Promessa

確かに交わした。

契約書も、録音された音声も無いけど。

君と密かに契った。

覚えているかどうかは知らないけど。

意識しているのは私だけかもしれないけど。

あの時確かに、君はそう言った。

私の心が勝手に補正をかけているかもしれないけれど。

私が君に抱いた気持ちを蘇らせる道具にしているだけかもしれないけど。

私が君と生きたという事を忘れたくないが故に、それを拠り所にしているだけかもしれないけど。

それでもそいつはふとした時に私を奮い立たせ、

傷のひび割れを埋めてくれた。

他人の見えない所で明日を強く生きるという思いを奮い立たせてくれた。

「待てば海路の日和あり」という言葉が本当だということを教えてくれた。

この気持ちが、かつて生きる力になっていた物が嘘じゃなかったんだとも気づかせてくれた。

凍てついた大地の下でも、底の見えない沼の中でも、

落ちれば二度と戻ってこられないであろう滝壺でも、

一握の灰としてこの身が昇華されてしまいそうな時も、

朽ち果てて土に還る為の命ではないと必死に抗い続ける最中で

追い風を探し、待ち続ける一コマにしか過ぎない。

悠久の旅路に響く、君との約束。

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