのが一番良いのでしょうか?
会社ごとに事情は違うので、万能の解答はないものの、どのように考えれば良いのかを解説したいと思います。
会社にお金が残るかどうかを考える
税金の合計額が一緒である場合には、なるべく早い時期に手元にお金が残る方法を選択するのが鉄則です。余談ですが、そのために特別償却という制度がよく用いられます。
では、退職金の場合で考えてみましょう。まず、内部積立の方法ですが、これは前回説明したように積立額が経費になりません。そうすると、「積立額×法定実効税率」の分の税金が差し引かれた額が積み立てられていくことになります。一方の外部積立ですが、こちらは拠出時に経費となります。拠出した分だけ税金も減るので、実質的には拠出額以上に積立ができることになります。なんだか外部積立の方が良さそうな感じですが、実際に数字を使って見てみましょう。
内部積立で100を準備するとします。法定実効税率は30%とします。142を準備すれば、税金42が差し引かれるので、これで100の退職金が準備できます。外部積立で100を準備する場合には、税金が30減るので、実質的に必要な拠出額は70で済みます。内部積立には142が必要で外部積立は70で済むとなると実に2倍の差があります。必要な積立額の点では外部積立が有利ではあります。
積立額以外の注意事項
ただし、注意すべきこともあります。内部積立の100はいざというときに会社の資金繰りに使用することが可能です。また、直接その金額を使わなくても担保に使用したり、銀行格付を上げたりすることにも繋がるので資金繰りは有利になります。
しかし、外部積立の100については会社で使用することはできません。当然会社の資産でもないので、担保に使用したり銀行格付を上げたりすることはできません。
上記を踏まえて手元に残るお金を考えると、内部積立は100のお金が残り、外部積立は70のお金が流出することになります。手元にお金を残したいなら内部積立が有利です。ただし、内部積立を使ってしまえば、その分退職金を支払う時の負担は大きくなるので注意が必要です。
ここまでのまとめ
内部積立は積立額より多くの金額を必要とするが、いざというときに使える資金である。外部積立は積立額より少ない金額で済むものの、そのお金を使うことはできない、ということになります。どちらを選択するかは経営者の判断事項です。両者を採用することで、それぞれのメリットをとれるようにするという方法もあります。
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