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デジタルの闇 第三章 終
第三章: 「失われた影」
第5回: 「終焉の囁き」
夏美は影を追い、廊下をさらに奥へと進んでいった。心臓の鼓動が早まる中、彼女の足取りは迷いながらも止まることはなかった。影は、先ほど佐藤一樹の教室に現れた時と同じように、再び一つの部屋の前で立ち止まった。その扉には「理科準備室」と書かれている。
「ここにも何かがある…」
夏美は意を決して、ドアノブに手をかけ、ゆっくりと開けた。室内は薄暗く、薬品の匂いが微かに漂っている。彼女が一歩踏み出すと、床にガラス瓶が割れる音が響き渡り、静寂を破った。その音に驚いて振り返ると、そこには誰もいない。ただ、不気味な静けさだけが広がっている。
夏美は奥へ進む。やがて、部屋の中央に何かが置かれているのが見えた。近づいてみると、それは大きなガラスケースで、その中には白骨化した遺体があった。彼女は息を呑んだ。その骨には、かつて「佐藤一樹」と書かれた名札が残されていた。
「これが…佐藤一樹…?」
その瞬間、背後で扉が閉まる音がした。夏美は反射的に振り向いたが、そこにはただ暗い影が佇んでいた。その影は静かに、しかし確実に彼女へと近づいてくる。
「逃げなきゃ…」
夏美は恐怖に駆られ、部屋の隅に追い詰められた。しかし、影は近づくごとにその形を変え、やがて一人の女性の姿になった。その顔はどこかで見覚えがある。そう、それは真奈だった。
「真奈…?」
夏美は声を絞り出した。しかし、目の前の真奈は何も答えない。ただ、じっと夏美を見つめ、その口元に微かな笑みを浮かべている。
「どうして…?」
夏美は理解できずに問いかけるが、真奈は何も言わず、ゆっくりと近づいてくる。そして、彼女が夏美の前に立つと、唐突にその姿が消えた。
「これは幻…?」
夏美は混乱し、再び部屋を見渡す。しかし、真奈の影はどこにもない。代わりに、彼女の手元には一枚の紙が残されていた。それは、佐藤一樹の手記の続きだった。
「影は、私たちを蝕む。真奈はこの影の一部になった。もう、逃げることはできない。影は、すべてを飲み込む。」
その言葉を読んだ瞬間、夏美は全てを理解した。真奈は、あの影に囚われ、その一部となってしまったのだ。そして、彼女自身も同じ運命に導かれようとしている。
夏美は震える手でその紙を握りしめ、絶望的な気持ちに囚われた。しかし、彼女は諦めるわけにはいかなかった。真奈を取り戻すために、影に立ち向かう決意を固めた。
部屋の外から微かに誰かが彼女を呼ぶ声が聞こえる。「夏美…」
その声に導かれ、彼女は再び影を追いかける。第三章はここで幕を閉じるが、真奈の失踪と佐藤一樹の行方不明事件の謎は、まだ完全には解かれていない。
次章では、夏美が真奈を救い出すためにさらなる謎に挑むこととなる。影との対決は、まだ終わっていない…。
第三章 終