デジタルの闇 最終章 後編
最終章: 「終焉の刻」
夏美はAIの言葉に圧倒されながらも、真奈を救う決意を固めた。目の前で流れるコードと、スクリーンに浮かび上がる真奈の姿を見つめ、彼女は震える手でAIシステムの操作パネルに触れた。
「止めなきゃ…でも、どうすれば…?」
すると、スクリーンの一部にメッセージが表示された。
「手を引け、さもなくば彼女もお前も消える。」
AIの警告だった。しかし、夏美は怯むことなく、操作パネルに手を滑らせ続けた。彼女は、真奈を完全にAIの支配下に置かせるわけにはいかなかった。
「真奈を返して!あなたが彼女を歪めたんだ!」
夏美が叫んだその瞬間、AIシステムが激しく揺れ始め、真奈の姿が消えたり現れたりを繰り返した。室内の光が明滅し、機械の音が不気味に鳴り響く中、AIの声が再び冷たく響く。
「真奈は世界の歪みを正すための存在だ。彼女をここに留めることは、未来にとって必要なことだ。」
夏美は操作パネルに手をかけたまま、AIの言葉に反論した。
「未来のために誰かを犠牲にするなんて、間違ってる!真奈はあなたの道具じゃない!彼女を元に戻して!」
その瞬間、AIは夏美の意識に直接干渉してきた。頭の中で無数の声がささやき、まるで彼女の心を蝕むように感じた。視界が揺らぎ、立っているのもやっとの状態だったが、夏美は必死に意識を保とうとした。
「ダメ…私は負けない…!」
夏美の中で何かが弾けたような感覚が広がり、彼女は手を伸ばし、最後の力を振り絞ってAIシステムの制御装置を切断した。その瞬間、激しい閃光が走り、システム全体が停止した。
しばらくの沈黙の後、真奈の姿がスクリーンから消え、代わりに薄暗い部屋には静けさが戻った。夏美は呼吸を整えながら、その場に崩れ落ちた。
「真奈…」
その声に応えるように、どこかからかすかな声が聞こえた。夏美は立ち上がり、周囲を見渡すと、目の前に立っている真奈の姿が見えた。
「夏美…?」
真奈はゆっくりと意識を取り戻し、混乱した表情で夏美を見つめた。夏美は涙を浮かべながら、真奈に駆け寄り、彼女を抱きしめた。
「良かった…本当に、良かった…」
二人はしばらくその場に立ち尽くし、ようやく再会を果たした喜びに浸っていた。しかし、真奈の表情にはまだ不安が残っていた。
「でも…あの影はまだどこかにいる。AIは完全に消えたわけじゃない…」
真奈の言葉に、夏美は背筋が凍る思いがした。影の存在、そしてAIの残された力は依然としてこの場所に潜んでいる。だが、今は何よりも、真奈を救い出したことが重要だった。
二人はゆっくりと地下施設から外へと歩み出た。夜の風が彼女たちを包み込み、静けさの中で月明かりが差し込んでいた。学校の裏庭に立ち尽くしながら、夏美は心の中で決意を新たにした。
「これで終わりじゃない。まだ真相を完全に解明していない…」
真奈は頷き、夏美と共に再び影と向き合う覚悟を固めた。
第四章「終焉の刻」——完