このことに気づかなかったことが 日本人が英語の発音を苦手にしなければならない 最大の原因だったのです(続編)
前回の記事では、日本人が英語の発音を苦手にしている原因を明確に記述しました。この続編では、最も手っ取り早く、最も正確に、そして まとめて英語 (特にアメリカ英語) の発音を身につける方法をお伝えしていきます。
どうしてアメリカ英語(General American)(略GA)の発音を、容易に、正確に、そして まとめて身につけることができるのかを、順を追って記述していきます。
イギリス英語(略QE)とアメリカ英語(general American)(略GA)では、音声の周波数が違うし 声の質も違っています。それに 音声が変化する度合いも かなり違っています。
どうして違うのでしょうか? それは、QEとGAでは 舌の形状が大きく違っているからです。この形状の違いは、発音時の舌の形を側面から表している「発音図」を見ただけでは分かりません。
実は、QEの場合の発声時の基準となる舌の位置(=定位置)は、舌全体が盛り上がり、舌の左右の両端は上の左右の奥歯に触れています。
一方のGAの場合の発声時の基準となる舌の位置は、舌の左右の両端がQEの場合と同じように左右の上の奥歯に触れているものの、舌の中央部分が谷のように低くなっているのです。
つまり、舌を顔の正面から見た場合 中央の部分が谷のように低くなっているのです。これは、強い力で舌を奥に引き込むようにしているために、舌の幹の部分に力が加わり、その部分(舌の中央)が奥に引っ張られて低くなっているからです。※YouTube『アメリカ英語の音声的特徴①』(参照)
この、ゆるやかなⅤ字型の舌の形状 (GA発声時の舌の「定位置」) が起因となって GAの発音は いろいろな身体的・音声的特徴が現れることになります。
では、英語の発音を苦手にしている私たち日本人が、GAを話す人たちと同じように舌を喉の奥に引き込むようにしておいて発声すれば、私たちの英語の発音に変化はあるのでしょうか。
日本語を発声するときと GAを発声する時を明確に区別するために、GAを発声するときには、舌を思いっきり後ろに引くようにしてみました.....
舌を思いっきり後ろに引くことで、自動的に日本語の調音位置がGAの調音 位置に移動します。さらに、口蓋垂(いわゆるノドチンコ)が、自然に垂れ 下がった状態になります。
舌を思いっきり後ろに引くことで、日本語を発声するときに比べ、①下あご(下の前歯)が前に出る、②自動的に腹筋に力が加わる。③首が引き締まったようになる。④耳の前の内部にあるアゴの関節が膨らむ(両手の指を耳の前に当てておいて関節の動きを確認) 等の身体的特徴が現れました。
次に、音声を発してみると.....
日本語を発声するときに比べ、①音声周波数が高くなる(破裂音や摩擦音等の息が強くなる)。②音声の響きがよくなり 声の質が変わる。③音声が鼻音化する。④日本語の「ツ」の発音ができなくなる (「松井」が「マツイ」ではなく「マチュイ」のようになる)。⑤try や train の t の発音が「チュ」のように聞こえる。⑥party や water の t の発音が 有声音になる といった特徴が現れました。
さらに、舌を思いっきり後ろに引いたままで 「ラ」「リ」「ル」「レ」「ロ」を発音してみると、それが自然に[ra][ri][ru][re][ro]のように[r]の発音になります。これまでのように、舌先をどこにも触れさせずにとか、発音の前に小さな「ウ」を入れるといったようなことは、一切 意識する必要が無いのです。単に舌を強く奥に引き込むようにしておいて、「ラ行」を言うだけで、舌先はどこにも触れることができなくなり、日本語の「ラ行」は自然に、そして 完璧にGAの[r]の発音になるという訳です。
同じように舌を奥に引き込むようにした状態のままで、今度は舌先を上の歯茎に付けておいて「ラ」「リ」「ル」「レ」「ロ」と言ってみる。これが明るいLです。明るい Ⅼ の後には母音が続きます。母音を発音するときには、当然、舌先は歯茎から離れます。
同じように舌先を上の歯茎に付けておいて「ウ」の発音の構えをすれば、舌先が歯茎に付いたままで 自然に舌の後部が盛り上がります。これで「ウ」と発音すれば 暗いLになるのです。この場合、日本語の「ル」にしないために、舌先は歯茎に付けたままにしておきます。
暗い Ⅼ の後には t, d や p, b あるいは k が続いたり、暗いLがそのまま語尾になったりします。
語尾の Ⅼ を発音するときは、L の発音が終わるまで、または次の子音の発音に移動するまでは、舌先は歯茎に付けたままにしておきます。なお、語尾の Lの後に母音で始まる語が続いている場合は、語尾のLは、次の語の母音と連結させて発音するため、明るいLになります。
※日本語のラ行は、舌先をべったりという感じで歯茎に当てておいて 出す音ですが、舌を喉の奥に引き込むような感じにしている状態では、舌先をべったりと歯茎に付けにくくなります。従って、L と日本語の「ラ行」の発音は 必ずしも同じではないということが分かります。
「ハ行」の発音についても、日本語では 「ハ行」の調音位置は「ハヘホ」と「ヒ」、それに「フ」の三か所に分かれています。「ハヘホ」の調音位置は GAと同じで咽頭にあります。「ヒ」は 舌の中央部分を盛り上げておいて発音するために口蓋(上あご)に、そして 「フ」は 唇をやや尖らせておいて発音するために上下の唇が調音位置になっています。これが、GAの発声の構え(舌を喉の奥に引き込むような感じ)にすることで、「ヒ」も「フ」も自動的に「ハヘホ」の調音位置に移動します。また、日本語の「フ」を発音するときは やや唇を丸めるようにしていましたが、GAの[hu]は、必ずしも唇を丸める必要はありません。
舌を思いっきり口腔の奥に引く、あるいは喉の奥に舌を引き込むような感じにすることで、英語の発音を苦手にしている私たち日本人であっても、ほぼ確実に アメリカ英語(GA)の発音を短時間で身に付けることができます。
英語学習者が、この発音の仕方に馴染むにつれ 舌の状態や形状を意識しなくても、自然にできるようになります。それに伴って、下あご(下の前歯)を突き出さなくても、ごく自然にGAの発音ができるようになってきます。
以上の結果から、私たち日本人も 発声時に舌を後部に引く、あるいは舌を喉の奥に引き込むような感じにすることで、当然のことながら、舌の形状はGAを話す人たちと同じ状態になります。
つまり、舌の位置が低い状態(舌と上あごの間が広い状態)で発声していたときの日本語の調音位置が、自動的にGAの調音位置に移動するということです。
従って、英語の音声と かけ離れている日本語を話している日本人であっても、舌をGAを話す人たちと同じ状態、同じ形状にすることで、間違いなく、容易に、正確に、そして まとめてGAの発音を身につけることができるようになるという訳です。
このことから推論すれば、発声時の舌の状態や形状を合わせることで、世界の地域によって違っている英語の発音を統一することも不可能ではないということになるのではないでしょうか。。
尚、日本語に無い f や th 等の発音は、別途身につける必要があります。
以上です。