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ブラジルNubankのForm F-1(目論見書)より

今日は南米最大のFintechであり、世界でもデジタルバンク界隈の先端を走るNubankの米国IPOについて書いてみます。

なぜNubankのIPOが注目を集めているか?

報道によれば、Nubankは2021年10月末に米国でIPO申請しました。(SECへのForm F-1提出日は11月1日。)

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上場のサイズはなんと500億ドル(5兆円)規模。これは日本の金融機関でいえばみずほフィナンシャルグループ(約4兆円)より大きく、三井住友フィナンシャルグループと同じくらい。Fintechスタートアップにいる身としてはとても夢があります。

何をしている会社か?

いわゆるデジタルバンクとかチャレンジャーバンクとか言われたりしますが、スマホオンリーでカード決済・銀行・証券・保険などの金融サービスをワンストップで便利にシームレスに提供するFintechです。

全国に支店網をめぐらし巨大な勘定系システムを運用する旧来型の銀行とは異なり、スマホでのサービスを前提に、ゼロベースで金融サービスを再構築することで、低コストで最高の顧客体験を創出することにフォーカスしています。

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NubankのNuは、裸、ヌード、という意味のようです。複雑な手数料体系を設定して様々な形で消費者からフィーを抜き取る旧来型の金融サービスに対して、シンプルでわかりやすいサービスを、というようなことでしょうか。

株主構成も超一流です。あのウォーレンバフェットのBerkshire Hathawayはじめ、Sequoia、Tencent、GICなども投資しており、上場申請前の最後の資金調達(シリーズG)ではなんと時価総額3兆円(300億ドル)を超えていました。 

なぜ急成長しているのか?

2013年にブラジルで創業後、まずはスマホベースで年会費無料のクレジットカードを発行しました。これはすなわち手数料無料で後払いの買い物ができるということなので、Affirm, Afterpay, PaidyなどのBNPLが後払い手数料を店舗負担にして急速に伸びた背景と似たものがある気がします。

タイミング的にもちょうどブラジルでスマホが普及しだす時期ということだったのでしょう。

ブラジルではいわゆる「Unbanked」(アンバンクト)と呼ばれる、銀行口座を持てない低所得層が数千万人規模でいると言われており、時機を得たサービスでこれらの顧客ニーズを急速に取り込んでいきました。

さらに急成長の背景には、政府もデジタルバンクの成長を後押ししているという点があったようです。人々がスマホベースのデジタルウォレットを持つことで、個人レベルでのお金の動きがすべてデジタルに記録されるようになるので、税金収入を高めたい政府にとってもデジタルバンクは歓迎すべきトレンドでした。

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Nubankは2019年には個人向け融資を開始。それ以降は、生命保険、証券投資など、様々な金融サービスを拡充してきています。

地域的にもブラジルだけでなく、メキシコ、コロンビアでも事業展開しているようです。

Form F-1(目論見書)より

2021年11月1日付で、米国SECがNubank上場に関するForm F-1(目論見書)を開示しています。世界のデジタルバンク界隈を見わたすとユニコーンが各国に存在しFintechの一大ムーブメントとなっているものの、みな非上場なので情報開示があまり進んできませんでした。Nubankの開示書類からは多くのことが学べます!

今回は、注目すべき数字をいくつか拾ってみます。

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・ユーザー数:48百万人
なんとブラジルの15歳以上人口の28%。ユーザー数はメキシコやコロンビアも含む。足下は月間2百万人ずつユーザー数が成長するペース。直近3年間のCAGRは110%。

・ユーザー1人あたりの月間売上高:4.9ドル
消費者向けFintechのマネタイズは世界的に共通の課題。NubankもIPO申請時点でまだ赤字。2021年1-9月で99百万ドルの赤字。(2020年は通年で172百万ドルの赤字。)カード年会費無料、決済手数料収入も厚くないので、これだけのユーザー規模を抱えてもまだ赤字。今後は決済だけでなく様々な金融サービスのクロスセルと、B2B事業(SME向け)でマネタイズしていく。
ただし、ユーザーの特徴として利用期間(ライフタイム)が長いユーザーほど売上も上がっていく傾向がある。Cohort別にLTM Revenueと比べると、2017 Cohortが6.3x、2018 Cohortが5.5x、2019 Cohortが5.5x、2020 Cohortが4.2x。

・ユーザー1人あたりの月間固定費:1.3ドル
英語でMonthly average revenue per active customer。旧来型の大手金融機関が全国に張り巡らす無数の支店網とレガシーな中核システム、そしてそれを支える膨大な人件費という重たいコスト構造でオペレーションをしているのに比べ、デジタルバンクはスマホベースで便利なサービスを低コストで提供できているという指標。ブラジルの大手金融機関の15.7ドルに対して1/10以下のコストでオペレーションをしている。これは日本も共通の課題。

・ユーザー獲得コスト:5.0ドル
そもそもオーガニックのユーザー獲得が80-90%というのが驚異だが、CACも5.0ドルというのはすごい。CAC回収期間は12ヶ月以下とのことなので、ユーザー1人あたりの月間マージンは40セントくらいか?
LTV/CACが30x以上との記載もあり、LTVが150ドル(5ドル x 30)とすると、先ほどのマージン40セントで割るとライフタイムは10年くらいの見立てをしている?

日本における消費者むけFintechの動向

メルカリによるOrigami買収、Googleによるpring買収、PayPalによるPaidy買収など、決済系Fintechを取り巻く大きなニュースが続いています。投資領域のFintechまで視野を広げると、2020年12月のウェルスナビIPOや、SBIによるFOLIO買収などもありました。

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KyashはまさにNubankのように、送金・決済を中心とするデジタルウォレットとしての立ち位置に加えて、2021年7月にBNPLをリリースするなど、スマホベースの消費者向けデジタルバンキングとしての成長を目指しています。今回のForm F-1でもNubankとの共通点はたくさん見つかりました。

「Cost to serve」の観点は日本のメガバンク vs ネット銀行 vs Kyashで比べてもやはり同様の構図がありますし、むしろNubankと比べてKyashのほうが優位な点もたくさん発見できたのは大きな学びでした。

今後のKyashにご期待ください!!

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