Behind My Eyes
「目は口ほどにものを言う」
その言葉が引っかかってから、話し相手や他人の目の動きを見るようにした。
薄い液晶の向こうに映る少女は、精一杯に目尻を緩め、
楽しさと懸命さを投げかける。
紙面から微笑みかける水着のあの娘は
口角こそ上がれ、目は真剣そのもの。
撮影という強制力が働いているのか、仕事と割りきった
その意地が映しだされたのか。
それは彼女のみぞ知る領域だ。
甘い言葉をかけてくる輩は下心に目を歪ませ、
優位に立ちたい牝狐は訴えを涙に象る。
彩りと呼ぶには程遠い表現だが、心情を描くキャンパスとしては
これ以上に勝手のいいものは、ない。
だからこそ他人に踏み込まれるのを避け、瞼のシャッターを下ろす事もある。
不文律や無秩序を、自らの手で招くくらいなら、
安寧を手にするために目尻を下ろしたままにする。
笑顔が快楽物質を作る。そんな研究もあるくらいだ。
もはや「楽しいから笑う。」ではなく「笑うから楽しい。」
そんなもんだろうと腹をくくる。
常に笑っていられれば、それで荒天の下、晒されることもないだろう。
皮が白ければ全体像は白だ。
真実のさじ加減は常に自身が司る。
それならば、どんなことでも笑っていようじゃないか。
画一的な切り絵は、こうして内包に捻れを齎す。
眼の奥に存在する像は、同じ絵面しか写せないフィルタの中で変化する。