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銀行融資の返済原資

銀行から証書貸付で融資を受けている場合、毎月の返済が必要になります。では、この返済のためのお金はどこから出てくるのでしょうか?

今回は、融資の返済のための原資の計算方法を説明しながら、返済に困らないためにはどうしたら良いかを解説します。

返済原資は税引後利益と減価償却費

早速ですが、返済原資は次のように計算します。

返済原資=税引後利益+減価償却費

税引後利益とは当期純利益のことです。年次決算であれば、税金計算ができているので、正確な税引後利益がわかりますが、月次決算においてはそうはいきません。この場合には、年次決算での税率を予測して、月々の税引前利益に当該税率を乗じて税金額を算出し、税引後利益を計算することになります。

返済原資=税引前利益×(1-予測税率)+減価償却費

なお、年次決算の税率は中小企業なら20%~30%です。保守的に見るなら30%を用いても良いですし、前期の実績(法人税等の額÷税引前当期純利益で算出)を用いても良いです。

もう一つの減価償却費ですが、これは有形固定資産(設備投資等)の価値の減少分を経費として計上したものです。有形固定資産は使っていくうちに徐々に傷んできますので、価値が下がっていきます。そして、その減少分は経費として計上することが認められているのです。ただし、価値が下がったからといってお金の支払いを求められることはありませんよね。だから、減価償却費は経費ですが、お金の支払いはありません。このため、返済原資を計算するときには、税引後利益に加算することになります。

減価償却費は、損益計算書の販売費及び一般管理費明細の項目を見ればわかります。製造業など製造原価報告書がある業種では、製造原価報告書の中にも減価償却費の項目がありますので、そちらの数字を探して合算したものを使います。

返済原資が返済額を上回っていれば財務は健全

では、実際に月次決算書(月次試算表)を用いて、返済原資を計算してみましょう。そして、その額を毎月の返済額と比較してみてください。

返済原資の額が毎月の返済額より多いのであれば、一安心です。融資を返済できるだけの利益は稼げているということになりますので、基本的には資金繰りに困ることはありません。

反対に返済原資の額が返済額より少ない場合には要注意です。それが、たまたま一月だけのことであれば良いのですが、毎月継続してくるとお金がどんどんなくなっている状態です。この場合には、何か手を打たないと資金繰りが行き詰まります。

融資を返済できる利益額

上記の返済原資の計算式を踏まえ、融資が返済できるかどうかは次のように考えていきます。

まず、融資の返済は減価償却費で行われます。費用で返済するというのは変な感じですが、減価償却費は支出を伴わない費用なので、返済に使用できるのです。減価償却費が毎月の返済額を上回っているなら、税金後利益は0であっても返済には困りません。

減価償却費が毎月の返済額を上回っているかどうかは、「設備資金の借入年数」が「設備の耐用年数」よりも長いかどうかで決まります。つまり、毎月の利益や売上は関係なく、借入条件だけで決まるのです。したがって、設備資金を借りるときには金利以上に借入年数に注意しなければなりません。もし、短い借入年数ならば、銀行に交渉してもっと長期の融資に借換ができないか相談してみましょう

残念ながら、減価消却費よりも毎月の返済額の方が多い場合には、その差額分を利益で埋め合わせなければなりません。さらに悪いことに、この時の利益とは税引「後」利益です。つまり、法人税を差し引かれた後の利益で融資の返済を行わなければならず、負担が大きくなります。大体ですが、返済額の1.4倍の税引前利益が必要です。このことからも、設備資金の借入年数は設備の耐用年数よりも長くすることがどれだけ重要なのかわかると思います。

終わりに

減価償却費で融資を返済できるかどうか、これが設備資金を借りた場合には非常に重要になります。それにも関わらず、この点についてきちんと説明してくれる融資担当者や税理士は少ないです。

しかし、仮に耐用年数よりも短い期間で借りてしまった場合でも諦める必要はありません。銀行に数字を使って説明し、より長期の融資に借り換えができないか相談してみましょう。

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