デジタルの闇 第三章 Ⅱ
第三章: 「失われた影」
第2回: 「謎のメッセージ」
夏美は静かに教室の中へ足を踏み入れた。薄暗くて荒れ果てた室内は、まるで時間が止まってしまったかのような静寂に包まれていた。倒れた机や椅子が散乱し、壁にはひびが走っていた。しかし、夏美の目を引いたのは、教室の奥にある黒板だった。
黒板には、かすれた文字が残されていた。近づいてみると、その文字は不規則で、まるで誰かが焦って書き残したかのように乱れていた。彼女は手で埃を払いながら文字を確認した。
「ここに真実がある。影を追え。」
夏美の胸がざわついた。このメッセージは、明らかに真奈に関係していると感じた。だが、その意味はまだ掴めない。影を追え――それは何を意味しているのか?彼女は不安と期待の入り混じった感情で、その言葉を心に刻んだ。
さらに教室を見渡すと、床に何かが落ちているのに気づいた。古びた手帳だ。夏美はそれを拾い上げ、中を確認したが、ほとんどのページは白紙だった。しかし、最後のページにだけ文字が書かれていた。
「真実は影の中に隠されている。見えるものが全てではない。」
その言葉に背筋が凍る思いがした。夏美は急いで手帳をバッグにしまい、教室を出ようとしたその時、背後で物音がした。振り返ると、教室の窓の外に、薄暗い影が揺れているのが見えた。まるで誰かがこちらを見ているかのようだった。
「誰…?」
しかし、その影はすぐに消え、廊下には再び静寂が戻った。夏美は深呼吸をし、冷静さを取り戻そうと努めたが、その影の存在が頭から離れなかった。何かがこの学校に隠されている――そしてその何かが、真奈の失踪と深く関わっていることは間違いなさそうだ。
夏美は再び歩き始め、廊下の奥へと進んでいった。彼女の足取りは、次第に重くなる。しかし、真奈を見つけるため、彼女は止まるわけにはいかなかった。
つづく。