ユーザーが抱く違和感を『目標数値の達成』という言葉で飲み込む必要はないと気づいた話
InHouseDesigners Advent Calendar 2018に参加しています。
一応最初にお断りしておきますが、これは事業の目標数値自体をを否定する記事ではありません。会社として設定された『達成すべき数値』に対しての施策を、そのまま『数値の実現』としてがむしゃらに取り組まないといけないと思っていた私の考え方が、数年前に変わったきっかけのお話です。
『課金ユーザーさんを増やす』というミッション
数年前ですが、『課金ユーザーさんを増やすこと』を大きな目標のひとつとして掲げていた事業にデザイナーとしてコミットしていたことがありました。
結果としてどうだったかはここでは書きませんが、今思うと作り手(少なくとも私)が『課金してくれたユーザーさんは何を求めているか』をそこまで深く考えることなく、ただ『課金ユーザーさんを増やすこと』そのものを目的として取り組んでしまった反省と、考えが変わるきっかけになった話を書いてみたいと思います。
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数値目標が事業として同然あるものの、会社として『その先に作りたい世界』がもちろんあり周知もされていたはずなのですが、分かりやすくインパクトがあるのが『数値』だったため、数字をベースに物事を考えてしまったのがそもそも良くなかったなと、振り返ってみると感じます。
さなかのABテストでボタンの色を強い色に変えたところ、課金ユーザーさんが飛躍的に増えた、という実数値と初めて対面したことも、思考停止してしまったきっかけだったのかもしれません。
それまで『トンマナ』とか『デザインガイドライン』として守り続けてきたものが、事業数値と結びついていないことがわかり単純に混乱してしまいました。
デザイナーとして自分が守るべきものが分からなくなってしまい、課金登録のためのバナーや導線、機能など、当時はそれなりに一生懸命考えたはずですが、今思うと時にはユーザーさんにとって邪魔だと思われてしまうような改修をしてしまったこともあるように思います(もちろんすぐに戻したり変えたりということもありました)。
課金ユーザーさんを増やすのとサイトの使いやすさ、どっちを優先する?
そんな中、事業長みずから社内に向けて、『今後目指したいサービス像』をシェアしてくれる機会がありました。
事業としての目標数値はもちろん、サービス全体をもっともっと使いやすくして、すべてのユーザーを幸せるにするという価値観などもあらためて話され、参加者それぞれが『今取り組んでいることのその先にある未来』を想像できる良い機会でした。
ただ、今やっている課金ユーザーさんを増やす施策がユーザーさんを幸せにしているのか自信がなかった私は、
課金ユーザーさんを増やす施策をこのままやり続けることは、目指す世界の実現に足かせにならないか?
と感じました。
そしてそこから純粋に、
課金ユーザーさんを増やすのと、サービスの使いやすさ、どっちを優先するべきか?
という疑問が浮かびました。
もちろん今なら「どっちも」と即答されると想像できるので、その質問はしないと思います。
お金を払う価値のある良いコンテンツや機能であれば、結果的にユーザーさんは満足してくれるだろうし、サービスの使いやすさを阻害するほどアピールしないと達成できないのであれば、おそらくそれは何かがどこかで間違っていて、根本的に見直すべきことがある、と推測できるからです。
時にユーザーさんは無料でないものに対して非常に敏感になることがあるとは言え、『事業として作るべき数字』と、『お金を出してでも買いたいコンテンツは何か、その魅力にどうやって気づいてもらうか』を丁寧に付き合わせて施策を打っていき、初めて成功するものではないかなと思います。
でもまだそんなことに気づけていなかったので、疑問をぶつけてみようしか迷っていたとき、一緒に話を聞いていた同僚がさっと手を上げて、まさしくこの質問をしてくれました。
回答はやはり、「課金ユーザーさんの獲得と使いやすさな対立していること自体がおかしい、あるべき形じゃないはず」といううようなニュアンスのものだったと思います。
またそれとは別の話で、サービス内に表示される広告の是非についてもディスカッションがあり、出てきた言葉のなかで、
クライアントもユーザーであることを忘れるべきではない
というものがありました。これは今でも良く思い出します。
クライアントもユーザーであることを忘れるべきではない
BtoBのサービスをやっている人からは『そんなの当たり前すぎる』と言われてしまいそうですが、BtoC、BtoBtoCの会社だと、これもまた『広告の売り上げを優先するか、ユーザービリティを優先するか』というような議論が発生することは想像してもらえるのではないかと思います。
多分これも同じ話で、『自分たちが邪魔だと思うような広告を販売していること自体、あるべき姿ではない』という話が出ていた記憶があります。
これも、売り上げの数字だけを見つめていたら、広告で何を解決したいのか?それでユーザーさんがどう幸せになるのか?にはなかなかたどり着けないのではないかと思います。
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私が当時BtoB領域を好んで担当していたのは、目的や数値がシンプルで分かりやすいからでした。
課金が前提のサービスを、『契約してもらえたか、継続してくれているか、それによって売り上げがいくらだったか』。
でもさらにその先にいる人に『どう届いているか』までは実はあまり考えていませんでした。
遠回りしてしまいましたが、事業として数字で測るものもあるけど、それを作っていくものって数値だけではないのかも、と気づき始めました。
それから、物事を考えるときに、それがこの3者にとってどんなものか、誰かを毀損することがないのか、バランスが取れない場合、それをちゃんと覚悟の上でやるのかを意識するようになりました。
to User / to Clientto / to Company
繰り返しになりますが、「ユーザーの気持ちを優先して、デザイナーは数字は無視して良い」という話ではなく、 「事業目標という数字に寄り添い、会社とユーザーのために何ができるか考えよう」ということがこの記事で伝えたかったことです。
「目標数値はこれです」と言われたら、「で?」と思わずチャンスと思って、「達成するには何が必要か、一緒に考えましょう」と言ってみてください!
ただこれを、具体的な数値目標を持っている人に一人で言い続けるのはなかなか気持ちが続かないこともあるかと思います。
具体的な取り組みはこちらの記事がとても参考になるはずなので、ぜひ見てみてください!
そして現在、『考えるデザイナーになる』ためのワークショップやゼミを、少人数制で小さく開催しています。
また今回はデザイナーコミュニティ、InHouseDesignersのアドベントカレンダーに参加させていただく記事のため、InHouseDesignersのテーマの一つである「悩みや体験の共有」を書いてみました。
これからもいろんなコミュニティ活動があると思うので、せひ参加してみてください!
最後に、今現在私が所属しているAnyPay社では、デザイナーをはじめ、エンジニア、PMなど募集中です。良かったら気軽に遊びに来てください!
文字ばっかりの記事になってしまいましたが、最後までお読みいただきありがとうございました!