田舎で「非農家」のつらさ
田舎に生まれ育ったのに、非農家のつらさってわかるだろうか?
田植えも稲刈りもしたことがない。
そりゃそうだ。
田んぼがなかったから。
ほかの幼馴染の家には全部あるのに我が家だけない。
あったのは父と母が開拓したであろう猫の額ほどの畑くらい。
それも、家からは離れてた。
幼馴染たちは、自分の家の庭で自転車の練習ができる。
僕だけ、公道で練習する。
仕方ない。庭が狭いから。
父は、甲府生まれの東京育ち。
戦時中の空襲で焼きだされ、祖父の長兄を頼って、一家で疎開してきた。
父が中学に入学したばかりの頃だそうだ。
父が生まれた時、祖父は甲府の駅のそばで薬局を経営していた。
小さい頃写真を見た記憶がある。
父と母は、まだ父が元気だったこと、一緒に現地を見に行ったら、まだ建物が残っていたそうだ。
だから、祖父の代から非農家なんだな。
僕が物心ついた時に住んでいた家は、祖父が祖父の兄から分けてもらった土地に建てた小屋を、父が家らしく建て替えたものらしい。
幼馴染の家の大きさに比べ随分「都会的なサイズ」の家だった(笑)。
まして、集団墓地を見下ろしていて、葬式行列を見学できるという絶好のロケーション。
トイレ(昔は「便所」?)へ行く廊下から、墓地は丸見えで、葬式行列を見た夜は、怖くて朝までトイレを我慢したっけ。(田舎の葬式行列は派手だったし、当時は土葬だったから)
祖父が農家だったら、父は家を建てる土地を選べたんだろうし、僕も自分の家の庭で自転車の練習ができたんだろうなあ。
<続く>