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必達利益・売上高の設定方法

会社の数値目標はどのように設定しているでしょうか?売上高で目標設定することが多いですが、その目標を設定した理由は何でしょうか?きちんとして財務の裏付けがあるでしょうか?

今回は会社を継続するために必要な売上高の設定方法について解説します。この売上高と利益額は会社の存続に最低限必要な数字となりますので必達利益、必達売上高と呼ばれます。

目標売上高の設定に必要な要素

目標売上高の設定をするには、次の数字を準備します。
・変動費率
・固定費額
・減価償却費
・法定実効税率
・借入金の返済額

変動費率とは、変動費の金額を売上高で割ったものです。変動費とは、売上高に比例して発生する経費で、売上が0になれば発生しなくなる経費のことです。例えば、商品の売上原価や外注費が該当します。

固定費とは、売上高に関係なく発生する経費です。例えば、人件費や地代家賃が該当します。なお、変動費と固定費は厳密には分類しにくいことや、両方の性質を持つ経費もあります。まずは、売上高が0になったら不要になる経費が何かを洗い出して変動費を決め、残りは固定費とするのが簡単だと思います。

減価償却費とは有形固定資産の価値の減少を費用に計上したものです。有形固定資産は使用することで減耗し、価値が下がっていきます。その価値の下落を税法で定められた方法で計算します。なお、減価償却費は現金支出を伴わない費用なので、非現金支出と呼ばれます。

法定実効税率とは、会社の利益に課される法人税、住民税、事業税の合計税率のことです。中小企業では大体20%~30%になります。細かい計算方法は別の機会に紹介するとして、通常は30%としておけば良いです。

最後の借入金の返済額は、銀行等への元本返済額です。元本返済額は費用ではありませんが、会社を継続するうえでは支払わなければならないお金なので、必達利益や必達売上高を計算するためには把握しておく必要があります。

まずは必達利益を算定する

必達売上高を決めるためには、まず、必達利益を決める必要があります。そのために必要なものは、減価償却費と借入の返済額の2つだけです。

必達利益=借入の返済額-減価償却費

この式の意味を説明します。借入金の返済は利益で行います。したがって、基本的には返済額と同額の利益が必要です。しかし、利益の中には減価償却費のように現金支出を伴わないものが含まれています。この分は費用であるとはいえ、手元にお金が残っているので、必達利益の算定においては控除して構いません。

必達利益から必達売上高を計算する

必達利益が決まればそれを売上高に換算します。計算式は次のとおりです。

必達売上高={必達利益÷(1-法定実効税率)+固定費}÷(1-変動費率)

まずは、必達利益÷(1-法定実効税率)の部分です。これは、利益の金額を税引前の金額に引き戻しています。

次に税引前利益に固定費を出すことで、毎期出し続けなければいけない粗利益額を算定します。

最後はこの粗利益額を稼ぐために必要な売上高を計算します。これは、粗利益額を「1-変動費率」で割り戻して算定できます。なぜかというと、「1-変動費率」とは粗利益率のことで、売上高×粗利益率=粗利益額なので、その逆の計算をしているわけです。

売上高が必達売上高に達しないと…

必達売上高を算定してみたら、売上高実績の方が低かった、そんなケースもあると思います。この場合には、早急な対応が必要です。そのままでは、利益から返済を行うことができないため、預金を取り崩すことになります。預金があれば良いのですが、もしなかったとしたら…返済が約束どおりにできなくなってしまい、最悪の場合は倒産になってしまいます。

終わりに

会社経営をするうえで非常に大切な必達利益、必達売上高ですが、これを認識している経営者の方は多くありません。それでも売上高が順調なときには何も起きないので、潜在的に問題を抱えていることに気がついていないだけなのです。

ぜひ、一度必達売上高を計算してみて、自社の実際売上高と比較してみてください。

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