「生きる意味」をくれた人 その4
家出して、自由奔放な生活をしていた僕は、秋から冬にかけて、「ファンタプレミアムシリーズ」にはまってしまいました。
元はと言えば、セブンイレブンのキャンペーンで、無料クーポンをもらったこと。飲んだらすごくおいしくて、病みつきになってしまった。
それまでは、水道水を、BRITAの浄水ポットに入れて飲んでいたけど、いつの間にか、「プレミアム」をがぶ飲みするように・・・。
そうしたら、身体に異変が起き始めた。
部屋の中で転ぶ。
テレビに頭たら突っ込んで真っ二つに割ったり、障子を破壊したり、明らかにおかしいなとは思いました。
あとは頭が痛い。
市販の頭痛薬を飲みまくり。
主治医からはロキソニン錠を処方してもらった。
それに、痙攣を頻繁に起こし、夜眠れない日が続く。
とうとうある日。
意識を失いました。(自分ではわからなかったけど)
僕は日ごろから、救急搬送、延命治療は拒否していたんだけど、たまたま実家にいたので(家出して、結局一番コストが安いのは実家だったし、2階が丸ごと空いていたから)看護婦だった母に、気づかれてしまい、救急車を呼ばれてしまった。
必死に「入院拒否」を伝えたんだけど・・・。
意識を取り戻したときは、病院のベッドの上だった。
よくドラマであるでしょ?
「私は誰?ここはどこ?」
まったくその状態。
仕事人生の後半は、全国を駆け回っていたから、朝起きると毎日天井の景色が違って「ここはどこだろう?」って思った。
そんな感じ。
いや、自分が何者かもわからない恐怖。
でも不思議なもので、母親だけはすぐに分かったんだなあ。
付き添ってくれていた母から、およその経緯を聞き、「放置しておいてくれても良かったのに」と言ったのは覚えている。
あの時が、本来の寿命であれば、それでいいと思った。
無駄に長生きはしたくなかったし。
主治医からも説明を聞いたが、いかにもダメそうな医者で(後でわかったのだが、僕は多くの医療法人のコンサルタントをしていた経験があり、医者のレベルは話せばわかるのだった)、その上、その病院の看護師の質は最悪だった。
むしろ主治医と看護師のせいで死にたくなったくらいだから。
意識が戻ってから、「退院させろ!」と言い続けた。
とにかく地獄のような入院生活だったから。
その上、幻覚に襲われた。
そう、僕は脳卒中、脳内出血と、脳梗塞を併発して意識を失ったんだ。
左側の視覚を失い、IADL(スマホの操作、PCの操作、テレビの操作など)もわからない状態で、サポート中のクライアントのことを思い出したのだが、電話が掛けられなくて、毎日焦燥感に苛まれた。
そこに幻覚が襲ってくる。
スキンヘッドで、大男が部屋に無断で入ってきて、僕に襲い掛かってきたり、男女二人の窃盗団が病室に忍び込んできたり、個室なのに毎日夕方になるとホームレスが寝るために僕の病室に入って来たり・・・。
相当暴れたらしい。
主治医が「怖くて、近づけなかった」と言っていた。
暴れたのは覚えていないけど、子供の頃から、やられたら3倍やり返すくらい勝気だったことは確か。でも大人になってからは穏やかな方だと思っていた。
記憶を失って、本能が呼び覚まされたのか。
幻覚って、本当にリアルなんだよ。
本人にとっては。
ある幻覚が現れるまでは、「幻覚」だと認識できなかった。
<続く>