『レモネード』
2023.7.15
「本を読んで人生に深みが増したと感じますか?」
そう尋ねられたとき、わたしは自らを省みて、何を思うだろう。
「そもそも大して読んでないです」
「完全な娯楽だと思っていて」
「ただ、妄想癖が加速しただけ」
本を読んで良いことがあるのは自分だけで、それはわたしが好きなものの中から選び取った、わたしにとって都合の良い言葉で、だから他人にも本を読んだほうが良いですよとは思わない。本を読んだくらいでわたしは深くならない。
タコスを食べた。
純情商店街の入り口のお店。ランチはレモネードが330円おかわり自由で、わたしは初めてハイボールのジョッキを持った。
レモネードは濃くて甘かった。
「アボカドタコスにしたら、アボカドにアボカドソースかけることになるね」と言って、二人で牛肉のタコスを選んだ。とても美味しくてボリューミーで、タコスを食べるのは四年ぶりだった。こんなにずっと食べたかったのに、なんで今まで食べていなかったんだろう。
期末テスト。
冷静に考えると時間が足りていない。To doと自由時間を照らし合わせて、電車で音楽を聴いている場合ではないと自分に言われる。五月末から体調が悪くて、諦めた授業も沢山あるし、「これは落としちゃダメ」って言われた授業も、多分いくつか落とすだろう。或いは全てかもしれない。
わたしはわたしが今生きることが大切で、全てを捨ててしまわないことが大切だった。朝起きることができず言い訳して甘えただけの時間が、信じられないくらいある。
「ドイツ語気に入ってるのにな」とか、「先生が折角信じてくれたのにな」とか、そんなことばかりあって、何でできないんだろうとは思わなかった。今期一単位も取れなくても、苦しむのは明日のわたしで、後悔するのもわたしで、わたし以外何も言うなって叫ぶ。
落ちこぼれと思われることを怖がっている。
22:00になって手を付ける補講課題や、指定の時間にポイントを貯めて読む漫画が、わたしの生活であることが、陳腐で、ダサくて、今のわたしだった。
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