AIの可能性と人間の代替としての限界

僕のお客のトップが何かにつけて流行り言葉を口にする。かなり穿った味方だが、60代後半の経営者が、Web3、ブロックチェーン、AIなどなど流行り言葉を並べると、スピーチで受けがいいのか、やたらとそういったパワーワードを並べて、業務に適用するよう求めてくることには、正直色々な感情がぐちゃぐちゃになる。ただ、だからと言って、言われたことを無視し続けるのもストラテジストの端くれとしてはよろしくないので色々調査し、考えてみる。そしてひとまずAIに関してどのようなことを考えているのかここにまとめることにする。

AIといっても、、、

AIといっても時代と共にその対象が変化しつつある。細かい歴史は総務省のホームページに載っているのでここでは割愛する。

上記ホームページの中から図を抜粋してみた。

(出典)総務省「ICTの進化が雇用と働き方に及ぼす影響に関する調査研究」(平成28年)

現在AIといえば、機械学習である。今流行りのStable Diffusionも機械学習の一つのモデルである。Stable Diffusionを知らない人は是非下記のリンクからその凄さを試してほしい。

ここでたとえば、「a lady walking with a toy poodle in a castle」と入寮しようなら、それっぽい画像を機械学習のモデルから画像を組み合わせて下記のように合成するのである。

合成結果

これは本当に恐ろしい話で、これだけふわっとした自然言語からこれだけそれっぽい画像を合成されてしまうのであれば、もう並の絵師さんや写真家は必要なくなってしまう。同様に音楽なんかもBGM程度のものは作れてしまうのである。

シンギュラリティは本当にくるのか?

そもそもシンギュラリティという言葉を知らない人は適当にググるか、僕が適当にググって見つけた下記のリンクの内容を読んでいただきたい。

つまりいつか、AIが人間を追い越す技術的特異点が現れ、その後の社会は今とは全く違うものになるとのことである。そのAIによるシンギュラリティは本当にくるのだろうか?一説によればそれは45年であったり、40年であったり。技術の発達は目まぐるしいものであり、幾度となくブレイクスルーが繰り返されている。その事実を目の当たりにしていると確かにそんな時代が来るのかなと思ってしまう。それでも僕はそんな夢見たいな世界はこないんじゃない?と確信している。

技術以外の側面ではどうだろうか?

責任問題の観点では?

先ほどのStable Diffusionであれば、あの絵で満足は人はそれを使えばいいだろうし、気に食わないところはパラメーターを追加することで調整することもできる。文章を入力してからアウトプットまで数秒なので、何度も挑戦して時間の許す限り納得するものを出すのもいいだろう。
ただし、車の運転、システムの構築、電車などの運行など、高度にシステム化されて頻言を補助するものがたくさん世に出回っていたとしても、これからももっと洗練されようとも、最終的には誰かが責任を取らない場面は多々残されている。仮にAIが下した決定や行動のために身内に不幸が起きた場合、AIが決めたことだからしょうがないよね!って人間は開き直れるのだろうか?AIがいつかSky Netとなって人類に対して戦争を仕掛けてきたとしても仕方ないよね?と言えるだろうか?そこまで人間はAIを神様として崇められないと思う。なぜならAIは神様ではなく人間が作ったものだからだ。

エネルギーの観点では?

機械学習は通常のプログラムよりも大量のエネルギーを消費する。

上記のページからの抜粋になるが、

高度なAIには、大量の電力がいる
このプロジェクトのために約2.8GWhの電力が消費された可能性があると、AIプロジェクト管理用のソフトウェアを提供するDetermined AIの最高経営責任者(CEO)エヴァン・スパークスは指摘する。約2.8GWhといえば、原発3基が1時間に出力する電力とほとんど同じだ。

OpenAIの広報担当者は計算結果に疑問を呈したうえで、計算にいくつかの仮定が含まれていると指摘している。一方でOpenAIは、プロジェクトの詳細の公表や、消費電力の概算の提供を拒否している。

https://wired.jp/2020/03/07/ai-great-things-burn-planet/

とのことだ。前述のシンギュラリティの話の中では、プレシンギュラリティなるものが2030年に発生し、エネルギー問題が解消される(!?)とすら主張する者もいる。しかし現実はどうであろうか?2023年になり、ロシアとウクライナの戦争が続く中、果たしてエネルギー問題は2030年までに解消するのであろうか?石油はいつ枯渇されるのか一向にわからないが、原子力発電の燃料となるウランは京都大学の研究( http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/NSRG/kouen/dent-02.pdf )でもあと100年で枯渇すると言われている。こんな状況下で本当にコスパの悪いAIをガンガン続けていくなど考えにくいのである。

まとめ

AIの進化は目覚ましい。Stable DIffusionのようなただただすごいとなる技術、実装もあるが、それ以前に普段からお世話になっている車のセミオートパイロットやAlexaの音声応答など、まだ世の中にはパソコンという言葉もなく、マイコンというなで世に出回り、BASICやCでプログラムを書いていた初老の僕には信じられないようなことが起きている。この先目的を絞った上で人間を超えてくるAI技術はたくさん出てくるであろう。
それでも人間が働かなくてもいい世界など来ないだろう。それは誰かが責任を取らないといけない場面が世の中には多々あり、またエネルギーの観点ではそれほどAIはコスパがいいわけではなく、またエネルギー問題も解消される見込みがないからだ。たとえ核融合による原子力発電(現在の原子力発電は核反応によるもの)が実用化されたとしても、それはその時でもっとガンガン電力を使う人が出てきてイタチごっこになるだけだろう。そういった限界、特に前者の責任の壁がある限り、シンギュラリティは起こらないだろう。
ただし、産業革命が起きた時に職人さんの仕事が壊滅状態になった時のように、電力が電線を通じて供給されるようになったら、油屋さんが廃業になったように、確かに大体の利きやすい仕事はなくなっていくのは紛れもない事実だと思う。



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