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『映画』

2023.10.18

もっとはやく泣いておけばよかった。
時間が経ち、涙は出なくなった。

息が苦しくて、身体の自由が効かなくて、受け取れきれなくて泣いていた。映画を見る時、わたしはその情報量の多さ、人の感情の何重にも重なったそれに、耐えられなくて泣いてしまう。言語化できない限り、その感性を生で喰らってしまうから、ショートする。

映画を見たあと、わたしは主人公になってしまう。作品のではなく、この世界の。嘘、わたしはずっとわたしがこの世界の主人公だと思っている。思わないように気をつけているだけで、心の奥底では。だってこの世界ってわたししか見えない。わたしだけが見えない。苦しい。息を吸って、吐き出して、泣いて。身体の軸を委ねて、違う、抜かれて。重い肉になる。帰り道、規則的に足が動く。

感情、言葉じゃなきゃ飲み込めないの。飲み込まれてしまうの。溺れそうなの。とっくに足の力なんか抜けていて、習慣だけで歩いている。こんなになってもわたしは走り出せない。遠くまで、走れない。お行儀良く家に帰ってしまう。なんで大丈夫なんだろう。壊れない、ギリギリ。わたしのどの部分を放棄したら壊れちゃえるのかな。

永遠が通り過ぎていく

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