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財務の視点から考える新型コロナ対策⑪

新型コロナの影響で売上が減少してしまうと納税資金も足りなくなります。特に消費税は担税者から税金を預かっている形になるので、本来はそれを資金繰りに使うのは良くないのですが、このような状況ではそんなことも言ってられないと思います。

しかし、納税に関しては淡々と支払いを行わなければならないわけではありません。事情があれば、その事情に応じて支払いを猶予してくれる制度があります。

換価の猶予

まずは換価の猶予について説明します。換価の猶予は次の要件のすべてに該当するときに1年間に限り支払いの猶予が認められます。
①国税を一時に納付することにより、事業の継続又は生活の維持を困難にするおそれがあると認められること
②納税について誠実な意思を有すると認められること
③猶予を受けようとする国税以外の国税の滞納がないこと
④納付すべき国税の納期限から6か月以内に申請書が提出されていること。

担保の提供は、明らかに可能な場合を除き不要とされています。

換価の猶予が認められると、1年間支払いが猶予されるとともに延滞税の金額も軽減されます。また、財産の差し押さえが売却が猶予されます。

この制度は新型コロナウィルス感染症によるためだけのものではなく、要件に当てはまれば普段から使える制度ではあります。新型コロナの影響で売上が急減していれば①に該当し、これまでに国税の納付をしていないなどの事実がなければ、猶予を受けることが可能となります。

納税の猶予

新型コロナウィルスに限りませんが、次のような個別の事情がある場合には納税の猶予を受けることができます。

①災害により財産に相当な損失が生じた場合
新型コロナウイルス感染症の患者が発生した施設で消毒作業が行われたことにより、備品や棚卸資産を廃棄した場合

②本人又は家族が病気にかかった場合
納税者本人又は生計を同じにする家族が病気にかかった場合、国税を一時に納付できない額のうち、医療費や治療等に付随する費用

③事業を廃止し、又は休止した場合
納税者の方が営む事業について、やむを得ず休廃業をした場合、国税を一時に納付できない額のうち、休廃業に関して生じた損失や費用に相当する金額

④事業に著しい損失を受けた場合
納税者の方が営む事業について、利益の減少等により、著しい損失を受けた場合、国税を一時に納付できない額のうち、受けた損失額に相当する金額

このような事情がある場合には、支払いの猶予を1年間受けられるだけでなく延滞税の全部免除や一部免除が受けられます。また、財産の差し押さえが売却が猶予されます。

まずは顧問税理士や税務署に相談しましょう

換価の猶予も納税の猶予も、まずはきちんと税務署に相談することが重要です。顧問税理士がいる場合には、気軽に税理士の先生に聞いてみましょう。税金をすぐに納付できない理由がある場合には、それに対応した制度がしっかりと用意されているのです。

やってはいけないのは、税務署に黙ったまま納税をしないことです。その場合、換価の猶予や納税の猶予が受けられないことも起こりえますので注意してください。

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