うん拭きパイセン

私は今、某山小屋でアルバイトをしています。

標高で言うと2000mを超えたまあまあの高さにある山小屋にいます。
住み込みで働かせていただいております。

全国的に大雨で大変な今、もちろん山の上も連日の暴雨風で小屋が吹っ飛ぶんじゃないかと思うくらい風がゴーゴー、窓がガタガタいうております。

こんな時にわざわざ山に登りたい人はいないので数日先までの予約が全てキャンセルになりました。
だからとても暇です。
暇なのは全然嫌いじゃないし日給が発生しつつゆっくりできて最高です。

そんなこんなで時間の余裕ができたので、こちらでの生活をちょびっと書こうかなと思います。

ものすごく暇だったらどうぞ呼んでくださいませ。



実は私、去年の秋もここで過ごしていました。

昨年いろいろあってもう何もかもおしまいにしよう、と思った時に、どうせならやりたいこと全部やってからおしまいにしようか、という考えに至りました。(そしたら思いの外やりたいことがあったので今も何とか生きながらえております)

その時に一番はじめに思い浮かんだのが「山に行きたい」という気持ちでした。
そういえば大学の頃働きたいと思っていた山小屋があったことを思い出し、せっかくならそこに行こうと思い、夏も終わる頃でしたがダメ元で連絡をしました。すると、ラッキーなことに丁度人手が足りない時期とのことで、9月から2ヶ月間住み込みで働かせていただくことになった。

今年も来る予定ではなかったけど、昨年山にいたことで冒険欲が再熱して夏山シーズンのうちに行きたい山ができたので、また山で働きつつ休暇をもらって冒険しようと企み、先月半ばからまた同じ場所でお世話になっています。

そんな当山小屋では今年からベテランスタッフが数人いなくなってしまい、今年2年目になる私が米炊きを任されることになった。
50人分くらいのお米を私が炊いています、毎日。
責任重大なのでできればやめたいです。

日々大量のお米を研いでいると頭がおかしくなる。
まあでも、こんな大量のお米を炊く機会なんてそうそうないのでありがたく炊かせていただいている。
今のところまだ大失敗はしてません。

一番おいしい固さになるよう、水分の量を研究して、目分量で微調整できるようにもなってきました。

そんな感じで、毎日なんとか山の上で過ごしております。


大体の1日のスケジュールはざっとこんな感じです。

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4:30 起床
お客さんの朝食作り
片付け
スタッフの朝食作り
スタッフ朝食
8:00 掃除
10:00 少し休憩のお茶タイム
ランチ営業の準備
11:00-14:00 ランチ営業
スタッフ昼食
宿泊のお客さんがポツポツ到着し始めるので宿泊の受付
14:00-16:00 休憩
天気が良かったら散歩に行く
16:00 お客さんの夕食作り
片付け
スタッフの夕食作り
19:00 夕食
あとは自由時間
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山小屋での一番嫌な仕事は、朝の掃除です。
その中でもトイレ掃除がやだ。マジでやだ。

ちょっと山小屋のトイレを想像してみてください。

とても汚いでしょう?

実質はちょうどその1.5倍くらいの汚さだと思ってもらえれば幸いです。

山小屋のトイレ掃除はかなりレベルが高い。
さすがのうん拭きパイセン(※)もお手上げ。



ライブハウスでアルバイトしていた頃の某日、トイレの床にうんちが落ちているという事件がありました。
都会の洋式トイレで便器の外にうんちが落ちているなんてことはよっぽどのことがない限り起きないので、この事件にスタッフ一同騒然としました。

(これを誰が処理するのか…)
(できることなら、いや、絶対にやりたくない)

口にはしないもののみんな同じ気持ちだったと思います。
もちろん私も同じ気持ちを抱きました。

ただ、ちょうどその頃「この音楽業界でいろんな人と出会えて、こんなにやりがいある楽しい仕事をできている全てのきっかけはここで働かせてもらったからだ」と、このライブハウスに採用していただいたことへの感謝の気持ちを改めてとてつもなく実感している時期だった私は、
少しでも大好きなこのライブハウスに貢献せねば。
汚れ仕事を率先してやってこそ、床に落ちたうんちを拭いてこその私だ。
という汚れ仕事に対する謎のモチベーションが湧き上がって来て、誰も手をつけなかった床に落ちているうんちを、「ずっとここにいましたけど?」というような顔で居るべきではない床に堂々と鎮座するうんちを、意を決して拭き取った。
もちろんトイレマジックリンを駆使して床も綺麗に拭き上げた。

すると、フタッフ一同からかつてないくらい猛烈に感謝され、崇められ、奉られた。
これが、みんなが嫌がることを率先してやることの素晴らしさを、生きてて1番実感した瞬間だった。

そしてこれを機に私はみんなから「うん拭きパイセン」と呼ばれるようになった。
響きや字面は完全に悪口だが、とても名誉ある肩書きである。 


そんなことがあった。


しかし、ここではどんなにレベルの高いトイレ掃除をしても、毎日のルーティンワークのひとつをただこなしただけであり、パイセン!パイセン!と言ってチヤホヤしてくれる人もいない。もっと褒めてほしい。


その時私は、とんでもない場所に来てしまったなと思うのであった。


画像1

これは私が折りたたまれたトイレクイックルを開いているところですが、便器が天空の結婚式を挙げてるみたいになっています。

「誓イマスカ?」


画像2

拭いているところ



では、また暇があれば何かしら書きます。
また今度。


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