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ココナラ

ライオンは失望していた。
この世界でライオンは全く王になれていないことに。

こと俺に至っては、人間の鑑賞物と化している。
透明なケースがかぶせられた人工的な自然の中で、俺は人間に見降ろされている。

神は言ったはずだ。
あなたたちライオンは百獣の王なのだと。

大嘘ではないか。
この透明なケースから出してくれれば、人間など噛みちぎってしまうのに。
しかしそれでは本当の王ではない。すべての生き物が俺を尊敬のまなざしで見上げてくれなければ。

だが、そんなことをいくら思ったところで、どうすることもできない。
この怠惰で屈辱的な世界で生きていく他ない。

そんなある日、いつものように人間たちを見つめていると、変な人間がこっちを見ていた。
どこかその人間は周りに比べて空気が薄かった。
透明ではないが、どこか半分だけ色が抜け落ちているような感覚に襲われる。
キャップを深くかぶっていたせいで、顔まではわからない。
だが、こっちを見ていることだけは感じ取れた。
空気が薄い人間に強く見つめられることは、とても異様な気分だった。

その人間が突然何かをこちらに投げた。
赤く丸いものだった。きっとヘタがとれたリンゴだろう。
そのリンゴは透明なケースにぶつかることなく、ライオンの足元に落ちた。

おいおい、なんだあいつは。
普通は人間が餌をやれないように、透明なケースにぶつかるはずだろ。
あいつが投げたリンゴは、そのケースを透過しやがった。

そいつはずっと俺を見ていた。
そいつに促されるようにリンゴを食べる。
それはリンゴではない。食べたことのない変わった味がした。
そして少し眠気を感じる。俺は目をつぶった。

気づくと俺は空の上にいた。
広大な地球を上から眺めていた。
ここはどこだ?ついに死んじまったか?

「おい、新入り!起きたか?」

呼ばれた方に顔を向ける。
そこには光輝く星がいた。
どこからどう見ても星だった。

「おいおい、そんなびびった顔するなよ。
 お前も星になったんだよ。新しくできた星だ」

俺が星になった?
俺は死んで星になったのか?

「死んだら星になんねえよ。ただの骨になっちまうよ。お前が祈ったんだろ。星のようになりたいって。だから神様が星にしてくれたんだよ」

星になりたいなんて祈っていないぞ。

「すべての生き物が尊敬のまなざしで見上げてほしいんだろ?見ろよ。人間たちがお前のこと食い入るように見てるぞ。新しい星だもんだ。
 あっちではお前に向かって祈りをささげてる奴らまでいるぞ。お前は今、人間たちに尊敬のまなざしで見られてるんだよ」

その言葉を聞いて、俺は変に納得した。
ライオンの生き方に失望していたんだ。
星として、懸命に生きてやるだけさ。

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